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高級時計見本市にも不況の暗雲

ジュネーブで開かれた国際高級時計見本市の来場者

(Keystone)

極めて厳しい市場環境にもかかわらず、先日ジュネーブで開かれた高級時計見本市では平静を装う高級時計会社の姿が見られた。

今年の国際高級時計見本市のオープニングは、ちょうどジュネーブに拠点を置き高級宝石・時計・アクセサリーを扱う「リシュモン」が厳しい先行きを発表した日と重なった。今回出展した17ブランドのうち12ブランドはリシュモンの傘下だ。

悪化する市場

 時計の売り上げが落ち込み、今後の後退が顕在化しているにもかかわらず、見本市は挑発的だった。
「経済情勢も冬の寒さも、国際高級時計見本市 ( SIHH ) を『高級時計製造の中心地』にしようというわたしたちの決意を鈍らせることはなかった」
 と、見本市担当責任者のファビエンヌ・ルポ氏は言う。

 「時計業界が減速傾向にあることは確かだ。しかし、小売業者の買い付けは続き、企業活動は申し分ないため、楽観的だ」
 と、「ボーム&メルシエ ( Baume & Mercier ) 」で国際マーケティング・コミュニケーション担当部長を務めるジャン・クリストフ・サバティエ氏は言う。また、今回「グッチ ( Gucci ) 」のバイヤーが「カルティエ ( Cartier ) 」や「モンブラン ( Montblanc ) 」の最新モデルを吟味する様子を会場のシックなラウンジやバーから目にした人にしてみたら、高級品市場は順調に時を刻んでいるように見えるだろう。

 しかし、不透明な先行きから、主催者側は経営の引き締めを強いられている。今後は大規模な夜のイベントは控え、商売の基本に立ち返る姿勢だという。
「いろいろな面で厳しい時期になるかもしれないが、そういう時だからこそ『本物』、『受け継がれてきた文化的伝統』、『専門知識・技術』ということに専念できる」
 とルポ氏は言う。ところで、ルポ氏によれば今年のSIHH来場者数は昨年比15%の減少を予想しているという。
「北アメリカからは50%、日本からは45%の減少を見込んでいる」
 また、アジアからは25%の減少だが、ヨーロッパ、ロシア、中東は例年通りだという。

急激な落ち込み

 ベルンシュタイン研究所 ( Bernstein Research ) が1月中旬に発表したところによると、2009年の世界の高級品の売り上げは10%以上の落ち込みが見込まれるという。これは前回の予測5~7%減を上回る数字だ。また、1月19日には、カルティエやモンブランなどの高級ブランドを取り扱う「リシュモン ( Richemont ) 」が業績下降を発表した。2008年第4四半期の売り上げが12%減少したことを受け、創業20年来のもっとも厳しい市況だとコメントした。

 スイスの時計輸出額はここ約4年間で100億フラン ( 約8000億円 ) から160億フラン ( 約1兆2800億円 ) までに増加し、2008年11月までは毎月伸び続けていたが、11月を境に突然15.3%の落ち込みを見せた。スイス時計協会によると、これはここ3年半の間に見せた初めての下落だったという。スイスの時計輸出額は今後さらに減少し、市場全体に影響を出し、小さなブランドが最も厳しい状況に立たされるだろうと、スイス時計協会会長ジャン・ダニエル・パッシェ氏は言う。
「今回の金融危機にどれだけ時計業界が左右されるか、その影響の大きさを述べることは難しい。2009年の前半は苦しいだろうが、下半期には状況の改善を期待している。しかし、正確な指標はない」

 日本への輸出は今のところ最悪の状況で、日本市場とアメリカ市場での売り上げは期待できないという。スイスフラン高が輸出の伸びに影響を与えるかもしれない。スイスの時計業界にとって、アメリカと日本は2番目と3番目に大きい輸出相手国だ。
「時計業界は危機に直面している。しかし、輸出額は依然高いレベルを維持しているように、この危機が5年間続いたスイス時計産業の大成長の後にやって来ているということも忘れてはいけない。大手ブランドはこの危機を乗り越えられると、わたしたちは楽観的だ」
 とパシェ氏は言う。

