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「防火たばこ」、スイスに火をつける

立ち上る紫煙 Keystone

ヨーロッパのたばこ製造企業は、2011年から自動消火作用のあるたばこにのみ販売許可を与えるというイニシアチブを義務付けられるが、スイスもこれを追随することになるかもしれない。

欧州委員会 ( EC ) は今週、たばこに関連した火災と死亡者を削減するためのたばこの新しい防火基準案を発表した。保険会社とたばこ製造企業はこの動きを歓迎しており、連邦内務省保健局 ( BAG/OFSP ) は、この方策は両者にとって有益だと述べる。

自動的に火が消えるたばこ

 「もし欧州連合 ( EU ) が自動消火たばこにのみ販売許可を与えるならば、スイスもそれにならう可能性は十分にあります」
 と連邦内務省保健局の広報官ミヒャエル・アンデールエック氏は述べた。

 たばこ製造企業は、法的な安全基準に合わせたモデルを開発した。たばこの巻紙にはセルロースでできた3本のバンドがついている。それらは「スピード・バンプ ( speed bump) 」の役割を果たし、たばこの燃焼時間を短くすることができる。吸わずに放置されたたばこの火は、1番近いバンドに到達すると消えるようになっている。

 ニューヨーク州は、2003年に「ファイヤー・セイファー ( fire safer ) 」と呼ばれる 火災予防面で比較的安全なたばこを導入した最初の州で、アメリカのほかの35州とカナダもこれにならった。
「たばこの火は、毎年火災の主要原因となっています。山火事の多くもたばこの火が原因です。ファイヤー・セイファーの導入で、毎年何百人もの命を救い、火災を減らすことができるようになるでしょう」
 とECの広報官は述べた。

ベッドでたばこを吸わないで

 EU加盟国14カ国とアイスランド、ノルウェーの2005年から2007年のデータによると、毎年たばこが関連した火災が1万1000件発生しており、520人が死亡、そして1600人が負傷した。

 スイスでも毎年たばことほかの喫煙製品によって約500件の火災が発生しており、年間約2000万フラン ( 約20億3500万円 ) 相当の被害が生じている。ベッドでたばこを吸っている間に眠り込んでしまったために火事が発生し、死亡した人の数はおよそ15人にものぼる年もある。

 連邦内務省保健局の広報官カリン・ベギー氏は、
 「この防火対策法は、連邦内務省保健局と消防機関の両方にとっての関心事です。そのような対策はスイスでも可能ですが、まずたばこ製品に関する法律を採択しなければなりません」
 と述べ、スイスはヨーロッパのイニシアチブの成り行きを見守ると付け加えた。

 自動消火たばこの支持者は、すべてのたばこからほかの物に引火する可能性があるものの、防火たばこの技術は、普通のたばこが家具などに引火するのにかかる時間より、燃焼している時間の長さを短くすることによって、引火と火災発生のリスクを大幅に減らすことができると主張している。

技術革新

 「スイス保険協会 ( The Swiss Insurance Association ) 」は、損害防止に役立つと、この技術革新を歓迎している。

 たばこ大手のフィリップ・モリスは、条件付きでEU基準の導入を支持すると表明している。それらの条件は、たばこの引火性の軽減に関するEUの基準が、ニューヨークとカナダで導入された基準と同様であること、すべての紙巻きたばこに適用されること、全たばこ製品のデザイン変更に必要な時間を十分に与えられることなどだ。

 しかし、フィリップ・モリスのスイス支社広報担当者フランソワ・トーネン氏は忠告する。
「消費者は、そうした技術的な変化でたばこが「安全」または「比較的安全」になるわけではないということを理解しなければなりません。『ニューヨーク基準』に合わせたたばこもそうですが、燃えるものなら何であれ、注意を怠れば火災の原因なり得ます」

 「一般製品安全委員会 ( General Product Safety Committee )」 のEU加盟国代表は、2007年11月にたばこの火災安全性に関する新基準を支持した。また、「欧州標準化委員会 ( The European Standardisation Committee )」 は、EU全体に適用される基準を現在作成している。準備作業はすでに開始され、基準案の内容についてECとの話し合いが行われた。技術的な問題への取り組みは夏が終わってから開始される。安全基準は成立後に官報で発表され、EU全体に適用されることになる。EUで販売されるすべてのたばこはこの安全基準に従ったものでなければならない。

swissinfo、ジェシカ・ダシー 笠原浩美 ( かさはら ひろみ ) 訳

「防火たばこ ( “fire-safe” cigarette ) 」は、火をつけたまま吸わずに放置した場合、自然に消火するためたばこの燃焼時間が短くなる特徴を持っている。
たばこをくるんでいる巻紙には、小孔性の薄いバンドが3本付いており、そのバンドがたばこの燃焼を低下させる「スピード・バンプ ( speed bump ) 」 の役割を果たす。火が付いたまま放置されたたばこはバンドまで燃えた後、自動的に消火する。
防火たばこは、たばこの引火強度を測定する基準テスト方法に従った既存のたばこ防火基準に従っている。
大抵のたばこが寝具素材に引火する前に、防火たばこの火は消えてしまう。
ニューヨーク州は、防火に配慮して製造されたたばこにのみ販売許可を与えることにした最初の州だ。カナダもこのニューヨーク基準を採用し、防火たばこの販売は義務となった。
これらは大量生産のたばこに対する規制で、手巻きたばこや葉巻には適用されない。

反喫煙団体の「ノン・スモーキング・スイス ( The Non Smoking Swiss ) 」 によると、1人あたりのたばこ製品消費量が多い国は、スイス、ハンガリー、ポーランド、アイルランド。
スイス人の14歳から65歳までの人口の約3分の1が喫煙者で、そのうち約20%が毎日喫煙している。
2005年の喫煙者の平均的な1日当たりの喫煙本数は約16本。この数字はそれ以前の6年間とほとんど変わっていない。2006年の調査では、男性の32%と女性の26%が喫煙者。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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