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激化するスイスの選挙運動

国民党、過激なキャンペーンで支持率を上げることができるか Keystone

今年はスイスも総選挙の年。夏休みシーズンが終わり、10月21日の総選挙に向け各党の選挙運動が激しくなってきた。

特に右派の国民党 ( SVP/UDC ) は、敵対する党がクリストフ・ブロハー司法相 ( 国民党出身 ) を解任しようとする動きがあると新聞紙上で指摘。合議制を尊重するスイス政治に一石を投じる選挙運動を展開している。

 ジュラ地方のレコンビリエール ( Reconvilier ) 市では8月27日、クリストフ・ブロッハー司法相の訪問に際し、グローバル化に反対する市民100人のデモがあった。警察の厳しい監視がなければ、デモは暴動化していた可能性もあると報道された。

戦うことが党の資質

 レコンビリエール市の例のほか、国民党の政策に不信感を示すデモがバーゼル州のリースータル市やベルン市、チューリヒ州のヴィンタートゥール市などであった。一方、こうした反国民党デモにブロッハー司法相は余裕綽々 ( しゃくしゃく) といった態度で、「国民党は左派各党へ戦いを挑むつもりでいる。熱い鉄を素手でつかむことも厭 ( いと ) わない。敵対する党と、堂々と戦う土俵に立つことが国民党の資質だ」と意気揚々だ。
 
 しかしブロッハー司法相の発言は、国民党の新聞紙上でのキャンペーンとは意を異にするようだ。国民党の広告では「ブロッハー退陣秘密作戦」という題で、ほかの連立政党の一部が国民党出身の大臣を追放しようとしていると断言している。

 国民党の広告にスイスのマスコミは冷ややかだ。「噂だけを基にした主張。特に新しい主張でもない」とベルンの日刊紙ベルナー・ブント。チューリヒの日刊紙ターゲスアンツァイガーも「選挙のキャンペーンがうまく行かないためか、選挙運動を激化するのが狙いだろう」と書いた。

 緑の党は「プロパガンダに過ぎない。秘密作戦ではなく、緑の党は公にブロッハー司法相の不信任投票を他の党にも呼びかけている」とさらに挑発的だ。

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連立政権より勝利

 確かに統計によると国民党の議席は今回の選挙で伸びないと予想されている。そのためか、国民党の今回の選挙にかける思いは必死のようで、キャンペーンはさらに過激になっているといえよう。同党のウェブサイトでは、外国人青少年の暴力問題を取り上げ、暴力シーンを映し出すビデオが公開された。しかし、ビデオに登場した青年から撮影の目的を説明されていなかったとの訴えがあり、裁判所の緊急放映停止命令を受けた。

 10月21日の総選挙は、国民党出身のシュミット国防相とクリストフ・ブロッハー司法相の信任選挙でもあると国民党は強調する。スイスでは長年、国民党のほか、社会民主党 ( SP/PS ) 、急進民主党 (FDP/PRD) 、キリスト教民主党 ( CVP/PDC ) の4党連立政権が敷かれているが、国民党内では、同党出身の2人の大臣が不信任となれば、連立政権から離脱することが、全党代表者会議で承認された。

 ブロッハー司法相が不信任となれば、「閣僚メンバーの選出選挙は非常に難航するだろう」と政治専門家のクロード・ロンシャン氏は予想する。4年前、キリスト教民主党のポストを奪い、閣僚ポストを2つに増やした国民党だが、当時もブロッハー議員が入閣しなければ連立政権に組しないとその覚悟を示した。こうした国民党の選挙戦略が、今年の選挙にも有効に働くのか。この秋、スイスの政治は熱い。

swissinfo、外電 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

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直近の選挙予想 カッコは前回 ( 2003年 ) の選挙結果
国民党 26.2% ( 26.7% )
社会民主党 21.6% ( 23.3% )
急進民主党 16.2% ( 17.3% )
キリスト教民主党 14.6% ( 14.4% )
緑の党 10.3% ( 7.4% )

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