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クレディ・スイスなどの顧客情報開示をアメリカが最後通告

クレディ・スイスが入っているニューヨークのビル(左)。アメリカ司法省からの最後通告にスイス政府はどう対応するのかが注目されている Keystone

9月4日付けのスイスの日曜新聞2紙によれば、アメリカ当局が、アメリカ人顧客の脱税をほう助したスイス第2の大手銀行クレディ・スイス(Credit Suisse)などに顧客情報を6日を期限に開示するよう求めている。

アメリカ司法省ジェームス・コール副長官は、8月31日に連邦財務省(EFD/DFF)ミハエル・アンビュール次官に宛てた書簡の中で、「これに応じなければ該当銀行に対し法的強制力を伴う情報提出命令を発する可能性がある」と警告しているという。

 ドイツ語圏の日曜紙「ゾンタークス・ツァイトゥング(SonntagsZeitung)」と「NZZ・アム・ゾンターク(NZZ am Sonntag)」によれば、情報開示を求められている口座数は「かなりの数」に上る。対象となっている銀行はクレディ・スイスのほか、ユリウス・ベァー(Julius Baer)、ヴェゲリン(Wegelin)、チューリヒ州立銀行、バーゼル州立銀行など9銀行。対応次第ではアメリカ司法当局による訴訟に発展する可能性もある。

現行法での解決目指す

 スイス政府の広報担当官はスイスインフォに対し今回の書簡に関してはノーコメントとしたが、ロイター通信社に対しては「我々は現行の法律に基づいた解決を目指している」と述べたという。

 スイス側は先月、こうした問題に関し改定交渉中の租税条約に基づいて捜査に協力したいと提案していた。この改定租税条約は、脱税疑惑のある人々について個人としてでなく集団としての照会を可能にし、個人の身元確認は捜査申請受理国が行うとするもので、アメリカ上院による承認が待たれていた。

 しかしこれに対しアメリカ当局は、1000人を超える具体的な顧客名の提供を強く要求している。昨年、米内国歳入庁 ( IRS )によるUBS銀行に対する民事訴訟をめぐって、UBSが約4450人分の顧客情報を提供した後、歳入庁が訴訟を取り下げたという経緯がある。こうしたことを背景にアメリカ当局は、今回スイス側が問題解決に向けてどのような提案をするのか試すつもりだ、とゾンタークスツァイトゥングは伝えた。

 また同紙によると、アメリカ当局からの具体的要求は、アメリカ人とアメリカ法人の口座のうち、2002年から2010年までに5万ドル(約384万円)以上の預金があった全口座の詳細情報。その口座件数は数万件に上る可能性もある。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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