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スイスから日本に届け、「未来の友達」!


里信邦子(さとのぶ くにこ)


中学生には、日本語の発音を多少ドイツ語風に変え、耳から入れて暗記してもらったという (swissinfo.ch)

中学生には、日本語の発音を多少ドイツ語風に変え、耳から入れて暗記してもらったという

(swissinfo.ch)

「いつかあなたと会いたい。その日が来るのを待ってるね」とスイスの中学生が東日本大震災で傷ついた子どもたちに向け、日本語で歌う。そんなビデオ「未来の友達」が11月29日にユーチューブに掲載された。今すでに1万人がクリック。さまざまな反応が日本から届く。

「大震災から9カ月が経過した。しかし、みんなのことを忘れていない。がんばってほしい」というメッセージをスイスから伝えたかったと制作者のパスカル・ケーザーさんは話す。

忘れない

 3月11日、ニュースやネット上で観た映像にショックを受けた。津波のイメージ、何もなくなった自宅跡を見つめる被災者の姿。それに原発事故が重なった。「ただその被害の規模の大きさに圧倒された。何かしなくてはと思った」

 個人的な感情も加わっている。「妻が日本人で地震の被災地神戸に1年住んだ経験もその衝撃を増幅させている」とケーザーさんは続ける。

 自分には、音楽という手段がある。チャリティコンサートを開くのもいいが、何か直接的な援助ができないか。ミュージシャンであると同時に中学の音楽の先生でもあるケーザーさんがそのとき思いついたのは、被災地の子どもの「心の支援」だった。「みんなのことは決して忘れない。いつか会おう」という気持ちを歌にし、自分の生徒たちに歌ってもらうこと、しかも日本語でと決めた。

 1曲目は3月13日の夜にできた。ベッドに入ると突然2日前の映像が鮮明に蘇ってきた。起きてギターを手に湧いてくるメロディーを録音した。こうして「未来の友達」の第1バーションが完成した。ただ、これはクラシック風のものだったという。

みんなの協力

 その後、「音楽はシンプルであればあるほど多くの人の心に響く」と考え、最終的にポップソング調に仕上げた。その曲に日本語の歌詞をつけてくれたのはバークリー音楽大学時代の友人Kay-Ta Matsuno(松野啓太)さんだった。ビデオは幼友達で映像ディレクターのアルフォンソ・ゴルディオさんが引き受けてくれた。

 「アルフォンソは日頃プロの俳優を使っているので、中学の生徒をどう撮るか苦労した。しかし、臨機応変に対応しアイデアもたくさん出してくれた。例えば最後のシーンは私の娘たちの笑顔で終わるが、これは彼の思いつき。被災地の子どもたちもいつか笑ってほしいという願いがこもっている」

 ベルン州オスタームンディゲン(Ostermundigen)市のデニコフェン(Dennikofen)中学の生徒たちは、ケーザーさんの企画を聞くと多数が協力を申し出てくれた。彼らもニュースなどで深く衝撃を受けていたからだ。ただ歌詞を覚えるのは大変な作業だった。結局、ソロは歌詞の覚えが早くかつ音楽性のある生徒だけを選ぶことになるが「コーラスの部分は25人も参加してくれた。みんな本当によくやってくれた」

 ロケは、経費をかけ遠方まで生徒を連れ出すわけにいかない。ところがたまたま学校のすぐ裏が砂岩の発掘場だった。積み重なる岩や転がる岩に東日本の被災地のイメージを重ねた。実は、校長先生までこのプロジェクトを応援し、他校にも宣伝したという。

多くの子どもに届いてほしい

 しかし、なぜ9カ月経過した今になって発表したのか?「本当はもっと早く出したかったが、パート1の撮影後、生徒が2カ月近い夏休みに入り、私もさまざまなプロジェクトに追われ今になった。しかし、結果として良かった。リビア、ユーロ問題などで人々はフクシマを忘れかけている。そんなときだからこそ、『忘れていないよ。頑張って』というメッセージを届けたい」

 今ケーザーさんが一番驚いているのは、10日前から次々に届く日本からの反応だ。「たまきはる福島基金」はホームページにこの「未来の友達」を載せた。関係者が「通勤中にi Phoneで聞いて涙が止まらなかった」ほどに感動したからだ。宮城県の県庁関係者からは、被災地のネット状況はまだ整っていないのでDVDにして持っていきたい、楽譜も送ってほしいという要望が来た。

 こうした反応から日本の大変な状況が分かってきて、「がんばってというメッセージを送った側が逆に、大変さを認識させられている。そして制作はまちがっていなかったと勇気づけられている」。作曲、撮影、編集と100時間を超える大変な作業だったからだ。

 今後は?「未来の友達」の歌詞に「いつかあなたと会いたい」とあるが、スイスに子どもたちを呼ぶといった企画もどこかで考えているのだろうか?

 「この歌で何が起こっていくのかまったく分からない。うちの中学と日本の中学の交流といったこともできるかもしれない。でも今は、とにかく被災地の子どもたちに、それもできるだけ多くの子どもたちに歌が届いてほしい。届いているという確信もほしい。それだけを考えている」

パスカル・ケーザー(Pascal Kaeser)さん略歴

1973年、ベルンに生まれる。

幼いときからクラシックギターを習う。次いでエレクトリックベースに移る。

1994年、1990年から再び始めたクラシックギターで「スイスの青少年クラシックギターアンサンブル賞」を受賞。

1995年「アップ・ウィズ・ピープル(Up With People)」に参加し、世界各地で9カ月間に100以上のコンサートを行った。

2000年、ボストンのバークリー音楽大学(Berklee College of Music)パフォーマンス学科を主席で卒業。この間神戸のマリスト・インターナショナルスクールで1年間音楽を教える。

2001年までボストンとニューヨークでフリーのミュージシャンとして働いた後、最終的にスイスに戻る。

現在、エレキベーシストとしてさまざまなコンサートやプロジェクトで演奏活動を続けると同時に、ベルン州の中学校教師として音楽を教えている。

swissinfo.ch



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