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UBS銀 イランとの取り引き停止

米国への顔色伺い?欧州諸国の銀行の中でイランとの取り引き停止決定をしたのはUBSが初めて。 Keystone

スイス最大手UBS銀行が今年から、イランとの取り引きを停止していることがこのほど明らかになった。最近、イランが核開発研究を開始したことを発表したことが、きっかけのひとつとなったようだ。

UBSはまた、シリアとの取り引きも制限していることも明らかになった。第2大手のクレディ・スイスもイランとの新しい取り引きは控えていることが判明した。欧州諸国の銀行で、イランとの取り引きを停止したのはUBSが初めて。

 今年からUBSは、イランの個人、企業顧客、イラン中銀などとの取り引きを全面的に停止したことを、1月22日付けのゾンターク・ツァイトゥング紙上でUBS広報のセルジュ・シュタイナー氏が認めた。亡命イラン人との取り引きは今後も引き続き行うという。

核兵器問題も理由の一つ

 シュタイナー広報担当によると昨年秋からイランとの取り引きの停止のための準備が進められてきたという。UBSにとって、イランとの取り引きは利益が上がらないと判断されたためで、核兵器問題との直接の関連については発言を控えたが、米ブッシュ大統領に「悪の枢軸」の1国と名指されたことは「UBSのリスク評価で大きなマイナス点となっている。リスク調査に莫大な労力がかかるため」と言う。

 米国に「悪党の国」と呼ばれたシリアとの取り引きも制限していることを認めたが、詳細については公表されていない。

クレディ・スイスは検討中

 一方、銀行第2大手のクレディ・スイスは、イランおよびシリアとの取り引きについて、発言を控えている。ゲオルク・ゼントゲラト広報担当は「イランの政治動向に注目している。今後の取り引きについては、消極的である」と認めた。

 一方、現在のところ取り引きを停止しない理由としてクレディ・スイスは、イランと貿易をしているスイス企業への融資は契約上、即刻停止することは不可能であることや、貿易はスイス政府からの保証もあり、政府は対イランおよびシリアとの取り引きに対し制限をしていないことなどを理由に挙げた。

UBSと米国との関係

 これまでスイスの銀行は「中立」を盾に、米国はもとより国連の経済制裁決定を無視し続け、ローデシア、南アフリカなどとも取り引きを続けてきた。しかし、今回のイランとの取り引きの全面停止決定を通し、UBSは決してモラルで動いているわけではなく、単に米国顧客の資産運営を重要視していることが伺われる。

 今回のみならず、米国の顔色伺いはあった。米国の対シリア経済制裁が発表された際もUBSは、シリアにおける融資の撤退を即刻発表した。融資はシリア国営のコマーシャル・バンク・オブ・シリアに対してのもの。米国から、この銀行でテロの資金のためマネーロンダリングが行われていると指摘されていた。 

swissinfo、 外電および佐藤夕美(さとうゆうみ) 

スイスに預けられているイラン資金は13億9800万フラン(約1267億円)。
このうち91%がUBSとクレディ・スイスに預けられている。
スイスに預けられている中東諸国(イスラエルを含む)の資金は391億フラン(約3兆円)(スイス国立銀行統計2004年)

2005年1月10日、イランは核開発研究の再開を発表。米、EUは国連安保理で同問題の討議を要求している。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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