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売春婦を癒す国家援助

チューリヒでも身を売る東ヨーロッパの娼婦

(Ex-press)

スイスは、ベラルーシで実施されている人身売買の犠牲者を援助するためのプロジェクトに資金参加している。このプロジェクトが功を奏しているのか、近年、ベラルーシではだまされて売春を強要されている女性の数が減少している。

首都ミンスクの住宅地に建ち並ぶ鉄筋コンクリート建ての住宅。物寂しいモノトーンの中で唯一道しるべとなるのは、通りの名前や番地、そしてアパートの番号を記した標識くらいだ。非政府組織 ( NGO ) 「ラ・ストラーダ ( La strada、イタリア語で「道」の意 ) 」が借りている部屋は、そんなどこにでもある住宅地の目立たない一角にある。

ミンスクの一角で

 ラ・ストラーダは、スイスから資金を得てここミンスクに居を構えた。ラ・ストラーダで働く女性たちは、この3部屋のアパートを「シェルター」と呼んでいる。同じような活動をしているグループは、この国にはほかにない。人身売買の犠牲者は、住み慣れた町に戻って再スタートを切るチャンスをここで得る。

 「思い切ってベラルーシを出たのに自分の状況は悪化するばかり。だからもうここでは生活できない、と思っている女性はたくさんいます」
 ラ・ストラーダのイリナ・アルチョフカさんは帰国者の問題をこのように説明する。また、ブローカーに居場所を探り出されるのではないかと恐れる人も少なくないという。

スイスの支援

 連邦外務省開発協力局 ( DEZA/DDC ) は2004年から、ラ・ストラーダと国際移住機関 ( IOM ) が行っている人身売買をなくすための活動を支援している。ミンスクにはスイス協力事務所が置かれており、ディートリヒ・ドライヤー所長はこの支援がもたらした大きな成果を実感しているところだ。

 2005年以来、人身売買の報告件数は年間約180件とおよそ半減した。この傾向が持続的なものかどうかは今年の数字に表れるはず。だが、水面下ではおそらくこの数倍に及ぶとドライヤー氏は推測する。そのため、犠牲者の社会復帰と並んで予防も重要視されている。

 開発協力局は2005年8月以降だけでも予防対策に38万3000フラン ( 約3830万円 ) を投入してきた。そしてこの6月末、同プロジェクトは終了する。
「ベラルーシ政府が再びこの問題を引き受けてくれるのはありがたい」
 とドライヤー氏は安堵する。スイスは初めから短期の空白期間を埋めるだけの予定でいた。ミンスクはこれまでにアメリカ政府も認めるほどの大きな進歩を遂げた。

親友に売られた

 マリーナさん ( 仮名 ) はラ・ストラーダに保護してもらった1人だ。恋人が死んだとき、親友からモスクワへ行くように勧められた。
「マーケットで店を出している知り合いと一緒にジーンズを売ればいいし、悲しいときには住む場所を変えるのもいい」
 と。

 モスクワに着くとマリーナさんは薄汚れたアパートへ連れて行かれた。床に置いたマットレスの上で何人もの女性と寝起きをともにした。仲介業の男に、モスクワまでの旅費を働いて返してもらうから売春宿へ行けと言われた。旅費を返済し終わるまでパスポートは返さないとも。

 マリーナさんの親友はやはり売春を強要されており、このディールと引き換えに自由を手に入れたのだった。
「彼女は私を売ったのよ」
 とマリーナさんは唇を噛む。
「私と、私たちの友情も」
 マリーナさんがミンスクに戻ったのは、妊娠が分かったときだった。

若い女性に警告

 売春ブローカーの犠牲になるのは、たいていマリーナさんのような教育を受けていない若い女性だ。この公式は昔も今も変わらない。
「資格はまったく必要がないが、たくさん稼げる仕事がある、と声をかけられるのです」
 とアルチョフカさんは言う。その後、女性たちは観光ビザでどこかの国に入国し、メイドやウェイトレスをする代わりに売春婦として働かされるのだ。

 ラ・ストラーダと当局は啓蒙運動を開始した。ラ・ストラーダは街角キャンペーンや映画、催し物などを通じて、生徒や学生など目をつけられやすいグループに警告を発している。
「都市部ではもうほとんど事件は報告されていない」
 とドライヤー氏は言う。ラ・ストラーダはこれまで収集したノウハウを、教師だけでなくほかのNGOにも教えている。プロジェクトが終了し、スイスから資金が提供されなくなっても、ラ・ストラーダはそのまま活動を続ける。現在もすでに複数の基金から支援を受け取っているという。

ブローカーに厳しい措置

 「スイスからの援助は金銭的なものだけに終わらず、ベラルーシの官僚機構と渡り合う上でも大きな支えとなった」
 とアルチョフカさんは言う。ラ・ストラーダは、人身売買撲滅により効果的な法律を政府に提出し、現在ブローカーには数年間の懲役が下されることになっている。

 しかし、マリーナさんを仲介した男はわずか数カ月で釈放された。ドライヤー氏は、
「ベラルーシで人身売買を行おうとする人間はもういなくなった。周辺の国々から指図するのがせいぜいだ」
 と言う。

 これに対し、
「女性たちが連れ込まれている国々では、人身売買の犠牲となった女性を査証規則などに違反する不法入国者とみなしているところがほとんど」
 とアルチョフカさんは批判する。
「警察に行かない人が多いのはそのためです。彼女たちにとって大切なのは多額のお金ではなく、生き延びること。子どもに食べさせるため、あるいは親を助けるためにお金を必要としている人がほとんどなのです。そのために処罰されるなんてとんでもないことです」

 ベラルーシに戻ったとき、マリーナさんには頼りにできる人が1人もいなかった。アパート探しを手伝い、現在マリーナさんが受けている職業習得コースの授業料を援助しているのはラ・ストラーダだ。
「帰ってきて一番つらかったのはみんなに嘘をつかなければならなかったこと。ミンスクの外で私がどんなことをしていたか、知っている人は1人もいなかったから」
 マリーナさんがこれまでの出来事を正直に話すことができたのは、ラ・ストラーダで働く女性たちが初めてだった。

swissinfo、エリック・アルブレヒト 小山千早 ( こやま ちはや ) 訳

人身売買

各国際機関は、暴力や詐欺、強制によって搾取されている人々を人身売買の犠牲者とみなしている。搾取には、労働力の搾取と性的搾取の区別がある。

人身売買は調査が難しい。国際連合児童基金 ( Unicef ) によると、東ヨーロッパでは実際の数の約35%しか統計に表れていない。

国際労働機関 ( ILO ) は、世界中でおよそ1230万人が労働や性的行為を強要されているとみている。

また、犠牲者の8割は女性で、約半数が未成年だと推測されている。

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