スイスの視点を10言語で

温室効果ガス 2割削減

スイスの新しい環境問題構想を発表したモリッツ・ロイエンベルガー連邦環境・エネルギー相 Keystone

スイス政府は2月末、2020年までに温室効果ガス排出量を少なくとも2割削減すると発表した。

この削減量は欧州連合 ( EU ) と足並みをそろえたものだ。

 モリッツ・ロイエンベルガー連邦環境・エネルギー相は、国民の環境問題に対する態度を変えることなどを目的にした「動機づけ税 ( incentive tax ) 」なども含む、新しいスイスの温暖化政策を発表した。しかし、二酸化炭素 ( CO2 ) 排出規制を目的とする一般的な炭素税は政策に加えられなかった。

政府の新構想

 政府は2020年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で2割削減すると発表。さらに、2050年までに5割削減する構想を持っている。具体的には、1年に1.5%削減し、外国から排出権を買うことでさらに1割の削減が可能とみる。

 この新しい政策は、温度上昇を2度に抑えるというEUの温暖化政策に歩調を合わせたもの。しかし専門家は、これをギリギリの線で支持できる政策だとみている。

 スイスは従来、2010年までに温室効果ガスを1990年比で1割削減する目標を掲げてきた。この目標達成のため「CO2排出規制法」が2000年に発効された。今回、ロイエンベルガー相によれば、同規制法も新しい政策に見合った改正が必要になるという。

 また、国民の環境問題に対する態度を変えることなどを目的にした「動機づけ税 ( incentive tax ) 」や、技術的な諸対策、さらに温暖化対策でのスイスの中立性なども今回の構想に含まれている。いずれにせよ、この政府の新案は今後連邦議会で検討が続く。

多様な反応

 政府はスイスが掲げてきた、2010年までに温室効果ガスを1990年比で1割削減する目標達成はかなり難しく、50万トンのCO2が削減できずに残るとみている。

 今日まで行われてきた、法的拘束力のない車のガソリン税 ( 車の燃料1リットルにつき0.015フラン ) は見直される予定だ。しかしメディアで話題になった「2010年から車の燃料1リットルにつき0.5フランのガソリン税案」を、ロイエンベルガー相は、はっきりと否定し、現在より高いガソリン税は予定されていないと述べた。

 エネルギーに関しては、2020年までに化石燃料を2割削減し、再生可能エネルギーを50%増産させる構想だ。

 今回の政府新構想に対する反応はさまざま。左派政党と環境保護団体は、2020年までに2割削減では不十分であり、またCO2排出規制を目的とする一般的な炭素税が政策に加えられなかったことを批判している。

 経済界、自動車関係業界は政府案を歓迎している。しかし、右派の国民党 ( SVP/UDC ) などは、将来の電力不足に向けての具体的な構想がないと批判している。

swissinfo、外電 

政府の新構想発表から1週間後の2月29日、WWFやグリーンピース、社会民主党 ( SP/PS ) 、緑の党 ( Grüne/ Les Verts ) などが提案した「健全な気候を求めるイニシアチブ」がおよそ15万人の署名を集め、政府に提出された。

このイニシアチブは、2020年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で少なくとも3割削減することを提案。

また、政府と連邦議会に対し、再生可能エネルギーの増産、炭素税の導入、省エネ建築スタンダード「ミネルギー ( Minergie ) 」の4つのスタンダードのうち2つを導入することなどの具体策を提案している。

イニシアチブ提出に必要な10万人を超える15万人の署名が7カ月間で集まった事実は、スイス国民の多くが緊急な温暖化対策を訴えていることを示している。

スイスは2003年京都議定書に批准し、2010年までに温室効果ガスを1990年比で1割削減する目標を掲げている。しかし、目標達成は難しいと専門家の間ではみられている。1990年、温室効果ガスの排出量は5330万トンで、2000年には5270万トンだった。

2000年5月、京都議定書の目標達成のため「二酸化炭素排出規制法」を発効。企業約1000社がCO2排出量の自主規制に乗り出した。

しかし、2005年には、自主規制だけでは不十分であることが分かった。だだし、規制強化の方法は難航している。

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部