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2004年のできごと 

ウイリアム・テル初公演から200年の今年。テルがいまのスイスを見たらどんな感想を持つだろうか。 Keystone

保守派が勢力を伸ばし、新しく国民党のクリストフ・ブロッハー氏と自由民主党のハンス・ルドルフ・メルツ氏が入閣。オリンピックはスイス選手の目立った活躍もなく終わった。回教徒の女性が頭に被るスカーフについての議論など、異宗教と異民族の問題も浮上。世界的にテロ問題はまだ解決せず、スイス国内でも危機管理と国民の自由のバランスが常に問われる1年だった。

ダイス大統領が日本を訪問、200年前に日本を訪れたスイス人によって描かれた水彩画が再発見されるなど、スイスと日本の関係を浮き彫りにするニュースもいくつかあった。

旧年中はスイスインフォをご愛読頂きありがとうございました。スイスインフォの日本語サイトは来年も、スイス各地で起こったニュースや日本と関連するニュースを積極的に報道していきます。今後ともよろしくご愛読ください。
新年も読者の皆様のご多幸をお祈り申し上げます。

1月3日

欧州人に人気のエジプトのリゾート地、シャルマンシェイクを離陸したエジプトのフラッシュエア(ボーイング737機)が離陸直後紅海に墜落し、乗客乗務員148名が犠牲となった。連邦民間航空局(FOCA)は事故後、同機はスイス国内の発着陸が拒否され上空を通過することを許可されないなほど危険な機体だったとコメントを出し、スイス国内外で大ニュースとして取り上げられた。

3月10日

バーゼルやシャフハウゼンが接する国境のドイツ税関が、スイスからの入国をこの日から急に厳しく取り締まるようになった。ドイツ国境警察(BGS)は、「これまで、シェンゲン条約があるにもかかわらず、スイスからの入国審査が甘すぎた」と対応の変化を説明。その後、政府間での話し合いにより通常化したが、EU非加盟国スイスは他国に対して不利であることが浮き彫りとなった事件だった。

1月14日

新内閣が正式に成立。法務相として国民党のクリストフ・ブロッハー氏が、財務相として自由民主党のハンス・ルドルフ・メルツ氏が就任。7人の閣僚ポストの党配分は国民党2、社会民主党2、自由民主党2、キリスト教民主党1となった。

3月19日

連邦交通省はこの日、アルペン縦断鉄道のレッチベルク・トンネルの建設費として8億フラン(約720億円)追加予算が必要であることを明らかにした。6月には議会が補正予算として9億フラン(約812億円)を承認した。地層問題が次々に発覚し、トンネル建設の費用はかさむばかりである。

4月7日

バーゼル古代博物館は4月7日から10月3日まで、「ツタンカーメン・黄金の来世」展を開催した。このような大規模の展覧会はヨーロッパでは23年ぶり。開催者の予想を上回る62万人が展覧会を訪れた。

6月5日/6日

6月5日から2日間、ローマ法王ヨハネス・パウロ2世が首都ベルンを訪問した。ローマ法王のスイス訪問は20年ぶり。これまでバチカン大使は、在プラハの大使が特別大使として兼任していたが、今回の法王訪問に際し政府は、バチカン大使を在ローマ・スイス大使館に正式に派遣することにした。

7月23日

ゲーテ演出、シラー脚本の「ウイリアム・テル」がドイツ中部にあるワイマール市の宮廷劇場で初演され今年で200年。これを記念し、リュトリの丘でこの日から約1ヶ月の間、ワイマール国立劇団による「ウイリアム・テル」がオープンエアーで連日、上演された。

8月1日

連邦議会前広場が大改装され州の数である26個の噴水が新たに設置された。この日噴水は勢いよく水を吹き上げ、広場に集まった市民はスイスの建国記念日を祝った。

8月4日から14日まで

スイス南部ロカルノ市で開催された恒例の国際映画祭で、日本の市川準監督の『トニー滝谷』が審査員特別賞、国際批評家連盟賞、ヤング審査員賞の3つの賞を受賞した。グランプリの金のレオポルド賞は、イタリア・セヴェリオ・コンスタンツォ監督の『プライベート』が受賞した。

8月13日から29日まで

アテネ夏季オリンピックへスイスは99人の選手を送ったが、成果は振るわず、取得メダルは金1、銀1、銅3個と合計5個に留まった。テニスのロジェー・フェデラー選手は第2戦であえなく敗北。
一方、同選手は全米オープンテニス、ウインブルドンなど数々の選手権で優勝し、12月には昨年に続きスイスを代表するスポーツ選手として選ばれた。

