フライト中も携帯電話OKに
吉報か凶報か。フライト中の携帯電話の使用が来年からヨーロッパの航空会社の一部で可能になる。
欧州連合 ( EU ) が決定した携帯電話解禁に急ぐ航空会社もあれば、慎重なところもあるが、スイスインターナショナルエアラインズは必要な設備を現在整えていない上、解禁には慎重だ。
「技術の発展には注目しているが、今は導入するつもりはまったくない。わが社の顧客の反応は、機内で百人もの乗客が携帯電話で話すことは迷惑だというものだった」と広報担当のジャン・クロード・ドンツェル氏は言う。
新しい技術に応じた新しいルール
電車と違って飛行機内では逃げ場所がない。
「フライト時間が12時間の東京便で、隣の人の個人的話を聞きたいと思う人はいないのではないか。しかし、可能性を全面的に否定するものではない。市場の動向を見極め、顧客の要望を聞いていくつもりだ。需要があれば検討する」
とスイスインターナショナルエアラインズは解禁には消極的だ。
機内での携帯電話の使用は、操縦のための通信を妨害する危険性があったためこれまで禁止されていた。しかし、技術が発達しこの問題は解決した。携帯電話の電波は、フライト用のネットワークにはつながらず、アンテナの「ピコセル ( picocell ) 」に飛び、衛星につながるようになる。これで、操縦通信の妨害は避けられるようになる。
アンテナの設置は各社に委ねられており、EUの規制緩和は、このアンテナの設置を可能にしたものだ。これにより、EU各国政府は、今年末までに機内での携帯電話の使用を認めなければならないことになる。周波を携帯に割り当てることやアンテナの安全性の認可なども必要だ。スイスでは、連邦通信局が周波の許可を管理しているが、EU規格に従っている限り問題はない。一方、アンテナについては、連邦民間航空局 (BAZL/OFEC ) が担当する。
「基本的にはドイツのケルンにあるヨーロッパ航空安全庁 ( EASA ) がすべて検査した。スイスも加盟国なので、同庁が許可したアンテナならば自動的にスイスでも使用できる。検査過程の正当性やアンテナが正常に動くかをチェックするだけでよい」
と広報担当のアントン・コーラー氏は語った。具体的にはまだ確実ではないが、モニタリングは必要になるとみられる。というのも、アンテナを設置することにより機体のデザインがまったく違ってくるからだ。現在のところ連邦民間空港局には、航空会社からの申請は無いという。
本当に邪魔されない?
機内携帯電話の技術「ピコセル」を開発した「オンエアー社 ( OnAir ) 」はジュネーブに本社を置くが、EUの認可を歓迎している。すでに数社との契約も成立したという。オンエアーの広報担当、チャーリー・プライヤー氏は、携帯の着信音や大声での会話に乗客が迷惑するといった多くの人が持つ懸念を払拭する。
「航空会社は、機内の雰囲気をマネージする専門家だ。わが社のシステムは、乗務員が完全に携帯電話の通話を管理できるようにしている。マナーモードにすることや音声のボリューム管理も1カ所でできるようにした」
と語り、例えば夜間飛行では、システムをオフにするといったことを提案する。一方、ウィークデーにはビジネスマンの乗客も多く、こうしたサービスの需要は高まるはずだという。
他人の電話での会話に常に邪魔されるのではないかという心配に対しても
「ピコセルの容量は同時に12通話まで。機内の全乗客が通話しだすという懸念は無い。通路1本の大きさの機体なら、12人が同時に話すという容量で十分であるというテストもしている」
と言うが、はたしてそうなのか?ピコセル1台で12人であり、設置する台数に制限は無い。現在のところヨーロッパの4社を含む11社から、オンエアーに問い合わせがあったという。まずは試験的に1台設置し、発注台数を増やす意向だ。
swissinfo、ジュリア・シュラッター 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳
EU圏内を飛行機で移動する人たちの9割が、携帯電話を携帯しているとみられる。
機内での携帯電話使用が解禁になれば、3000メートル上空でも通話が可能となる。料金は、機内携帯電話使用料金に準じることになる。「フランス航空 ( Air France ) 」はすでにテスト施行中。すでに「TAP」、「BMI」、「リアンエアー ( Ryanair ) 」がアンテナを設置した。
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