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ものづくり大国スイス

第39回技能五輪国際大会の閉幕式。スイスの「ものづくり」精神が評価された Keystone

静岡県沼津市で11月14日から1週間にわたって開催された「第39回技能五輪国際大会」でのスイスの若き職人たちの活躍は素晴らしいものがあった。

参加選手40人のうち33人がメダルを受賞し、韓国に次ぐ快挙を果たした。

 「技能五輪国際大会」は1953年から2年おきに開催されている。スイスが積極的にこの大会に参加するようになったのは、20年ほど前から。参加者も年々増加し、今年は40人の若い職人がその腕を披露した。

仕事の合間を縫っての準備

 28人が入賞した前回のヘルシンキ大会を上回る好成績を上げ23日夕方、スイスに帰国した一行は、ドリス・ロイタルト経済相をはじめ、両親、親戚、同僚などおよそ800人の歓声に迎えられた。

 タイル張りで金メダルを受賞したミルコ・チェネットさんは日本での様子を
「ライバルたちがとてもよく準備していたのが感じられました。韓国は2年間準備していたと聞きました。でも、僕もしっかり大会に備えましたから」
 と語り、金メダル受賞者の余裕を見せた。

 他国の職人たちは準備期間が充分取れるが、スイス人はほとんどが仕事の合間を縫って、3カ月程度の練習で参加するのだという。出迎えの人々の中で、背伸びをして優勝者たちになるべく近づこうとしていたのは、シュテファニー・アルベルトさん。チェネットさんのガールフレンドだという。
「彼はタイル張りがとても楽しいと感じているし、ともかく好きなんです。でも私にもきちんと時間をとってくれるから大丈夫」
 と言う。

職業教育の重要性

 スイスでは、職業学校に通い理論を学びながら企業で見習い技術を取得していく2本立てのシステムで職人を育てている。しかし近年、見習いを受け入れる企業が少なくなり、職人が育たなくなるのではという声が高くなっている。このような状況を指しロイタルド経済相は
「政府は企業へ強力に働きかけ、見習いを受け入れるよう申し入れている。スイスの職人たちこそ、( スイスが重視する ) アジア市場への門を大きく開くだろう」
 と語った。

 西洋料理で銀メダルを受賞したマルコ・メールさんを指導しているクルト・エーラッハーさんも、見習いを受け入れる企業を探し出すことの困難さを自覚する1人だ。
「ほとんど口コミです。すでにその職業に就いている先輩と知り合いになり、その人を通して問い合うというのが、一番確実な方法です」
 論理と技術の2本立ての職業教育であるにも関わらず、若者は自力で受け入れ企業を探さなければならない。

 高い技術を持った職人が育つ土壌があるといわれるスイス。今回の技能五輪国際大会でも、その実力が示された。しかし、若者の失業問題がある一方で、時計業界などにみられる専門職人の不足などもある。将来も引き続きより多くの腕の良い職人たちを育てていくためには、企業が教育の重要性を認識し、政府が効果ある政策を実施することが望まれる。

swissinfo、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

スイスの成績
金賞 4人
銀賞 7人
銅賞 5人
敢闘賞 17人
受賞者合計 33人

日本の成績
金賞 16人
銀賞 5人
銅賞 3人
敢闘賞 8人
受賞者合計 32人

受賞者数最多国
韓国 ( 40 )、スイス ( 33 ) 、日本 ( 32 ) 、チャイニーズタイペイ ( 29 )

11月14日から21日まで、静岡県沼津市で開催された。
参加国・地域 46カ国
参加選手数 813人
来場者数 27万5600人
参加資格は22歳以下 ( 一部の職種は25歳まで )
次回は2009年、カナダのカルガリーで開催される予定。

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