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アルテンライン空港の駐車場にある約20台の車は、木や枝の落下によって悪影響を受けた。
Keystone / Eddy Risch

スイスの保険会社は様々な種類の保険を提供し、ほぼ全ての状況をカバーしている。一部には加入義務があり、家計の大きな負担になることもある。

スイスの世帯は平均して収入の約1割を保険料に支出する。一部の保険には加入義務があるほか、状況に応じて強く推奨されるものもある。

基礎医療保険

スイスでは、全ての居住者に基礎医療保険への加入を法律で義務付けている。基礎医療保険は医師の診察や重病の治療、出産など、幅広い内容をカバーする。処方薬の大部分にも基礎医療保険が適用される。

スイスに移住してきた場合、居住開始から3カ月以内に基礎医療保険に加入しなければならない。複数の民間健康保険会社が様々な料金形態を提供しているが、どの保険会社も同様の補償をする義務がある。

毎月の保険料は、世帯の収入や経済状況にかかわらず均一。低額所得者には居住している州から補助金が支払われる。

健康保険会社が医療費の全額を負担するわけではなく、被保険者は年間の免責額を設定し、その金額に達するまでは治療費や薬代を自己負担する。免責額に達した後も、最高700フラン(約10万円)までは、治療費や薬代の1割(薬によっては2割)を被保険者が負担しなければならない。

成人の被保険者は年間最低300フランの医療費を自己負担する。この免責額は2500フランを上限とし、免責額が高くなるほど保険料の月額は低くなる。300フランに設定するのが一般的だが、特に健康上の問題がない人は免責額を高く設定し、月々の保険料を抑えるパターンが多い。他にも、医者に行く前に保険会社のコールセンターに電話をかけるTelmedモデルを選択したり、医薬品の購入先を限定したりするなど、一定の制約を設ければ保険料の割引を受けられる。

基礎医療保険料は州や保険会社によって異なり、ほぼ毎年保険料が上がっている。保険会社を変更する機会は年に1度。被保険者は毎年年末、翌年に予定されている保険料を自発的に他社と比較して検討する。

補完的な医療保険も多く、任意で契約する。歯科治療(歯の治療は基本的に基礎医療保険の対象外)、視力の問題、海外旅行中の不測の事態などがこれに当たる。

傷害保険

従業員は雇用者を通じ、勤務中の事故と職業病をカバーする保険に自動的に加入する。同一の雇用者の下で週8時間以上勤務する人は、勤務時間外に起きた事故も対象となる。これらの条件はインターン、職業訓練生、家事代行者、失業者、在宅勤務者にも適用される。

専業主婦(主夫)、子供、学生および定年退職者は、基礎医療保険と同じ保険会社で傷害保険に加入する必要がある。自営業者やフリーランスは傷害保険への加入義務がない。

賠償責任保険

自動車、自動二輪車、最高時速が45キロに達する高速電動自転車の所有者は、原動機付き車両専用の第三者賠償責任保険が義務付けられている。自身の車両に対する損害をカバーする場合は、車両保険に加入する。車両をリースする場合、自己責任で生じた車両への損害も対象となる「包括的車両保険」に加入する必要がある。

第三者への損害全般をカバーする総合賠償責任保険への加入は、原則として任意。ただし、マンションなどの不動産を借りる場合、保険加入が入居条件であるケースが多い。犬の飼い主には大半の州が加入を義務付けている。

保険金額、免責額、契約に含まれる事故の種類により、賠償責任保険料は大きく異なる。第三者が所有する車両の運転中に発生した損害や、模型飛行機の操縦、狩猟などの特殊なレジャーで起きた損害に対する補償も、オプションで追加できる。

住宅保険

住宅保険は、住居内にある家具、テレビ、洋服といった個人財産全般に対する損害が補償の対象。盗難、火災、水害などの外的要因で損害が発生した場合、この保険が適用される。

同居家族が起こした損害や、住居の外で起きた盗難もオプションでカバーできる。

住宅保険への加入は任意。一部、火災と自然災害を対象とする保険への加入を全住民に義務付けている州もある。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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