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観光客は食いしん坊

顧客のニーズを改めて知ることが大切。スイスホテル協会、ググリエモ・ブレンテル会長 Keystone

スイスのホテル業界が顧客にインターネットでアンケートを取り、ホテルの質を星の数で表すランキングの参考にする試みが始まった。

今回の調査では、顧客は美味しい食事に重点を置き、風景は二の次という結果が出た。スイス観光は「美しい風景のスイス」という宣伝文句に胡坐 ( あぐら ) をかき続けることはできないようである。

風景ならカナダにもある

 スイスホテル協会 ( hotelleriesuisse ) が2700人の国内外の有力顧客を対象に行ったオンラインアンケートによると、顧客が期待するのは、素晴らしい風景ではなかった。1位は美味しい食事、2位はスイス的であること、以下ウェルネス、家族重視、安くて上品であることと続き、風景は6番目に重視されていることが 分かった。

 アルプスの風景に魅了されて観光客がスイスに来るわけではないのだろうか。スイスホテル協会のググリエモ・ブレンテル会長はこれに対し「美しい風景は疑いもなく重要だ」という。
「しかし、それだけに頼ることは許されない。ホテル業界にとって風景はほとんど重要ではない。休暇で泊まる客を受け入れるホテルにとっても、美しい風景があるからというメリットは、控えめに考慮されなければならない。風景が観光客にとって価値あるものとなるのは、風景を利用できる、つまり、風景を体験できる時だけだ」

 ブレンテル氏はさらに、アルプス地方の観光関連業が、山岳鉄道やレストランだけで観光客に「風景を体験させている」のでは不十分だと警告する。
「風景だけが理由で観光客がスイスに来るわけではない。風景なら、カナダやアラスカにもある」

不況の影響

 為替の魅力も最近は失われつつある。スイスフランは少なくともユーロに対して高くなっているからだ。フラン高の今年の秋の都市観光、冬のスキー客への悪影響は大きくないと見られるが「スイスの物価が高いことも、常に指摘される問題点だ」とブレンテル氏。もっともこれは、市場の自由化が進むにつれて解決していく方向にある。

 過去の不景気の経験から、現在の金融危機に伴う景気不振時期には、価格に見合ったサービスの質が観光業でも大きなテーマになるとブレンテル氏は見る。ただ、以前の不景気時でも休暇の需要はさほど落ち込まなかった。経済的に厳しい状況にあっても、人は旅行したいと思うらしい。よって、為替レートで有利な観光地が選ばれることになる。

 金融危機が続く今、スイスホテル協会はアンケート調査を参考にし、ホテルランクの見直しをする意向だ。ランキングの星の数が引き続き、ホテル客が信頼できる目安になるように、また、ホテル経営者にとっても宣伝に利用しサービスの質を保証するものにしたいという。
 
 文化の違いによって観光客の需要は大きく異なる。インド人や中国人に合わせた料理を出すことばかりではなく、アメリカ人やイギリス人の需要に合わせ、ホテルがイベントを用意するといった気配りなどがランキングに配慮されなければならない。

swissinfo、アレクサンダー・キュンツレ 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

ホテルを星でランキングすることはスイスが初めて導入した。誤解を避け透明性を上げるため、ホテル協会は1896年に「ホテルガイド」を発行するようになった。現在のホテルランキングの方法は1979年に定められた。しかし例えば近年ますます、従業員の親切さ、良い雰囲気などソフト面での要求が高くなってきたことで、現在の顧客のニーズには対応していない部分があると指摘されていた。このため、インターネットの顧客対象アンケートで見直されることになった。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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