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ブログ「もっと知りたい!スイス生活」


クールからアスコーナへ - モーファ愛好会のツーリング


スイスにはモーファ(Mofa)という小型原付二輪車カテゴリーがある。半バイク、半自転車のようで「少年が近所を走り回る乗り物」という印象が強い。このモーファで走り回ることを愛する大人たちがいる。彼らのツーリングを取材してきた。

つづら折りの峠道を走るモーファ (swissinfo.ch)

つづら折りの峠道を走るモーファ

(swissinfo.ch)

 モーファ(スイスドイツ語ではテッフリィTöffliとも言う)は、原動機付自転車(Motorfahrrad)の略称で、補助用小型ガソリンエンジンを取り付けた自転車だ。

 基本的には小型バイクのようにエンジンの力だけで走るが、その力はあまり強くないので、急勾配な坂では運転者がペダルを踏んでいるのをよく見かける。

 最高時速が30kmで小型であることから、14歳になると取得の許されるMカテゴリーの運転免許証で乗ることができる。たいていの若者は14歳でモーファに乗り始めるが、16歳になるとカテゴリーA1の免許を取得して、力がありもっとスピードも出せるスクーターに乗り換えるのが普通だ。

 だからモーファに乗っているのは15歳までの少年たちが多い。嬉しそうにモーファを乗り回す少年は、からかいと愛情を込めて「テッフリィ坊や(Töfflibuaba)」と呼ばれる事がある。

 大人になって普段は自家用車を利用するようになっても、このモーファに特別の愛着を持つ男たちがいる。彼らは年代物のモーファを購入して、修理をし、余暇には仲間と一緒にツーリングに出かけるのだ。

 モーファの愛好家はヨーロッパの各地にいて、大きな集会ともなると何百ものモーファが一同に集まる。

 私の住むグラウビュンデン州にもモーファの愛好会はいくつかあり、そのうちの一つである「ワーズー(Waazzoouu)」のメンバーたちの多くとは、個人的な面識がある。

 「ワーズー」は、イーヴォ・フライさんを中心に、モーファの好きな仲間たちが2014年に発足した会で、年に2回ほど誰でも参加可能なツーリングを企画している。今年の5月27日にもグラウビュンデン州都クール(Chur)からティチーノ州のアスコーナ(Ascona)まで140kmを往復する2泊3日のツーリングが行われた。

マッジョーレ湖に面したジュゼッペ・モッタ広場はいつも観光客で賑わっている (swissinfo.ch)

マッジョーレ湖に面したジュゼッペ・モッタ広場はいつも観光客で賑わっている

(swissinfo.ch)

 初日に日帰りをした人も含めると100人以上が参加した大掛かりなツーリングだった。残念ながら初日の金曜日は、私は仕事があって参加できなかったのだが、土曜日と日曜日に様子を見に行ってきた。

 普段は、車のキーをまわし、軽くアクセルを踏むだけで快適にどこまでも行けるところをわざわざ小さなエンジンしかないモーファに乗り、アルプス山脈を越える。モーファは高速道路やそれに準ずる自動車専用道路の走行は禁止されている。

 だから、6㎞のサン・ベルナルディーノトンネルを通ることはできず、つづら折りの細い道が続くサン・ベルナルディーノ峠を通らなくてはならない。

 車で高速道路を飛ばせば2時間かからない行程を、彼らは丸一日かけてのんびりと走った。朝の5時にクールを発ち、途中、ヌフェネン(Nufenen)、サン・ベルナルディーノ峠などの景勝地で休憩をした。

 ロヴェレド(Roveredo)のグロット(屋外レストラン)で昼食をとって親交を深め、ドライブを楽しんでからアスコーナに着いたのは夕方の6時だ。

穏やかな初夏のマッジョーレ湖 (swissinfo.ch)

穏やかな初夏のマッジョーレ湖

(swissinfo.ch)

 目的地のアスコーナは、ヤシやプラタナスの木が生え南国の雰囲気に満ちた風光明媚なマッジョーレ湖畔の街。ティチーノ州の人びとはイタリア語を話す。ドイツ語圏のクールから来ると全く違う国にいるように感じる。

 このツーリングが開催された時期は、スイス全体で雨天や季節外れの寒冷に悩まされていたのだが、5月28日土曜日は晴れ渡り、アスコーナに私が到着した時は28℃の初夏の陽気を楽しむことが出来た。観光客もたくさんいて、湖畔の散策やショッピング、それにカフェやジェラーテリアで初夏を楽しんでいた。

 「ワーズー」のツーリング参加者のうちアスコーナで2泊するプランを選んだ者は、土曜日はティチーノ産のワインを楽しんだり、遊覧船に乗ってイタリアヘ行ったりと、思い思いに過ごしていた。

 山岳地帯の天気は変わりやすく、常に快適なドライブが出来るとは限らない。今回のツーリングでも、往きの金曜日は好天に恵まれたが、帰りの日曜日にはほぼ全行程で雨だった。

 私は、車で取材に行ったのだが、一時期はフロントガラスの向こうが見えなくなるほど激しく降った。モーファを運転する参加者たちにはその雨は冷たくとても不快だった。

 それでも彼らは、モーファのツーリングが好きで止めることなど考えられないという。通ることのできる道も、スピードも、持っていける荷物も、快適さも限られている。

 だからこそ、「普段は目にしたことのない光景が見え、自然を感じ、苦労を共にした仲間たちとの絆が深まる。そのワクワク感がこたえられない」と参加者の1人ネグレッティさんは語る。

 普段の週末は家族サービスを欠かさないよき父親やよきパートナーばかりなのだが、このドライブはみな男性だけで参加している。女性の参加は禁止というわけではないのだが、どうも奥さん方は「いつ辿りつくかもわからないモーファでのツーリングなんて勘弁」と敬遠しているらしい。

昼食に立ち寄ったレストランで体を温める参加者たち。左手前がネグレッティさん、隣一人置いて奥が主催者のフライさん。みな濡れていても笑顔だ (swissinfo.ch)

昼食に立ち寄ったレストランで体を温める参加者たち。左手前がネグレッティさん、隣一人置いて奥が主催者のフライさん。みな濡れていても笑顔だ

(swissinfo.ch)

 それで彼らは安心して「テッフリィ坊や」の心に帰って羽を伸ばしている。

ソリーヴァ江口葵

プロフィール:ソリーヴァ江口葵

東京都出身。2001年よりグラウビュンデン州ドムレシュク谷のシルス村に在住。夫と二人暮らしで、職業はプログラマー。趣味は旅行と音楽鑑賞。自然が好きで、静かな田舎の村暮らしを楽しんでいます。



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