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不法滞在者の実態レポート

不法滞在者はスイスのみならずヨーロッパの大きな問題。 Keystone

世界移民デーに際し、国際移民保護会議の構成員であるスイスのフォーラムが、スイスに流入する移民事情を調査した「移民レポート」を発表した。同フォーラムの調査は今回で3回目となる。                                       

スイス国内に無許可で滞在する外国人の数は7万人とも18万人とも言われるが、その数はもとより実態を把握するのは難しい。                                                                                

国連の統計によると、世界の人口の35人に1人は難民で総数は1億7千5百万人だという。スイスは移民を伝統的に受け入れてきた歴史がある。前世紀には隣国のイタリアやスペインなどからの移民がスイス国内に流入した。時と共に外国人の占める割合が高くなり現在、人口の2割が外国人である。
しかし、統計の対象となるのは外国人は登録された人々で、不法滞在者は含まれない。しかもその数は増加の傾向にあるという。冷戦の終結、ボスニア戦争、北と南の経済格差の拡大などを背景に移民が増加している。スイスを始め欧州諸国では、外国人の受け入れ要綱を見直し、国内経済の観点から、労働者としての外国人を積極的な受け入れる一方で、不法滞在者の防止にも力を入れる方針である。

移民問題の中でも重要な問題

「移民レポート」を発表したスイス移民フォーラムのデニス・エフィオナイ・メーダー氏は、「不法滞在になった経緯やその理由を考えると、疑問が次々と湧いてくる。不法滞在者を把握するのは非常に難しい」と語る。

 2年前の同レポートに発表された統計では大きく幅があり、スイスの不法滞在者は7万人とも18万人とも言われ、しっかりとは把握されていない。移民フォーラムが今回発表した調査では、内務省社会保障局に不法滞在者の生活実態や社会保障の実態について問い合わせ、不法滞在となった経過やその実態に迫った。
「不法滞在者の問題はこれまで、あまり認識されていなかった。今年、フリブールの教会に不法滞在者たちとその共鳴者がバリケードを張った事件以後、各地で同様の動きがあり、難民問題の中でも注目され始めている」
と同氏。

 一般の人にもこの問題の認識を高めてもらうために、移民フォーラムの調査報告は公開され誰でもが読めるようになっている。とかく感情的になってしまうスイス国民が、違法滞在者の実態を正確に知る必要性を同氏は訴えている。

スイス国際放送 パトリシア・イスラス・ツゥッテル(佐藤夕美 (さとうゆうみ)意訳)

スイスに住む主な外人
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ポルトガル人
ドイツ人
トルコ人
スペイン人
フランス人
マケドニア人
ボスニア人
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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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