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焼きたてパンの香り漂う製粉ミュージアム 〜チューリヒ市「ミューレラマ」〜

製粉ミュージアム「ミューレラマ」にどっしりと構えるレトロな製粉機は今年で100歳を迎えた

製粉ミュージアム「ミューレラマ」にどっしりと構えるレトロな製粉機は今年で100歳を迎えた

(swissinfo.ch)

 100年前の製粉機が今もちゃんと動いているという。昨年パン作りに目覚めたわたしにとってこの上なく魅力的な響きだ。さらに、その製粉機が挽いた粉でパンまで焼いているという。もうこれは行かずにはいられない!目指すはチューリヒ湖畔の駅ティーフェンブルネン(Tiefenbrunnen)から徒歩5分の所にある製粉ミュージアム「ミューレラマ(Mühlerama)」。

 ひときわ目立つレンガ造りの大きな建物はかつてビールの醸造所だった。1913年に製粉所になり、以後70年もの間、昼夜を問わず粉を挽き続けた。1983年に製粉所は閉鎖。しかし、古風な外観はそのままにレストランやシアターなどが入った文化施設へと姿を変えた。

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 今回訪れたミューレラマもその一角にあり、製粉所時代に使われていた製粉機が公開されている。当時は敷地内にいくつもあったそうだが、今は1機のみを残すだけになった。4階建ての建物目一杯に収まる驚くほど大きな木製の製粉機だ。

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 館内に足を踏み入れるとまず、右奥に設置された銀色の大きな計量器とオーブンが目に入る。毎週金曜日、販売用のパンはここで焼かれる。もちろんこの製粉機で挽かれた粉も使われ、パン職人が早朝から仕込む正真正銘の手作りパン。週に1度ということもあり、常連客も少なくない。

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 そして、同室内の左手にお目当ての製粉機がある。「ある」という表現よりも、何層もの高い天井を突き破り「聳(そび)えている」という方が正しい。案内役を引き受けてくれたレヒトシュタイナーさんがスイッチを入れると、100歳の老齢製粉機は動き始めた。

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 「カタカタ、バンバン、ガタガタ、ドンドン・・・」思いつくありとあらゆる機械音が館内中に響き渡る。耳に不快な金属音はなく、規則的に刻まれる作業音はむしろ心地よい。熟練者の手さばきさながら、正確で滑らかな動きには無駄は一切ない。

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 製粉所といえば風力か水力を利用するものが多いが、この製粉機は当時としては珍しく初めから電動式だった。それもそのはず、目の前に水は豊富にあっても、静かな湖ではどうにもならない。

 地上階に設置された投入口に小麦が入れられと、一旦すべて最上階まで送られる。そして、研磨、選別、加水などの工程を経て挽砕(ばんさい)とふるい分けが繰り返されて小麦粉ができあがる。初めて訪れる者には迷路のような館内で、さらに小麦も上下に行ったり来たりを繰り返しながら挽かれるので、どこがどうなっているのか把握するのに一苦労する。このレトロな製粉機は24時間で約50トンの小麦を挽けるそうだ。

 挽きたての粉は湿り気があってほんのり温かく、まろやかな優しい香りがする。ミューレラマではチューリヒ州で収穫された小麦を使用している。製造される小麦粉の種類は精白小麦「ヴァイスメール(Weissmehl)」、ふすま入り小麦「ルフメール(Ruchmehl)」、その中間の精製度の「ハルプヴァイスメール(Halbweissmehl)」の3種。

 1世紀前の方法で挽かれたこれらの小麦粉は品質管理や衛生管理の点から一般向けに販売することはできない。ただ、予約制のパン教室や毎週金曜日の焼きたてパンの日で食すことができる。ちなみに、ミュージアムのショップで販売されている粉は近隣の製粉所がミュージアム向けに精製しているそうだ。

 「まずいのは粉ではなく、まずいパンを作るパン屋です!」と名言を残してレヒトシュタイナーさんの館内ツアーは終わった。ミューレラマで焼かれる手作りパンは美味しい。おやつになるプレッツェルや菓子パンがメインで、中でもカルダンモンパンとシナモンパンが人気だそうだ。生地にスパイスが練り込まれていて砂糖との相性が良く、一口食べるとあとを引く。カフェが併設されていないのがなんとも残念でならない。

 今回紹介した製粉機のほかに館内にはネパール製の石臼もある。こちらでは全粒粉が挽かれ、「シュタインミューレメール(Steinmühlemehl)」という名前でショップでも購入できる。金曜日にはこの全粒粉を使った石臼パン「シュタインミューレブロート(Steimühlebrot)」も焼かれる。噛むほどに小麦の香ばしさが口中に広がり、ソフトなチーズやサラダと相性がいい。

 スイスの食生活とは切っても切れない小麦粉の生い立ちを知るには、このレトロなミュージアムが楽しい。足を運んだ際はぜひ製粉機を動かしてもらうようにお願いしてみよう。きっと面白い発見があるはずだ。そして、最後には麻袋をお尻の下に、らせんすべり台をクルクル滑り降りることもお忘れなく!かつてはふすまが入った袋を最上階から降ろすのに使われていたそうだ。

 さて、お気づきの方もいらっしゃるかもしれないが、今月からブログを再開することになった。昨年は第2子の妊娠出産と大きな節目の年で、生まれたばかりだと思っていた息子はもう9カ月になり毎日が飛ぶように過ぎていく。今回のブロガー復帰にあたり自分のテーマを探すことにした。そして、たどり着いたのは大好きな「手作り」。これからは「手」をキーワードにスイスのいろいろな表情を発見したいなと思う。今後ともどうぞよろしくお願いします。

中村クネヒト友紀

プロフィール:中村クネヒト友紀

神奈川県出身。ドイツ語圏に住み始めてあっという間に10年目。スイスには2007年に移住。ドイツ人の夫とちびっ子2人と共にチューリヒ市近郊に暮らす。「手作り」好き。中でも手織り歴は長く、近頃はパン作りにもはまっている。第2子の出産に伴いブログは1年以上お休みをいただいていたが、2013年7月から再開。ブログも「手作り」をキーワードにスイスを掘り下げてみたい。

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