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県営名古屋空港で待機中のスイスの電動飛行機ソーラー・インパルス2が、24日朝2時30分にハワイに向け飛び立つ予定だとスイスの運営団体が発表した。
12年の歳月をかけ実験に実験を重ねた末に誕生したこの飛行機は、「クリーンテクノロジーで持続可能な地球を」のメッセージを掲げて今年3月9日、世界一周の旅に挑戦するためアブダビ空港を出発した。しかし、天候が最大の障害になり、各所で何日も待機状態が続いた。
南京からハワイへの飛行では、操縦士のアンドレ・ボルシュベルクさんは飛行中にモナコの司令室から次のようなメッセージを受け取った。「悪いニュースだ。このまま飛行を続けると、5日目に厚い雲に覆われる。日本に着陸するほうが良い」
そして名古屋に6月1日に着陸したものの、またいつ飛び立てるのかわからない状態が続いた。さらに先週、スイステレビのインタビューに応えてボルシュベルクさんは、「世界一周の飛行は日本で中断し、来年の春まで待つ可能性が高い」とまで述べていた。
最も難しい120時間の飛行
そのボルシュベルクさんが23日朝、次のようなコメントを発表している。「ハワイまで、5~6日かかる。われわれは、高い技術で製作され、高性能の機器を完備する飛行機を持ちながら、一方で非常にゆっくりと時間のかかる飛行をしなければならない。しかも、天候に左右される飛行だ」
「しかし、こうしたすべての点を考慮しても、われわれがこの冒険を中断しないことだけは確かだ。完全なる失敗とは、あきらめることだからだ」
一度日本を出発するとハワイまで4日と23時間30分間、つまり約120時間、太陽エネルギーだけに頼っての飛行が待っている。しかもその間、わずか20分間の休憩・仮眠しか許されない。
この最も難しい飛行に挑戦するボルシュベルクさんの勇気に声援を送りながら、その成功と無事を心から祈る。
しかし…結局断念
だが、この記事が配信されてから4時間半後(日本時間の24日午前4時)、ソーラーインパルスチームは離陸を断念すると発表した。理由は、予定の航空路に雲がかかり、その雲が日本側に向かって急速に広がってきているからだという。
この事実は、出発の午前2時半直前になって判明。その後1時間半議論が続いたが、結局離陸をあきらめた。重い空気が垂れ込むモナコの司令室で、もう一人の操縦士ベルトラン・ピカールさんは、こう語った。「太平洋の天候は非常に変わりやすい。気象の専門家が出発直前になって雲が多いと言ってきた。今後は、出発の決定プロセスそのものを見直す必要がある。そうしなければ、また同じことが起こる」
名古屋の空港で準備万端だったボルシュベルクさんは、コックピットからゆっくりと出てきて、「この落胆を消化するには時間がかかる。しかしモナコの判断を信じている。仕方がない。また、こうした落胆も、われわれが挑む冒険の一部だ」と話した。
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電動飛行機ソーラー・インパルス2が、名古屋に着陸してはや10日。高い関心を呼び、多くの人々が県営名古屋空港を訪れた。ソーラー・インパルスチームの1人、エルケ・ノイマンさんに、名古屋での様子を聞いた。
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世界一周のチャレンジを続けるソーラー・インパルス2。この太陽エネルギーだけで飛ぶ電動飛行機が今日日本時間午後10時、名古屋の小牧空港に着陸する予定だ。中国の南京を昨日5月31日午後2時45分に出発したが、悪天候のため当初のハワイまでの6昼夜ノンストップ飛行予定を変更し、日本への着陸を決行する。
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ソーラー・インパルス2 飛行中の食事や睡眠はどうする?
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太陽光だけで飛ぶスイス製電動飛行機「ソーラー・インパルス2」。現在はインド・アーメダバードで待機中だ。本来なら今日、次の目的地インド・バラナシへ飛び立つ予定だったが、濃い霧のため出発を延期した。先週9日アブダビ空港から始まった世界一周の旅はこのように天候次第。だが、踏破する総飛行距離は3万5千キロ。これを500時間かけて飛び8月、アブダビに再び戻ってくる予定だ。(SRF/swissinfo.ch)
この前人未到の挑戦は、12年かけた研究・開発で周到に準備された。その結果、2.3トンの機体に太陽電池パネル1万7千枚を載せた高性能の飛行機が誕生した。出発前のインタビューで、パイロットの1人、アンドレ・ボルシュベルクさんは「機能的に、機体はほぼ完ぺきな状態だ。これからはパイロットの体力的・精神的なチャレンジになる」と語っている。
中でも最大のチャレンジは、太平洋および大西洋の横断になる。120時間、つまり昼夜問わず5日間をノンストップで飛行しなければならない。その間、食事はどうするのか?そしてトイレは?操縦室は1人のパイロットしか入れない超小型。自動操縦に任せて仮眠を取りながら飛行するとはいえ、問題が起きれば直ちに手動に切り替える。それはいつ起こるかわからない。
ではどのように休息・仮眠を取るのか?スイステレビの記者が、操縦席に座るもう1人のパイロット、ベルトラン・ピカールさんにインタビューした。
なお、ソーラー・インパルス2はアブダビを3月9日に離陸した後、オマーンの首都マスカットでパイロットをボルシュベルクさんからピカールさんに替え10日の23時25分、インド・アーメダバードに着陸した。この1465キロメートルの飛行は、電動飛行機が飛んだ距離としては世界初で、国際航空連盟(FAI)に登録される予定だ。
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ソーラー・インパルス 最悪の事態に備えたパイロット訓練
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世界一周飛行に挑戦中の電動飛行機ソーラー・インパルス2。中国からハワイまでの区間を飛行中、太平洋上の気象条件が悪化したため、急きょ名古屋の県営名古屋空港(小牧空港)に着陸し、現在は日本で天候が回復するまで待機している。今後待ち受けるのは、最大の難所と言われる太平洋および大西洋の横断だ。そこで起こりうる最悪の事態を想定したパイロット訓練とは、一体どのようなものなのか。(SRF/swissinfo.ch)
ソーラー・インパルス・プロジェクトは、太陽エネルギーを主に再生可能エネルギーの普及促進をサポートするために立ち上げられた。中国の重慶市と南京市に途中着陸したのは、世界でも最も人口の多い中国で、太陽エネルギーのプロジェクトに対する意識を高める狙いがあったからだ。
この世界一周飛行は2015年3月9日、アブダビでスタートした。太陽エネルギーだけを動力とするこの飛行機は四つの大陸と二つの海を横断し、およそ500時間を掛け、3万5千キロの距離を飛行する。
その中でも極めて危険だといわれているのが、太平洋と大西洋の横断飛行だ。
そのためパイロットであるアンドレ・ボシュベルクさんとベルトラン・ピカールさんの二人は、太平洋上でコントロールを失うという最悪の事態を想定した訓練を出発前に行った。
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