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人権擁護に新法を

コンゴ共和国の金鉱で働く男性。鉱物資源は豊かでも人々の生活は貧しい。コンゴの資源は西側諸国が使う携帯電話など電子機器の製造用に搾取されている Reuters

「国境なき権利(Recht ohne Grenzen)」と題したキャンペーンが始まった。スイスに拠点を持つ国際企業に対し、子会社による人権侵害と環境汚染の責任を取るよう求めるものだ。

各企業の自由意思に任せておいては効果が出にくいとの判断で開始された。

 国際的に業務を展開しているスイスの企業の子会社が、人権を侵害したり環境を破壊したりした場合、法的にはスイスにある本社がその責任を負うことはない。社会的な圧力により社内規定を定めている企業も多いが、「それだけでは全く不十分だ」と人権擁護団体のNGOアムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)のダニエレ・ゴステリ・ハウザー氏は11月3日に発表した声明の中で批判する。

 アムネスティ・インターナショナルはこのキャンペーンの中心となっており、法的拘束力のある枠組みの必要性を訴える。現在、スイス政府と連邦議会に法律改正を求める請願を提出するために署名運動が行われている。請願書提出は2012年6月の予定だ。

スイスで訴訟

 具体的には、スイスの民法を現状に合わせて改正することが目的。違反行為があった場合、現在はその行為が行われた国の法律しか適用することができない。請願側はこれに対し、スイスでも親会社に対して訴訟を起こせるようにしたいと考えている。

 「国家権力が脆弱な国や紛争地域、あるいは権威主義の非民主的な体制が敷かれている国では、中立的な司法による裁判が保障されていない。現地の被害者は身動きが取れないことが多い」と声明文は説明する。

 また、明らかな違反行為があっても、地元の裁判所は訴えを避ける傾向にあるという。

産業界は反対

 一方、経済連合エコノミースイス(Economiesuisse)はこの要求に理解を示さない様子で、スイス国営テレビドイツ語放送局(SF)に対し、次のようにコメントした。

 「このようなキャンペーンはスイスでだけでなく、国際的なレベルで行われるべきだ。スイスの企業は今日すでに建設的に寄与している。だが、外国での出来事にスイスの裁判が干渉することは拒否する。スイスも逆の立場になった場合、そのようなことは受け入れないはずだ」

 「国境なき権利」キャンペーンには、南同盟(Alliance Sud)やアムネスティ・インターナショナル、環境保護団体のグリーンピース(Greenpeace)など、スイスの50以上の組織が参加している。

(ドイツ語からの翻訳・編集 小山千早)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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