スイスの視点を10言語で

E-投票全国導入に向けて

インターネットや携帯から、国民投票ができるようになれば、投票率も上がるかもしれない Keystone

スイスでは自治体でのテストを通し、電子投票が全国の制度として2010年から導入される方向で検討が進んでいる。特に、外国に住む有権者にとっては吉報だ。

これまで3つの州で試験的に電子投票を行ったが、大きな問題はなかった。電子投票が全国的に実施されれば、時には3割を切ることさえある現在の投票率が上がるのではないかという期待もある。

 連邦内閣事務局はこのほど電子投票について、政府は全国的な導入を国民や議会に対して推奨する姿勢であるとの意見書を発表した。これまでジュネーブ、ヌーシャテル、チューリヒの3つ州で行われた電子投票は問題なく遂行され、投票者にも好評だったという。

外国からの投票

 外国に住むスイス人は1992年7月1日から、国民投票に参加できるようになった。投票は郵送で行われている。今回の政府の意見は、外国に住む有権者にとって吉報だ。「外国に住むスイス人がこれまで以上にすすんで投票登録をすることを望みたい」と在外者協会(ASO/OSE)のハインツ・エッケルト氏は語る。

 電子投票が悪用されないためにも、技術面、法律面でしっかりとした仕組みを作る必要があるが、全国的に行うためには3800万〜4億フラン(約35億〜370億円)の費用と、10年の時間が必要と政府は見込んでいる。見込まれる経費に大きな幅があるのは、インターネットか携帯電話かなど投票方法が決まっていないため。

ここでも連邦制

 政府は電子投票の導入経費として年間35万フラン(約3200万円)負担するが、その他の経費は各州、自治体が負担する。電子投票の方法や他州と協力するのか独自に開発するのかは、地方に委ねられるというのが政府の方針である。国民投票の方法についても、スイスはあくまで連邦制を重視している。

 政府は電子投票の導入を急ぐつもりはない。政府の指針は今後、連邦議会で審議されることになるが「有権者の1割弱しか電子投票は使わないだろう」と見ている。電子投票については、憲法の改正にかかわるため「強制的なレフェレンダム」により、国民に審議が問われることになる。強制的なレフェレンダムの場合は、過半数の賛成と賛成票が過半数に達した州の数が13州以上になる必要がある。セキュリティーの問題から反対する人も出るであろうから、今後の成り行きはまだわからない。政府が予定している2010年には導入されてほしい」とASO/OSEのエッケルト氏は望む。

swissinfo、外電 佐藤夕美(さとうゆうみ)

- 電子投票が導入されれば、特に外国に住む有権者が国民投票に参加しやすくなる。
- 1992年7月1日から外国に住むスイス人も郵送による投票が可能になった。
- しかし、郵便事情によっては投票できない場合もある。
- ベルン、ジュネーブ、ティチーノ、シュヴィーツ、バーゼルラント、ゾロトゥルン、ジュラの7州では、外国に住む有権者の州民投票が可能。
- 外国に住む有権者で投票登録をしている人は年々増加。2000年末では10万5000人が登録。外国に住むスイス人の2割にあたる。

電子投票のテストは、ジュネーブ、ヌーシャテル、チューリヒの地方自治体で行われた。
全国導入のための経費は最高4億フランの見込み。

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部