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スイスの視点

全ての国でワクチン生産を

政治学者、ダニエル・ワーナー氏はスイス市民がコロナウイルスのブースター接種をするかどうか判断する際に、考慮すべきことがあるのではないかと疑問を投げかける。

このコンテンツは 2021/11/10 07:00

スイス医薬品承認機関「スイスメディック(Swissmedic)」はファイザー製とモデルナ製の新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンの3回目の接種を承認した。2度の接種を終えた65歳以上を対象者として、11月中旬から可能になる。

このブースター接種は、何カ月も前にワクチン接種した人の免疫は低下しているという研究結果に基づいて行われる。新型コロナウイルスで重症化するリスクは時間の経過と共に高くなり、高リスク者層では、明らかにさらにリスクが高くなる。

65歳以上やまだ新型コロナウイルスに感染していない人にとって、このスイスメディックの発表は朗報だ。2月にワクチン接種完了した、若くはない私の友人も、陽性判定を受けたばかりだ。ブ-スター接種で、彼のような年配者が重症化しないようになるとよいのだが。

ブースター接種は2回目の接種の6カ月後から可能と伝えられている。モデルナ製ワクチン接種者は半量、ファイザー製接種者は全量を接種される見通しだ。

ジレンマ

よいニュースばかりではない。スイスメディックの発表は真のジレンマを引き起こしている。

スイス市民はまず、ワクチンを接種するかどうかを選ばなければならなかった。全体で人口の63%が接種をするという選択をした。2度接種した人は、今度はブースター接種をするかどうかの選択をしなければならない。この2度目の選択は1度目の選択よりも判断が難しい。

スイス国内にはワクチンが十分供給されている。接種しないという選択をした人は、個人の判断でそう決断したのだ。供給は十分あったが、需要がなかったのだ。

しかし、どのワクチンもほとんど行き渡っていない国に住んでいる人はどうだろうか?需要はあるが供給されていない世界の状況はどうだろうか?

9月半ばに世界保健機関(WHO)の事務局長は、世界中で57億本以上のCOVID-19ワクチンが投与されているが、そのうちたった2%しかアフリカに渡らなかった、と発表した。「それはアフリカ各国がCOVID-19ワクチン接種を運用する能力や経験がないからではない。彼らが世界から取り残されたからだ」と彼は述べた。インドの人口のたった31%しか2度の接種を終えていない。スイスの半分にすぎない。

新しいジレンマとは、まだ非欧米諸国の人がワクチンの配給を待っているのに、ブースター接種を希望する欧米人に接種を可能にすべきかどうかということだ。まだ世界の人口の大部分がが「取り残されて」いるのに、3度目のワクチンの恩恵を受けても良いのだろうか?

需要と供給

パンデミック(世界的大流行)が起こったとき、世界中にワクチンを公平に分配することへの配慮がなされた。国際的な枠組みCOVAX(コバックス、COVID-19 Vaccines Global Access)はまさにこの目的ために設立された。しかし、国家主義者の圧力により、各国は自国民のことしか考えなくなった。ワクチンは国際的に公平に配布されなかった。ワクチンの効果が長く続かないことが明らかになった今、アフリカやインドはさらに取り残されたまま、欧米での供給ばかりを増やすように求める声が大きくなるだろう。

古典派経済学では供給と需要の関係がはっきりと書かれている。ワクチンの供給量が限られているのなら、資源も分配能力も限られている国に配布する前に、富裕国のブースター接種のために使われるべきなのだろうか?私の考えでは、その答えは、供給量を増やすことだ。どうやって?ワクチンの供給を欧米各国に頼るのではなく、すべての国で技術的、能力的にワクチンを製造することが可能になるように努力することが必要だ。製薬会社は必要な情報を提供することに後ろ向きかもしれないが、地域の保健インフラの向上支援は開発の優先事項であるべきだ。現在または将来のパンデミックとの戦いにおいても、これは優先されるべきことだし、優先されなければならない。公平なグローバルヘルスはすべての人の利益になる。

取り残された国のことを忘れてはならない。スイスメディックによって3度目の接種が推奨された今、完全接種完了者はブースター接種をするかどうかの選択をすることになる。選択に当たり、まだまったくワクチン接種をしていない人々への配慮が判断に影響するだろうか?ワクチンの効果を信頼している人にとって、これは新たな選択肢だ。世界中の多くの人が全く手に入れることができていないのに、私たちが3本目を手に入れることができるというのは、どこか不公平だ。

ブースター接種を否定して、私たちが使わなかったワクチンをアフリカやインドに回すべきだと言うことはできない。それは無理だ。しかし、保健インフラに焦点を当てた開発援助を行い、「私たち」と「彼ら」の間のジレンマを解消すべきだ、と主張することはできる。世界の富がもっと公平でなければならないのと同様、グローバルヘルスももっと公平であるべきだ。

この記事で述べられている内容は著者の意見であり、必ずしもswissinfo.chの見解を反映しているわけではありません。

(英語からの翻訳・谷川絵理花)

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