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プレスレビュー 安保法成立、スイス・メディア大きく報道「軍事力に依存しない平和主義のユートピア崩壊」

国会前では、数週間にわたり安全保障関連法案成立に反対するデモが続いた

国会前では、数週間にわたり安全保障関連法案成立に反対するデモが続いた

(Keystone)

安全保障関連法が19日未明に成立したことを受け、スイス・仏語圏のメディアも大きく報道した。に日本に報道記者を送るなどして、より詳しい分析を試みている。若者たちの反対運動を取り上げるメディアもあれば、軍事化する世界の流れの中で「安保法成立はこうした流れに抵抗できない当然な成り行き」と見るメディアもある。主要紙のル・タンは「日本が率先してきた、軍事力に依存しない平和主義のユートピアは崩れた」と嘆いた。

 「若者、日本の好戦的姿勢に対し立ち上がる」とのタイトルを付けた日刊紙ヴァントキャトラーは、国民の6割の反対にもかかわらず成立した安保法を、反対する若者に焦点を当て報道している。大学生の緊急行動グループSEALDsの1人の「戦争をするために、人を殺すために、生まれてきたのではない」と言う言葉も引用する。

 「若者の政治離れが進んでいた日本で若者による『驚きの反応』が起きた。ただし、古い時代のデモではなく、政治にヒップホップ的楽しさを持ち込もうとするデモでだ。一言で言えば、決して『革命』を目指しているわけではない」と解説する。

 また、一歩踏み込んで社会学者の小熊英二氏の分析に言及する。「小熊氏によれば、若者の意識が高まったのは、究極的には福島の原発事故が日本人の意識を覚めさせたからだ。政府はこの危機に対して何もせず、うそをつき続けた。またかつての経済発展を再構築できないことも明らかになった」

廃案へのプロセスは続く

 「抗議される自衛隊の規模拡大」というタイトルを付け、安保法成立を大きく報じた日刊紙トリビューン・ド・ジュネーブ。安倍政権の立場などを含め、客観的に背景を説明した後、「第2次大戦後に初めて、海外で米国及び他国軍隊とともに武力を行使することになる」と強調した。

 安倍政権は、同法案に対する国民からの大規模な反対に会い、政権の支持率も低下。特に数万人規模の反対デモは日本ではめずらしいと同紙は続けた。

 成立後も反対派の国会議員や日弁連、市民団体からの、「これで終わりではない。この法案を廃案に持ち込むためにあらゆる方法を使う」という趣旨のさまざまな宣言も紹介。特に、日弁連の村越進会長の次のような発言を載せた。「法案は平和憲法を犯すものだ…。立憲主義の民主主義のこの国の歴史に汚点を残すものでもある。今後、これを廃案に追い込むための法的なプロセスを進めていく」

他国の反応

 また、憲法解釈を認めるにしても、日本の自衛隊は他国軍よりは小規模の支援軍になるべきであるし、国会は厳密な指標にのっとって「支援」の規模を規定し、最小限の支援軍になるようにしなくてはならないだろうとのコメントを載せた後、他国の反応も載せた。一つは、オーストラリアのジュリー・ビショップ外相の「(法案の成立で)日本は今後、国際的な平和と安定に貢献するだろう」という言葉。次に中国の「安全保障において、隣国の懸念に注意を払うべきだ」という反応も並べた。

ユートピアが崩れた

 「日本は地球上の大国の中で、戦争を禁止するただ一つの国だった。少しずつ軍の規模を減らしていくことで、平和を構築しようとする『革新的な世界の動き』の先頭を切って進んでくれる国でもあった。しかし、この平和主義のユートピアは崩れ去った」と嘆き、客観的に世界の動きの中で今回の安保法成立を捉えるのは、ル・タン紙だ。

 そして、これはますます軍事化する世界秩序の文脈の中に、きちんと当てはまるものだと、悲観的に結論した。「軍隊で、そして戦争で、世界の秩序を保とうとする今の流れの中で、その流れに加わった日本を誰が批判できるだろうか?」。「米国の傘下にある30あまりの小国の多くが軍隊を縮小しているだけだ。日本の、平和主義に決別するという選択は、ますます軍事化する世界の流れの中に刻まれる、一つの動きに過ぎない」

swissinfo.ch

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