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エストニアの検死にベルンのハイテク



すべてのオフィスが一つ屋根の下に。新科学捜査研究所は2011年に公式に開設される

すべてのオフィスが一つ屋根の下に。新科学捜査研究所は2011年に公式に開設される

(swissinfo.ch)

法医学者や犯罪学者の任務は、事件の謎を解明するために、髪の毛一本からわずかな微粒子まで一つ一つを事細かに分析することだ。しかし、高性能な施設を導入するためには多くの資金が必要となる。

スイスから補助金を得て、最新のテクノロジーを導入することで、エストニアは近い将来、死体を解剖せずに検査することが可能になり、犯罪がより速やかに解明されることになる。

新研究所を訪れて

 「わたしは以前よくスイスを訪れました。トヨタ・エストニア支社のマーケティング部長として、時々ジュネーブ・モーターショーに足を運びました」
 とユーラー・ランノ氏は最初の挨拶の際に語る。一体どのような経緯でかつてトヨタ車を売っていた人物がエストニアの科学捜査研究所長になったのか。それは謎のままだ。

 ランノ氏の経歴に関する謎の解明は、「彼の」研究所を訪れた後までお預けとなる。研究所は現在、三つの古い建物に分散されている。タリン市 ( Tallinn ) の境に建築中のビルは、内装工事が終了したところだ。

 「この建物は、16階建てになり、40以上の科学専門分野のオフィスが入る予定です。例えば、法医学、法医精神病学、サイバー犯罪対策、犯罪防止学、データバンク、検察庁、爆薬処理などさまざまな部署があります」
 とランノ氏はビルの外装を見せて誇らしげに語る。

 この建物を見てなぜ16階なのか、と疑問が沸いてくるところだが
 「そうです。地上に7階が、地下に9階が建設されています」
 とランノ氏は説明する。

 まだ手すりのついていない地下室の階段を下りていくと、将来法医学の部署が入るオフィスがあり、壁は白く塗装されている。
 「ここには『ヴルトボット ( Virtobot ) 』が2体入ります。これはスイスで開発されたもので、スイスから補助金を得て導入したスキャナーです」
 とランノ氏は語る。

死体の3D写真

 「このスキャナーによって、死因や内傷、死亡推定時刻などを解明するために死体を解剖する必要がなくなりました。また、歯並びや術後の結果、けがをチェックし、国内外の犯罪データバンクの写真と比較するために、生きた人間をスキャンすることもできます」
 とランノ氏は語る。

 「『ヴルトボット ( Virtobot )』は、そもそも『仮想死体解剖』という意味で、産業用ロボットですが、かなり精密に死体を3次元写真で写し出します。このロボットは、ベルン大学の法医学研究所で開発されました。ヴルトボットは疾患を識別する際にも用いる、MRI ( 磁気共鳴影像法 ) や、CTスキャン ( コンピューター断層画像法 ) を利用して死体解剖を行います」
 とランノ氏は続けて説明する。

 「スイス連邦基金から補助金が拠出され、開発されたハイテク設備は、死体をデジタルで保存し、解決できなかった事件に新たな洞察が得られた時に、事件後何年たっていても新たに死体解剖を行うことができるのです。その上、わたしたちは、この写真を国際刑事警察機構を通じて、即座にほかの検査機関に提供することができます」
 とランノ氏は付け加える。

EUとの共同作業

 エストニアは、ほかの欧州連合 ( EU ) 15カ国と比較して高い犯罪率を下げるために、過去数年間、さまざまな改革を行った。そこで国内の捜査活動が統一され、法務省の監督下に置かれるようになった。
 「権力分散の社会システムはソビエト時代が残した遺産なのです」
 とランノ氏は語る。

 ランノ氏は、エストニアの犯罪率が比較的高いのは、エストニアがロシアとスカンジナビア諸国の間にあり、通過点になっていることが原因だと言う。ロシアとの国境はEU諸国とロシアの国境でもある。
 「こういった地理的条件により、わたしたちもほかのEU 諸国と協力して、緊密に仕事をしています」
 とランノ氏は強調する。

タイミング良く経済援助を得て

 スイスは科学捜査研究所がハイテク施設を導入するために、350万フラン ( 約2億9000万円 ) を援助した。この援助はEU拡大に伴い、新EU諸国の社会格差、及び経済格差を軽減させることを目的に行われた。

 スイスが拠出した補助金により、研究所は新しく、解像度が限りなく高い電子顕微鏡を購入し、それに携わる教育も受けることができた。

 「射撃弾から飛び散った微粒の成分も確認できるような高性能な顕微鏡の寿命は約10年です。これまで使用していたわたしたちの顕微鏡は今の時代には古いものになってしまいました。新しい顕微鏡を必要としていた時期に、ちょうどスイスから援助を受けることができたのです」
 とランノ氏は歓喜の表情を浮かべる。

 来週から来月にかけて段階的に新築ビル内のオフィスが開設される。現在、工事現場では最後の仕上げに壁が塗装され、床を敷く作業が行われている。しかし地下階はまだ真っ暗だ。
ある部屋は声がかなり響く。
 「ここは警察用の奥行き300メートルの射撃場です」
 とランノ氏は説明し、部屋の明かりを点けるためにスイッチを探す。しかしあたりは真っ暗で、スイッチを見つけることができない。

車と科学捜査の類似性

 場所は別の階に移り、天井が高く、車が乗り入れられる傾斜路が設置された大きな空間がある。
 「ここはわたしたちが調査に使う車庫です。盗難車をここに運び入れ、泡のスプレーをかけ、それをはがします。そうすると車が新しく塗り替えられたかどうか判明します。また、短時間で指紋や事件の鍵を握る微粒子を見つけることができます」
 とランノ氏は説明する。

 ランノ氏に初めて会ったときに浮かんだ謎は、市内に戻る途中の車内で解決する。
 「わたしは医者として長年病院に勤務していました。それで法医学精神科医の専門用語を使って話せるのです。これは大変興味深い、この仕事をする上で、大きな利点となっているのです」
 と彼は説明する。法医学と車、どちらも最新のテクノロジーとは切っても切れない、非常に繋がりが深い分野だ。

アンドレアス・カイザー、タリンにて、swissinfo.ch  
( 独語からの翻訳、白崎泰子 )

スイスとEU   

欧州連合 ( EU ) は1986年に結束政策を導入した。目的は経済格差を軽減するため。
1988~2004年にかけて、結束政策のために約5000億ユーロ ( 約56兆円 ) が投入された。
2004年にはほぼ中東欧諸国の10カ国がEUに新しく加盟し、EUが拡大された。それ以降、結束政策のための資金はほとんど新EU諸国のために拠出された。2007年以降はルーマニアにも資金援助が行われた。
スイスでは2006年、東欧諸国援助法が国民投票で可決され、新EU諸国を援助するための具体的なプロジェクトに対して補助金を支払うことを確約している。
その際、スイスは他国から独立して資金援助を行う。それは、スイスからの補助金が用途不明のままEU結束政策基金にわたるのではなく、スイスがどの政策を援助するか自ら決定できることを意味する。
1990~2006年までスイスはEU加盟国内の経済格差を是正するために34億5000フラン ( 約2890億円 ) を、2007~2011年はさらに非EU諸国に7億3000万フラン ( 約614億円 ) を拠出した。

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(swissinfo.ch)


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