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OLから国連職員へ

国連軍縮研究所(UNIDIR)があるジュネーブ欧州国連本部の前で swissinfo.ch

国連軍縮研究所(UNIDIR)で小型武器回収プロジェクトに携わる小山淑子(こやましゅくこ・30歳)さん。マリの砂漠を横断したり、クルジアで銃を突きつけられたり、危険に合いながらも世界を股にかけて紛争解決に奔走する。日本の書籍店でOLとして働いていた時、大学の恩師で政治学者の秋野豊先生がタジキスタンで国連視察中に銃で撃たれて死亡した。彼の急死が人生の分岐点となった。

 恩師の死を受け入れることが出来ずにお葬式にも出席できなかった。「君には特別なものがある」という恩師の言葉を思い出し、在学中、勉強していた政治学に戻る決心をした。修士号に英国、ブラッドフォード大学の平和学部で、紛争解決を専攻した。同級生には児童兵だった人、パレスチナ人など紛争地出身の人が多かった。「人って殺してもなかなか死なないものだよ」といった話を沢山聞いた。

 UNIDIRは「ユニークな職場」と笑う。担当の小型武器の回収プロジェクトの主な仕事は現地に行って回収業務を手助けすることだ。「国連トップレベルと草の根の“両極端の通訳”みたいな仕事です」と語る。1カ月のマリ滞在では砂漠を1000キロも走って運転手は疲労で倒れた。しかし、小柄な小山さんは相変わらず元気だった。博士号取得と職務を両立させる小山さんには「フリータイムはない」という。

 小型武器問題を選んだのは核問題などよりも自分で何か変えられるのではと思ったからだ。米同時多発テロ以来、かえってこの仕事に対する熱意が高まり、腰を据える覚悟をした。しかし、現在はテロ対策ばかりにお金と目が向けられている。「生物兵器など簡単に作れるのだから、もっと注目するべきだ」と懸念する。

 国連は予想以上に「政治の駆け引きの場」だったことに驚いている。日本の常任理事国入りについては「コミットする覚悟があるのか疑問」と手厳しい。「日本は軍縮でも、国益を計算したオリジナルなアイデアに欠けている」と指摘する。

 「家族を持つ前にまた、現場で仕事をしたい。家族を持ってから死ぬ確率が高い場所に行くのはイヤだから」。度胸は据わっているのだ。


swissinfo 聞き手 屋山明乃(ややまあけの)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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