8月27日

チューリヒのクレディ・スイス銀行の口座に預けられた日本の犯罪組織の資金が州当局に没収され、現在チューリヒ州の口座に保管されている。没収されたのは、日本の暴力団山口組系旧五菱会のヤミ金融事件に関連した資金6,100万フラン(事件当時の為替レートで約52億円)。州当局は同資金の配分について、日本からの申し入れなどを念頭に検討中である。

9月30日

スイスとイタリアの国境の峠付近にある修道院で救助犬として育てられてきたセント・バーナードが売られることが、大衆紙ブリックの報道で明らかになった。グラン・サン・ベルナール峠(標高2,469メートル)のサン・ベルナール修道院では、修道士の数もめっきりと減り、18頭のセント・バーナードの世話を続けるのが難しくなったためという。

10月9日から15日まで

ジョゼフ・ダイス大統領夫妻が日本を訪問。小泉首相ほか、町村信孝外務大臣、竹中平蔵内閣府特命担当大臣、亀井義之前農林水産大臣などと会見。13日には天皇皇后両陛下と会談した。

10月19日

ジュネーブ近郊のフランスに跨ってあるセルン(CERN=欧州合同素粒子原子核研究機構)の50周年式典が行われた。ダイス大統領ほか、日本の遠山敦子前文部科学大臣、シラク仏大統領、スペイン国王などが記念式典に出席。物理学の基礎研究が行われている同研究機構は、ウェブ(World-Wide Web)を発明されたことでも有名。

11月1日

たばこ条例の改定が行われ、11月1日から発効となった。たばこの有害物質の成分表示を義務化するほか、害が少ないかのような誤解を生む可能性が高い「ライト」や「マイルド」といった表記は禁止される。また、欧州諸国と比較して安い値段も段階的に引き上げられる。

11月21日

スイスの大学やイスラム協会調整団体から、イマーム(イスラム教の導師)教育課程を大学で行う提案が出たことを受け、政治家の間で、激しい議論となった。「イスラム教徒の自由なスイス社会への同化を助けるものだという支持派と「キリスト教国であるスイスの国立大学にイスラムコースの場はない」という反対派がその後も引き続き、新聞紙上およびテレビで対立した。

11月27日

ソロトゥルン州のグレンツェンバッハ市で、地下のガレージが炎上。消火活動を行っていた消防士7人が、落ちてきた天井の下敷きとなって死亡した。消防団の消火活動中の事故としてはスイス史上最悪の事件となった。

11月28日

国民投票でヒト胚性幹細胞(ES細胞)を使った研究が66.39%の賛成で承認された。これまでスイスでは、ES細胞を利用した研究についての法律がなかったが、新法で定められた一定の条件を満たす研究を政府が認可することで、スイスの医学研究が促進することを国民が望んだ結果となった。

12月7日

経済協力開発機構(OECD、本部・パリ)が発表した2003年のOECDの学習到達度調査によると、スイスは、前回の調査で18位だった科学が12位に向上。7位だった数学は10位に後退したが、それでも平均点が527点とOECD平均を上回った。一方、読解力は17位から13位と向上したものの、平均点が499点とOECD平均を下回った。同調査は2000年から始まり今回で2回目。今回は、41カ国・地域の15歳の生徒25万人以上を対象に実施された。

12月12日

スイス連邦鉄道のダイヤが大幅に改定され、多くの路線での時間短縮が実現した。たとえば、チューリヒからベルンまではこれまで69 分かかったがこの日から58分に短縮。ローザンヌまではこれまでより15分短縮され131分となったほか、多くの路線で30分間隔で電車が発車するようになった。

12月16日

連邦政府の文化支援組織、プロ・ヘルヴェティア文化財団の来年の予算を100万フラン(約9千万円)削減し、3,300万フラン(約29億7,000万円)にすることを上院と下院の両院が決定した。予算削減の「起爆剤」となったのは、パリにあるスイス文化センターで催されている「スイス・スイス・デモクラシー」展で、スイスを侮辱する内容と議会が判断したため。同文化財団の自治権が問われる事件となった。

12月26日

スイス政府はインドネシアのスマトラ島沖で発生した地震による大津波が襲ったインド洋沿岸諸国に対し、緊急支援のために100万スイスフラン(約9千万円)を拠出することを決定した。
スイス人の犠牲者は05年4日時点で23人確認されたが、今後増加する見込み。

スイス国際放送 まとめ 佐藤夕美 (さとうゆうみ)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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