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国民投票 銃器規制イニシアチブ否決



スイスの民兵は、兵役を終え普通の生活に戻っても兵役義務終了の年齢までは射撃の練習を行わなくてはならない

スイスの民兵は、兵役を終え普通の生活に戻っても兵役義務終了の年齢までは射撃の練習を行わなくてはならない

(Keystone)

2月13日に行われた国民投票で、銃器の入手と保管規制を求めるイニシアチブ「銃器による事故防止のために」は否決され、スイス国民は家庭に銃器を保管する伝統を選択した。

イニシアチブ承認には投票者と州の両方で過半数の賛成を得る必要があるが、投票者56.3%の反対と26 州中20州の反対で否決された。チューリヒ、ジュネーブ、バーゼル・シュタット、ヴォー州など大都市を含む6州が賛成し、反対した農村部の多い州との対比が際立った。なお投票率は49%だった。

銃器による自殺者

 スイスは国民皆兵制。男子は20歳の年に約4カ月間の兵役を果たした後42~50歳までの間にほぼ毎年数週間の訓練があり、計260日間の兵役訓練を受ける。その間、銃器は自宅に保管され兵役終了後も保持できる。これは非常時にすぐ出動できるという、いわばスイスの中立を守る伝統から来ている。

 だが、そのため、狩猟や射撃、銃コレクターのものなどを含むと、銃器は国内におよそ340万丁あると推定され、人口760万人に照らした場合約3分の1の家庭に銃器があり、2000年の調査によると全世帯の35.7%が所持している。

 その数の割りには事故が少ないと言われてきたが、自殺者の多いこの国では近年銃器による自殺のほぼすべてが男性で、1996年から2005年の10年間で3410件の銃器での自殺が発生。自殺全体の28%を占める。国別にみても、スイスのこの数字はアメリカの約57%に続き世界で2番目。ドイツの8%よりはるかに多い。

 こうした中、多くの調査が、「家庭に銃器がありすぐに手を出せる環境と、銃器での自殺の多さには関連性がある」と結論しており、今回スイスの開業医からなるスイス医師会 ( FMH ) も、うつ病にかかった若い男性の自殺を防ぐため、イニシアチブの一項目「軍から支給された銃器を銃器庫で保管」に強い賛成を表明してきた。

 結局、約80のNGOと中道左派の社会民主党 ( SP/PS ) などが支持する今回のイニシアチブは、上記の「銃器を銃器庫で保管すること」以外に、現在州が管理する銃器所持登録を「国レベルで登録・管理すること」、また銃器の入手や所持を規制するため、「銃器所持の必要性と管理能力を証明すること」、最後に「自動小銃とポンプ連射式散弾銃の一般市民の購入禁止」の4項目を憲法に盛り込むことを謳 (  うた  ) った。

政府の立場

 イニシアチブの背景には、以上のような若い男性の自殺防止以外に、近年、離婚問題などで夫が妻を銃殺する事件もある。ときには子どもを道連れにするケースも起きており、家庭内での銃器の存在は女性にとって一つの脅威になっている。実際1月中旬に行われたスイス国営放送 ( SRG/SSR ) の調査では、女性は52%の支持率でイニシアチブに賛成し、「冷戦が終わった今日、銃器を家庭に保管する伝統は必要ではない」と表明していた。

 これに対し、政府と議会はイニシアチブに反対。理由は、銃器による事故の増加を憂慮はするものの、すでに多くの法律の改正を行い対策は現在のもので十分というものだった。

 州が管理する銃器所持登録もこれで十分であり、国レベルでの登録・管理の必要はなく、またこうした国の管理には経費がかかる。また軍の銃器を銃器庫に保管するという提案も、銃弾は現在すでに訓練のときにしか民兵に渡されていない。それで十分な上、銃器も任意で州の兵器庫に預けることができると主張。

 さらに、「銃器所持の必要性と管理能力を証明すること」も、銃器による事故は所持者の個人的責任感に負うところが大で、自己の管理能力や必要性の証明が防止には繋がらないという考えを強調していた。

  しかし、兵役期間を終えた1人の青年が銃弾を盗んで所持し、バス停にいた少女を銃殺した事故がチューリヒで起き、現在の管理も十分ではない上、1969年~2009年の間に4674丁の銃が行方不明になったと連邦国防省 (VBS/DDPS ) が今年初めに発表したばかりだった。

結果への反応

 結局女性の有権者や平和団体、医師会を動かし、また「現代の状況をかんがみた国民の安全」を旗印に、大論争を巻き起こしたイニシアチブだったが、「伝統」や「スイスが大切にする価値」が勝利したことになる。

 こうした結果に対し前出のスイス医師会会長、ジャック・ドゥ・アレー氏は

 「自殺の予防のために大きな一歩が踏み出せたはずなのに非常に残念。しかし人の考えを変えるには時間がかる。少なくともこのイニシアチブを契機に議論に火がついたと考えたい」

 と語った。

 また、社会民主党の党首クリスティアン・ルヴァン氏は、イニシアチブの否決に落胆したものの

「イニシアチブ形成の過程で、影響を受けた政府は銃弾を訓練のときにしか渡さないなどの改正を行った。それだけでも効果があった」

 と話した。

 アムネスティ・インターナショナルは、

「スイスは銃器を国が登録・管理することで国際的に一歩先を行くチャンスを逃した」

 とコメントした。

 一方右派国民党 (  SVP/UDC  ) の議員で「反イニシアチブ委員会」の会長でもあるヤコブ・ビュッヒャー氏は、

 「スイス国民は銃器を身近に所持すべきだ。今回のはっきりした否決は、スイスにはスイス軍の在り方についての伝統が存在しているということだ」

 と満足の意を表明した。

イニシアチブ

憲法の条項の一部の改正を求めて行われる国民発議。

10万人分の署名を18カ月以内に集め、国民投票にかけられる。

承認には投票者と州の両方で過半数の賛成を得る必要がある。

従来イニシアチブが承認されることは極めて珍しく、1891年から2007年にかけてはわずか15件だった。

ところが、2008年11月の「子どもに対する性犯罪の公訴の時効無期限に関するイニシアチブ」、2009年11月の国民党のイニシアチブ「イスラム寺院の尖塔ミナレットの建設禁止」、次いで2010年11月の同じく国民党のイニシアチブ「外国人犯罪者の国外追放強化」など、予想に反して承認されるイニシアチブが増加している。

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投票結果

賛成はチューリヒ、ジュネーブ、バーゼル・シュタット、ヴォー、ジュラ、ヌーシャテルの6州で大都市を含む州が中心。

反対はアッペンツェル・インナーローデン州の反対72.3%を筆頭に、オプヴァルデン州の71.9%、シュヴィーツ州の70.9%など、スイス中部および東部の20州。

都市部と農村部の多い州の対比が際立った。

投票者の反対は56.3%

全体の投票率は49%。

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