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守秘義務の維持より創造力

「問題は、スイスの金融界を代表するUBSがアメリカ政府の追求の矢面に立っていることだ」

(Reuters)

スイスの銀行大手UBSとアメリカ税務局との対立は、いまだに続いている。2月中旬、UBSは約300人分の顧客情報を開示すると譲歩したものの、2月20日、アメリカ側は5万2000人分の開示を要求した。

バーゼル大学の刑法学教授で経済協力開発機構 ( OECD ) の国際金融賄賂問題委員会のメンバーでもあるマーク・ピート氏に、問題の核心を聞いた。

swissinfo : アメリカ政府に一部の情報開示を行うと認めたことで、スイスの銀行の守秘義務は終焉 ( しゅうえん ) を迎えたのでしょうか。

ピート : 自動的に銀行の守秘義務が消滅するという意味ではないと思います。しかし、スイス政府はアメリカ政府や欧州連合 ( EU ) の要求にどのように対応していけばよいのか考えなければなりません。スイスの法治国家としての態度とアメリカからの圧力への降伏という2つの対立する動きがあるのは確かです。スイスの連邦司法省 ( EJPD/DFJP ) はUBSに対し刑事訴訟手続きを行ないましたが、UBSの流動性や存在そのものを危うくしかねないほど重い犯罪をUBSは犯したと政府は判断しています。そのため、非常事態に応じた法律を適応し、顧客名を明かすことにしたわけです。これは緊急法とは違い、連邦行政裁判所の判決の延期が可能な法律です。こうしたことから、アメリカからの圧力は相当なものだったのでしょう。

swissinfo : UBS以外のスイスの銀行も同じような状況に置かれることになるのでしょうか。

ピート : そのような可能性も確かにあるでしょう。今回の場合、UBSというスイスの金融界でも先頭を行く「船」が問題にされていることです。クレディ・スイス( Credit Suisse ) が問題になれば、今回と同じような対処をすることになったでしょう。ほかの銀行の場合も同じかということについては、確かとは言えません。

swissinfo : UBSには660億フラン ( 約5兆3500億円 ) の公的資金の注入もありました。そして、今回は顧客情報の開示です。スイス政府はその権限のぎりぎりまで使い果たしたという感がありますが、なぜでしょうか。

ピート : わたしは、2つの決定には直接的な因果関係はないと思っています。政府はUBSの存続は制度上必要であると理由づけていることから見れば、2つの決定には間接的な関係があります。とはいえ、スイス政府がUBSの単なる運営機関にとどまっているわけではありません。政府が取った行動は、法律上取り得る枠での措置です。

swissinfo : あなたは常日頃、スイスの金融制度には改革が必要だと主張してきました。今、スイスがしなければならないことはなんですか。

ピート : 法治国家でありながら、いつ外圧に応じるのかということは1つの問題です。一方、銀行の守秘義務における法的協力と行政上の協力について、将来どういった形にするのかということを考えなければなりません。そのためにスイスは、非常に創造的でなければなりません。例えば、スイスの銀行の顧客名を明かさず、スイス以外の国に税収の道を開くといったモデルが考えられます。今でも、国内ではすでに知られている制度ですが、連邦が銀行顧客に代わって ( EU諸国などに対し ) 納税を代行するといった制度です。

問題は、EU諸国が社会国家として必要な税収源が奪われてしまうことにあります。この点、スイスは理解を示さなければなりません。高額の税金を払うことを拒否する人々、つまり税金難民をスイスが受け入れるのだという理論は理解できませんし、こうした考え方は非常にシニカルであるとしか言いようがありません。

swissinfo : スイスでは脱税と、税申告の誤りは同じものではないと定め、税申告の誤りは違法ではありませんが、EUはこの2つのいずれも違法として扱うように要求しています。スイスはこうしたEUの要求を受け入れるべきでしょうか。

ピート : それは、スイスが現在抱える問題をどう解決しようとするかによります。スイスが納税の代行者としてEUに納税する場合、この問題はまったく違った様相を持ちます。一方、これまで通り法・行政的な協力をし続けるとなると、脱税と税申告の誤りは同じであるとしなければならなくなるでしょう。とはいえ、根本的にスイス政府が外国人の脱税をほう助することが良いことなのかということです。

swissinfo、アンドレアス・カイザー 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

EUがスイスに要求していること

欧州連合 ( EU ) 委員会はUBS銀行がアメリカに開示した顧客情報をEU諸国に対しても同等に開示するよう要求している。一方、今回のアメリカに対する顧客情報開示は、スイスとアメリカの2国間の問題であり、EUとは関係ない。「EU加盟国がアメリカと同じような要求をした場合、( スイスは ) 同じように対応しなければならない」とEU委員会の広報担当官は言う。

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脱税と税申告の誤り

スイスでは脱税と、税申告の誤りは法的に異なると定めている。マネーロンダリングなど不正が証明されれば、スイス当局は法的な協力を行なう。合法的に得た収入を税申告しなかった場合、スイス当局の法的な協力はほとんど得られない。この違いについて、アメリカとEUはスイスと何年にもわたり対立している。

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