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HSBCの盗難顧客情報は2万4000人分

機密情報も盗まれないとは限らない Keystone

ヘルヴェ・ファルチアーニ元行員が盗んだ顧客情報は約2万4000人分に上っていたことをジュネーブのHSBCプライベート銀行が3月11日、明らかにした。被害にあった顧客は全世界に広がっているもようだ。

HSBCはこれまでに該当の口座所有者と連絡を取り、謝罪をしたという。この事件については、連邦金融監督局 ( Finma ) も捜査を開始している。
 

セキュリティ対策を大幅強化

 HSBCのこれまでの発表によると、システム開発を行っていた元IT行員のファルチアーニ容疑者は、2006年10月以前にスイスのHSBCに口座を持っていた顧客およそ1万5000人の情報を約3年前に盗んでいた。そのほか、これまでに解約された約9000の口座も被害にあっている。
 
 HSBCの広報担当ジェズ・ファル氏によると、被害は世界各国の顧客に及んでいる。しかし、盗まれた顧客情報はスイスの口座に限られており、元「HSBCゴヤーツェラー銀行(HSBC Guyerzeller Bank)」の口座は関係していない。また、スイス以外の支店やHSBCグループのほかの企業の情報も漏れていないという。

 スイスHSBCプライベート銀行のアレクサンドレ・ツェラー頭取はプレスリリースで
「このような状況になったことを心から遺憾に思い、個人的な領域が犯される恐れを招いたことに対して正式にお詫びする」
 と述べた。

 同行は、顧客の利益を断固として守り、そのために必要なすべての対策を取る意向だ。スイスに口座を持っている顧客全員とすでに連絡を取り、セキュリティ対策も大幅に強化された。

各方面で捜査

 一方、連邦金融監督局も、捜査を行うため正式の行政手続きを開始した。捜査の対象となっているのは大規模の情報盗難が発生した経過、および事件後、同様の情報漏えいを防ぐためにHSBCが取った組織面、技術面における予防対策が法律的に十分であるかどうかの確認だ。金融監督局は事件が明るみに出て以来、HSBCおよび連邦当局と密接な連絡を取り続けている。

 連邦検察は2008年からファルチアーニ容疑者に対し、経済諜報活動、情報の不法入手、および業務上の秘密保持違反の疑いで捜査を行っている。2008年12月22日に行われた家宅捜査の後、ファルチアーニ氏はフランスへ逃亡、フランス税当局と接触した。

 スイス連邦検察は2009年2月以降、HSBCの盗難顧客情報の引渡しを求めてフランス当局と交渉していたが進展がなく、同年11月、クリスマスまでに何らかの返答をするようエクサンプロヴァンスの控訴審裁判所に訴えた。それとともにハンス・ルドルフ・メルツ財務相は、フランスがスイスの捜査協力に応じなければ、フランスとの新しい租税条約の批准を中止するよう連邦議会に提議すると発表した。その後、フランスはこれに応じ、押収したメモ帳とハードディスクをスイスに引き渡した。

 3月3日、HSBCは盗難顧客情報の大部分のコピーを受け取った。プレスリリースによると、同銀行はスイス当局の協力を得て独自の捜査を行っている。スイス当局はHSBCに対し、これらの情報は外国からの問い合わせに利用されることはないことを保証した。

 また、フランスもスイスに対し、これらの情報を元にスイスに捜査協力を求めることはなく、第三国からの問い合わせに対してもスイスの了承を得ることなしに情報を公開することはないことを確約した。

swissinfo.ch、外電

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