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選挙前、連邦外国人対策委員会の懸念

政府は、外国人の語学修得の義務付けを望んでいる Keystone

「連邦外国人対策委員会 ( EKA/CFE ) 」は、10月21日の総選挙を前に選挙戦が激化する中、外国人を排除するようなキャンペーンの多発に懸念を深めている。

同委員会はまた、右派の国民党 ( SVP/UDC ) のクリストフ・ブロッハー司法相が強く支持する外国人のスイスへの同化に関する法にも懐疑的である。

 連邦外国人対策委員会会長のフランシス・マテ氏は「外国人問題に関し、現在起こっている外国人を排除するような空気をきちんと監視する必要がある。監視を怠るとスイスの国の尊厳を傷つけることにもなりかねない」と警鐘を鳴らしている。同委員会はスイス政府が8月に提示した外国人のスイスへの同化対策にも様々な問題点があると指摘している。

外国人の語学修得

 2006年に採択され2008年1月に発効される新しい外国人法には、外国人がスイスにうまく同化できるような諸対策が挙げられている。スイス政府は8月、すでに実行されている42項目に新たに3項目を付け加えている。

 その1つが、外国人の語学修得である。今までの条項では「宗教活動に関わる外国人の語学修得は必修」というものであったが、新しい条項は「欧州連合 ( EU ) 以外の外国人はスイスの国語を1つ修得すべき」というもの。

 これに対し連邦外国人対策委員会は、この条項は外国人差別を引き起こし、制裁のような形になる可能性を秘めていると警告する。語学修得は個人の必要性に根ざすべき性格のもので、一般化するようなものではないという。

 一方、他の外国人同化対策全般に関しても、外国人を受け入れる全体的なコンセプトの中で、しかもうまく受け入れようとする積極的な環境の中で行われるべきだと警告している。

2つのイニシアチブにも反対

 同委員会はさらに、全会一致で以下2つのイニシアチブにも反対を表明した。1つは全右派党支持による「ミナレットのスイス内での建設禁止」。ミナレットとはイスラム教で祈りの時を告げるモスクの尖塔のこと。

 もう1つは、「犯罪を犯した外国人の国外追放」のイニシアチブで、これは右派の国民党の支持によるもの。マテ氏によれば、「外国人嫌いを推し進める精神に根ざし、しかも総選挙戦を意識してのイニシアチブ」という。

 スイス国内に住む白い羊が黒い羊を足で蹴って国境線から追い出す、国民党 のポスターに関しても「スイスが外国に与えるべきイメージに矛盾する」と厳しく批判した。

swissinfo、外電 里信邦子 ( さとのぶ くにこ )

急進民主党は外国人同化問題に関し、外国人のスイス到着や出生と同時に彼らの同化を進めていくことが一番大切だという。

急進民主党党首、フルビオ・ペリ氏は、右派の国民党 ( SVP/UDC ) のクリストフ・ブロッハー司法相が8月に提示した外国人同化対策は、現実の問題解決にはならないと指摘する。

ペリ氏はまた、2006年に採択され2008年1月に発効される新しい外国人法は同化に関して幾つかの良策を含んでいるものの、将来的な問題に応えていないという。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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