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スイスに暗号資産取引所が誕生

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暗号資産の取引所は、伝統的な証券取引所の強力なライバルになるかもしれない Keystone / Walter Bieri

スイスの仮想通貨銀行Sygnum(シグナム)は、ブロックチェーンを活用した暗号資産の取引所を開設した。中小企業の資金調達のハードルを下げ、ベンチャーキャピタルや不動産、美術品の取引も容易にする。

仮想通貨など暗号資産を取り扱う銀行シグナムは26日、資産のトークン化サービス「Dsygnate」と、トークン化された資産の取引所「SygnEx」の立ち上げを発表した。スイスの法定通貨フランを担保とする独自の仮想通貨DCHFを発行し、トークンの取引や現金化に使えるようにする。

トークンは、証券や不動産などの資産をブロックチェーン上で取引できるデジタル形態に変換したもの。トークン化によって取引が迅速化し、金融市場に参加しやすくする。トークン取引所は、従来の証券取引所の競合となりうる。

シグナムはこれまでにイタリアの資産運用会社アジムット・グループや、日本のSBIグループとの提携外部リンクを始めている。スイスのワイン投資機関「ファイン・ワインキャピタル」や不動産のインモ・ジンスともトークン化事業を計画している。スイスの電気自動車メーカーBAKモーターズ外部リンクも、シグナムの取引所で資金を調達する。

アジムットはブロックチェーンを活用し、中小企業の資金調達支援を目的とする。シグナムは、トークン化により「新興・中小企業が従来の資本市場で資金調達するときに直面する、コストの高さや広範にわたる上場要件、リソースを割かれるプロセスといった課題」を解決できると考える。

スイス証券取引所を運営するSIX グループが2019年にまとめた報告書外部リンクによると、従来型のプロセスでは企業が金融市場で1億フラン(約114億円)を調達するごとに金融仲介機関から最大50万フランの手数料がかかる。

スイス金融当局は9月、シグナムにブロックチェーン取引所の運営許可を与えた。SIXやブロックチェーン金融業のLykke外部リンクなど、他の金融機関も取引所の運営を申請中だ。

スイス連邦議会は9月、ブロックチェーンや新種のデジタル資産の活路を開くため、金融法や会社法などを改正した通称「ブロックチェーン法」を可決した。

世界中の主要証券取引所がブロックチェーンを取り込む方法を模索している。シンガポールのDBS銀行もデジタル資産の取引所新設を検討中外部リンクと報じられた。

スイスにはLykkeやMtPelerin外部リンクなど、資産のトークン化を手がける企業は既に多くある。不動産投資会社のBrickMark外部リンクは1月、チューリヒのバーンホフ通りにある建物をトークン化した。

だが規制との兼ね合いで技術革新の歩みは遅く、信頼できる取引所もなかった。シグナムのマティアス・インバッハ共同創業者は、「業界での議論の積み重ねを経て、トークン化事業の可能性を最大限活用するための要素がようやく揃った」とswissinfo.chに話した。「重要なのは、それを規制下にある銀行システムに組み込むことだ。それにより、トークン発行者と投資家が法律上も運用上も守られる」

(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)

(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)

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