派手すぎず

 一方で、カルティエの最高責任者ベルナール・フォーナス氏はロイター通信社に対し、予測は難しいと語った。
「今回の不況はトンネルの出口がどこにあるかはっきりしない、今までに経験したことのない恐慌の1つといえる」
 フォーナス氏によれば、カルティエはスイスにある一番小さい工場の労働時間を短縮したという。しかし、景気が低迷している時は消費者は強いブランドを好む傾向が強いことから、暗い見通しにも関わらず、カルティエは市場のシェア拡大に向けて動いている。
「この不況で消費者の行動に変化が見られる。本物志向に戻ってきている」
 とフォーナス氏は言う。

 この意見にはサバティエ氏も同感だ。
「真に価値のあるもの、控えめなものに消費者は戻ってきている。これからは行き過ぎず、あまり派手でない時計になるだろう」
 時計製造業者「パルミジャーニ ( Parmigiani ) 」も同様の方針だ。今まで荒れた海を安全に航海してこれたのは、控えめなアプローチ、バランスの取れた投資、資金的独立によると断言する。
「恐慌はものごとをはっきりさせ、真の高級時計会社をその他と区別するだろう」
 と、パルミジャーニのジャン・マルク・ジャクトー氏は言う。

 問題は、ここ3、4年間は注文状況と市場の現状にずれがあったということだ。
「多くの小売業者は実際に仕入れられる時計の数を確保するするため、必要以上の数を注文した。本当の問題は、小売業者が注文に必要な資金を賄う信用貸しを拒否されていることだ。2009年は整理の年になるだろう」
 とジャクトー氏は予測する。

swissinfo、サイモン・ブラッドレー ジュネーブにて 中村友紀 ( なかむら ゆき ) 訳

国際高級時計見本市

第19回国際高級時計見本市 ( SIHH ) は2009年1月19~23日に開催された。SIHHは世界中の専門家を対象にした招待客だけの見本市だ。
見本市に最新モデルを出品したブランド:「A.ランゲ&ゾーネ ( A. Lange & Söhne ) 」、「アルフレッド・ダンヒル ( Alfred Dunhill ) 」、「オーデマ・ピゲ ( Audemars Piguet ) 」、「ボーム&メルシエ ( Baume & Mercier ) 」、「カルティエ ( Cartier ) 」、「ジラール・ペルゴ ( Girard-Perregaux ) 」、「IWC」、「ジャガー・ルクルト ( Jaeger-LeCoultre ) 」、「ジャンリシャール ( JeanRichard ) 」、「モンブラン ( Montblanc ) 」、「オフィチーネ・パネライ ( Officine Panerai ) 」、「パルミジャーニ・フルーリエ ( Parmigiani Fleurier ) 」、「ピアジェ ( Piaget ) 」、「ラルフ・ローレン・ウォッチ&ジュエリー ( Ralph Lauren Watch and Jewelry Co ) 」、「ロジェ・デュブイ ( Roger Dubuis ) 」、「ヴァシュロン・コンスタンタン ( Vacheron Constantin ) 」、「ヴァンクリーフ&アーペル ( Van Cleef &Arpels ) 」
これまでにスイスになかった最新テーマ「時を考え、スイスの素晴らしさを考える ( Think Time Think Swiss Excellence ) 」で臨んだ今回のSIHHに、初めてスイス時計協会が出席した。
また、SIHHは偽造反対国際キャンペーンを始動し、スイス時計協会との連携で実施している。
世界一の規模を誇る時計宝飾展「バーゼルワールド」は2009年3月26日から4月2日までバーゼルで開催される予定。

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