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ザンクトガレン、ランジェリーに魅せられて 

「シークレット展」で明かされる女性の下着

かつて全盛を誇ったコルセットのきつい締め付けに、女性たちの息が文字通り奪われた。それから1世紀以上を経た今、コルセットのえも言われぬ美しさに、再び女性たちは息を奪われる。

ザンクトガレン・テキスタイル・ミュージアムは、現在開催中の展示会「シークレット展」で女性の下着の歴史と意義を探る。

 「シークレット – ランジェリーの魅力展」はパリ出身のデザイナー、シャンタル・トーマス氏とベルギー出身の美術デザイナー、ボブ・ヴェルヘルスト氏による創造性豊かな展示会だ。5月8日の公開日当日、トーマス氏は客員学芸員としてザンクトガレンで展示の最終確認をおこなった。

ランジェリーの歴史

 「とても楽しかったですが、大変な作業でした!」
 と、トーマス氏は言う。彼女は独自のブランドのほか、「ウォルフォード ( Wolford ) 」、「ケンゾー ( Kenzo ) 」、「ヴィクトリアズ・シークレット ( Victoria’s Secret ) 」のランジェリーのデザインも手掛けている。

 ミュージアムの3階分が使われ、1890年から現在に至るランジェリーの歴史が展示されている。飾り気のない実用的なガードルと並んで展示ケースを優雅に飾るのは、刺しゅうの施されたコルセット、繊細なスリップ、シルクのシュミーズ、フリルのついたブルマーだ。

 今回の展示の主役は、あらゆるサイズと形のブラジャーとビスチェだ。そのうちの数点は使い古され、かつての持ち主のお気に入りだったことが1目でわかる。一方で、まだ店頭にも出ていない最新のランジェリーも置かれている。

「淑女のプライベートルーム」と「ブティック」

 「淑女のプライベートルーム」と「ブティック」が融合したような展示会場は、美しい出来栄えだ。古い写真からは昔の「セクシー」の基準を伺い知ることができ、巧妙な「鍵穴」が来場者を「のぞき魔」に変えてしまう。ファッションショーや製造技術の映像は興味深く、ためになる。

 ポピュラー音楽の流れる部屋では、ランジェリー風のオート・クチュールを身にまとったマネキン人形がステージを歩いている。このミニファッションショーでは、スイスのブランド「アクリス ( Akris ) 」のほか、「ジョン・ガリアーノ ( John Galliano ) 」、「クリスチャン・ラクロア ( Christian Lacroix ) 」、「ヴィヴィアン・ウェストウッド ( Vivienne Westwood ) 」などの有名ブランドが特集されている。

 ザンクトガレンは実に国際的な展示に適している。何世紀にもわたり、繊細な布地とともに女性の体を礼賛してきた。
「ザンクトガレンには何度も来ています」
 と、国際的に定評のある最高級のザンクトガレンのレースや刺繍について触れ、トーマス氏は言う。

 「シークレット展」では、レースと刺しゅうで覆われた幅17メートルの壁に、ザンクトガレンの色鮮やかな仕事ぶりを見ることができる。実際、スイス東部にあるほとんどの繊維会社の主要事業は下着部門だと、展示会プロジェクト・マネージャーのトビアス・フォルスター氏は言う。

 「ファッション面ばかりでなく、技術的な面からも、下着部門は圧倒的に需要があります」
 と、刺しゅうメーカー「フォルスター・ローナー ( Forster Rohner ) 」のアートディレクターを退職したばかりのフォルスター氏は説明する。

「衣服の中でも最も細かく最もバリエーションに富む刺しゅうやレースは、着心地の良さと機能性を兼ね備え、かつ、できる限り丈夫で、洗えなくてはいけません。これは大変な挑戦です」

官能的なスイス

一部の人たちにとって、今回の展示会は、普段隠されている物に関心を払う以上のことを意味している。スイスの産業の隠れた一面が明らかにされているからだ。

 「言うまでもなく、『官能性』はスイスという国からすぐに連想される特色とはいえません」
 と、スイス繊維連盟会長マックス・R・フンガービューラー氏は言う。
「しかし、このシークレット展では、一般のイメージとは対照的に、官能的な喜びという点に関してスイスの提供する部分が非常に大きいことが分かります」

 毎年、繊維連盟では「スイス・テキスタイル・アワード」を有望な若手デザイナーに贈っている。

 次の仕事先に急ぐ前に、トーマス氏はフランスのランジェリーを宣伝した古いテレビコマーシャルを見て笑った。1人のビジネスウーマンが、実物の下着を見ることのできない視聴者に向かって、彼女が身に着けている下着を詳しく描写しているのだ。「シークレット展」では、トーマス氏たちのおかげで、糸の1本1本まで見ることができる。

swissinfo、スーザン・フォーゲル・ミシカ サンクトガレンにて 中村友紀 ( なかむら ゆき ) 訳

「シークレット – ランジェリーの魅力展」はザンクトガレン・テキスタイル・ミュージアムにて2008年12月30日まで開催中。
開館時間:10:00~17:00 ( ガイド付きツアーのスケジュールはサイトで要確認 )
6月のサッカー欧州選手権EURO2008の開催期間中は、サッカーにパートナーを奪われてしまった女性たちのために、男性下着のファッションショーを予定している。
スイス映画「マルタのやさしい刺繍」 ( 原題: “Die Herbstzeitlosen” )は下着を題材にしたユーモラスな映画だ。ご近所に衝撃を与えながら、80歳の未亡人がランジェリー・ショップを開くというストーリー。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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