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国民投票 兵役義務に圧倒的支持

スイスの男性は兵役に就く。これは当然のこととして深く定着している

スイスの男性は兵役に就く。これは当然のこととして深く定着している

(Keystone)

9月22日の国民投票で、スイス国民は73%を超える予想外の圧倒的多数で兵役義務の廃止を否決した。ガソリンスタンドの売店の自由化と新感染症法は可決へ。ティチーノ州では、ブルカの着用禁止を求めるイニシアチブが多数の支持を得た。

 この結果は、投票前のアンケート調査結果とほぼ等しい。約3週間前に行われた全国調査では、回答者の63%が兵役義務の廃止に反対。軍隊なきスイスを目指す会(GSoA)によるイニシアチブに賛成した人はわずか31%に過ぎなかった。

 この調査はスイス公共放送協会(SRG SSR  )の委託で世論調査機関ジーエフエス・ベルン(gfs.bern)が実施した。それによると、何よりも年金生活者世代が同イニシアチブに断固として反対。兵役義務を負う今の若い世代はわずかに賛成へ傾いていた。

 投票では州の賛成は全く得られず、すべての州が反対するという結果になった。

深く根ざした徴兵制

 イニシアチブ反対派はこの圧倒的な結果に喜々としている。反対委員会の会長を務めたキリスト教民主党のヤコプ・ビュヒラー下院議員は国営テレビ・ドイツ語放送局SRFに対し、「一般男子から成る軍隊は国民の中に深く根ざしている」と述べた。

 「反対派の啓蒙活動が功を奏した。国民は軍隊を信頼している。この投票で国民が現在の防衛モデルを支持していることが明らかになった。保安は大きな財産だ。反対委員会は、ここで賛成すればなし崩しに軍隊の廃止にまで至るということを明示できた」

 一方、イニシアチブ側のGSoAは落胆を隠せない。広報担当のニコライ・プラヴドジッチ氏は「意外ではない。この結果は残念ながら予想できていた」と語る。

 「スイスにとって兵役存続は当然のことのようだ。反対側にいる人々を動かすことができなかった。問題は左派を納得させられなかったことだ。この法案は間違っており、議論すべきなのは兵役義務の廃止ではなく軍の廃止だと言う人もいた」

 プラヴドジッチ氏は、軍隊を民主的に管理できなくなると不安に思った人が多かったのではと推測する。「次の機会にはこのような人々を考慮に入れなくては」と前向きだ。

ソーセージも同等に扱って

 新感染症法とガソリンスタンドの売店の夜間営業に関しては、国民の賛成を得ることができた。ガソリンスタンドで焦点になっていたのは、24時間営業の売店で夜間に販売してよい商品だ。スイスには約1330軒のガソリンスタンドがあるが、問題になっているのはそのうち24軒。そのほとんどはチューリヒ州にある。

 これらのガソリンスタンドでは夜中の1時から早朝5時までの間、販売してはならない商品が決められている。そのため、この時間帯には商品棚や冷蔵棚の一部が覆い隠される。販売できるのは、そのまま飲食できるもの。つまりチョコレートやたばこ類は許されるが、ソーセージや野菜の缶詰などは販売できない。

 基本的に店舗の営業時間は州が決める。だが、労働組合、左派、教会関係団体は、当該ガソリンスタンドの自由化が「ダム崩壊」につながり、夜間労働や日曜日の休息に関する原則が侵されると恐れる。

 労働組合トラバーユ・スイスは声明の中で次のように述べている。「国民投票の結果は、店舗の営業時間や労働時間の自由化のさらなる推進を認めているわけでは決してない。これは厳しい訓戒なのだ。反対票も多かった。つまり有権者は、あくまでも条件付きで営業時間や労働時間の自由化を認めたのだ」。賛成は56%。

新しいウイルスに対する予防接種

 特定の状況下で当局に予防接種義務を発布する権利を認める感染症法の改正も可決された。賛成は60%。

 賛成派はこの結果に胸をなでおろした。「これで状況は21世紀に適応し、1970年代の道具箱を片付けることができる」と言うのは投票委員会のウルズラ・ツィバッハ委員長だ。

 そして、この勝利を当局や政治家に対する信頼だと評価する。「上院も下院もこの法律をほぼ満場一致で認可した」。改正後、予防接種を強要されるのではという懸念に対しては「今後も、予防接種は個人の自由に任される」と強調した。

ブルカの禁止

 ティチーノは、公共の場でブルカやニカブの着用を禁止するスイス初の州となった。イニシアチブ賛成は65.4%、州の対案にも59.83%が賛成した。しかし、州憲法の改正には連邦議会の承認も必要とし、実施に至るか否かは定かではない。

 イニシアチブを提起したジョルジオ・ギリンゲリ氏は喜色満面だ。スイスインフォに対し、自宅の庭で「歴史を書き加えた」と話す。ロシアからもテレビの取材チームが訪れたそうだ。

 ギリンゲリ氏はこのイニシアチブで「戦闘的なイスラム主義」に逆らう信号を送りたかったのだと言う。また、ティチーノでの投票が他の州への働きかけになればと願っている。

 元検札官で現在弁護士のパオロ・ベルナスコーニ氏は、苦々しい思いだ。このイニシアチブは欧州人権条約に抵触するとみている。また、ティチーノ州のイメージも悪くなると懸念する。「こんな禁止は、まったくのお笑い種だ」

 しかし、この結果は驚くものではない。「ティチーノ州はどんどん右に流されている。真の反対派もいない」。ベルナスコーニ氏自身はイニシアチブにも対案にも反対だ。だが「この二つに反対する委員会すら作られなかった」。これから、連邦議会が州憲法改正を却下するようロビー活動を始めるという。


(独語からの翻訳 小山千早), swissinfo.ch、外電


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