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日本・スイス経済連携協定 大筋合意に

Keystone

9 月29日、スイスと日本は2007年5月にスタートした経済連携協定 ( EPA ) の第8回会合を終え、大筋合意したと発表した。

両国の貿易額の99%以上を占める物品の関税を発効10年以内に撤廃することや、電子商取引の導入など、先進国同士の経済連携協定ならではの成果を上げた。今回のEPAで、スイスは日本にとって初の先進国交渉相手となった。

ブレーンストーミング

 「交渉の第1段階で、お互いにブレーンストーミング ( 小グループによるアイデア発想法 ) を行い、日本のシステムとスイスのシステム間で交換可能な、コンセプトを定義づける必要があった」
 とスイス側首席交渉官、ルツィウス・ワセシャ大使は交渉の初期を振り返った。

 両国の文化的違いによる法的な解釈のずれ、また日本は始めて先進国と交渉するため、過去の途上国との交渉に基づいたコンセプトからなかなか抜け出られないことなど、スタート時は困難が伴ったが、
「絶えず友好的な雰囲気で交渉は進み、我々はいつも素晴らしいパートナーシップを保ちながら、8回の交渉を終了した」
 とワセシャ大使は非常に満足した様子で語った。

 今回の日本・スイス経済連携協定は、安倍晋三前総理大臣とミシュリン・カルミ・レ前大統領との間で、2007年1月に交わされた交渉開始の合意に沿って、同年5月に第1回交渉を東京でスタートさせた。その後、交渉団は両国間を行き来しながら交渉を続け、今回の合意に至った。今後3カ月間かけ、双方で、法的なチェックを含む最終調整を行い、来年中の調印を目指す。

鉱工業品の関税は即時撤廃

 「従来、スイスは日本から輸入する物品の7割に関税をかけていたが、鉱工業品に関しては即時撤廃で、これは大きい。自動車や自動車部品、電気製品などの分野では、今後スイスへの輸出は飛躍的に伸びるだろう。特に、物品の重さに比例して関税がかかっていたので、車の関税はかなりの額になっていた」
 と日本側交渉団のある関係者はコメントした。

 今後、両国の貿易額の99%以上を占める物品の関税を発効10年以内に撤廃し、特に鉱工業品に関しては発効時に即時撤廃する。農産物ではスイス側は、日本からの清酒、盆栽、味噌など、日本側はスイスからのインスタントコーヒー、食品添加物などの関税を即時撤廃し、スイスワインなどは段階的撤廃となる。

 そのほか、技術レベル、インフラレベルなどで類似点の多い先進国同士の交渉として、サービス、投資、知的財産などの分野で、高いレベルでのルール策定などが行われた。例えば、「電子商取引」は、貿易の行政手続き文書の電子化などを含む、情報通信技術を用いたビジネス環境の整備を目指す。

 また「原産地証明」では、チーズなど物品の原産地証明を行っていた行政当局に代わって、実績ある輸出業者が原産地を認定すれば、それを税関が認めるという簡素化が行われる。これはスイスと欧州連合 ( EU ) の間ですでに行なわれている制度だ。
 
 さらに、経済関係の緊密化を目指す、公、私的な経済協力フォーラムや、両国間の投資の更なる拡大も計画されており、
 「スイスは、日本との協力関係を発展させることによってスイス企業の利益を高め、日本における投資を促進させる。日本側も同様に、スイスとの関係で利益を得ることになる」
 とワセシャ大使は、交渉の最大利点を総括した。

 swissinfo、 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 

日本・スイス経済連携協定 は、安倍晋三前総理大臣とミシュリン・カルミ・レ前大統領との間で、2007年1月に交わされた交渉開始の合意に沿って、同年5月に第1回交渉を東京でスタートさせた。

日本にとっては、ヨーロッパの国との初の協定で、経済分野における両国の関係強化に寄与するもの。

両国の関税の撤廃、削減による市場アクセスの改善を柱に、サービス、投資、知的財産などの分野で、高いレベルの成果を得た。

原産地証明制度の簡素化や電子商取引の導入も、大きな成果の一つ。さらに、人の移動では、ビジネスを目的に促進が行われた。例えばスイスでは、日本の会社の取締役会のメンバーにスイス人がいなくてはならなかったが、撤廃された。また、スイスに住む日本人に滞在許可書を発行する際の人数制限も撤廃された。

日本はスイスと同時にベトナムともEPA の大筋合意を行い、計11件のEPA をまとめたことになる。

スイス側は、インドとのEPA 合意を進め、またマレーシアやインドネシアとの交渉も検討しており、アジア市場の強化を目指し、アメリカ市場での損失をカバーしようという意向を持っている。

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