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脱原発から再生可能エネルギーへ


ルイジ・ジョリオ


電球はよりエコロジーなものに変わり、すでに節電が実現されている ()

電球はよりエコロジーなものに変わり、すでに節電が実現されている

スイスは2011年福島原発事故を受け、脱原発に舵を切った。政府は現在、「エネルギー政策2050」計画により、再生可能エネルギーの推進に向け議論を進めている。

しかし、再生可能エネルギー推進派の連邦議会議員たちは「諸政策の決定を待つ間にも具体的計画を実行に移すべきだ。待っている時間はない」と訴える。

 福島原発事故がスイスに与えたインパクトは大きく、スイス政府は昨年の5月25日、段階的脱原発を決定。秋には連邦議会も同意した。

 この決定によれば、現在5基ある原発のうち最後の原発が廃炉になる2034年までに、原発による約40%の発電量(毎時25テラワット/250億キロワット)に取って代わる電力が必要になる。これは極めて大きなチャレンジだ。

 しかし、この40%の発電量を、節電とエネルギー効率を高めながら、太陽光や風力発電など再生可能エネルギーで代替することは、革新技術に優れたこの国ならやれないことはない。それに現在でも水力発電が57.3%を占めている。

 ただ潜在的可能性だけにたよってもいられない。「我々は脱原発を実行するという政府の勇気ある決断を手にした。今後必要なのは、再生可能エネルギーを最大限に活用していくよう義務付ける勇気だ」と訴えるのは、経済発展とエコロジーの融合を目指す政党「自由緑の党(Grünliberale/Vert’libérauxl)」の連邦議会議員、イザベル・シュヴァレー氏だ。

節電と再生可能エネルギーの実行

  「エネルギー政策2050」は、エネルギー効率と再生可能エネルギーの実行に重点を置いている。

 大規模な節電は特に建物と工場など産業界で行われ、2035年までに建物で毎時7テラワット(70億キロワット)、産業界で毎時13テラワット(130億キロワット)の節電が見込まれている。また、連邦政府の全てのオフィス、連邦工科大学では、公共事業を受け持つ企業などが今後2020年までに25%の節電を行っていく。

 「スイスはすでに家庭電気製品でヨーロッパの節電レベルをクリアーしている」とシュヴァレー氏は話す。しかし、一般家庭でも一歩踏み込んだ節電が必要で、例えば電気暖房器具を使う建物では、それを他の暖房器具に変えるべきだと主張する。

 政府の試算によれば、2035年までに毎時13テラワット(130億キロワット)が再生可能エネルギーからつくられる予定で、これは、水力発電とその他の多様な再生可能エネルギーの組み合わせからなる。

 「太陽光発電は将来、総消費電力の20%を占めるようになるだろう」と推定するのは、社会民主党(SP/PS)の議員で太陽光発電協会「スイスソーラー(Swissolar)」の会長を務めるロジャー・ノードマン氏だ。氏は「今後、市民がソーラーパネルを設置する場合、許可がなくても済むようにするべきだ」と主張する。

具体的計画は直ちに実行

 国のエネルギー政策に沿った諸計画は、環境大臣によって2012年中旬に明確にされる。しかしノードマン氏は、「それまで、ただ手をこまねいて見ているだけではなく、必要で具体的な計画は直ちに実行に移すべきだ」と話す。

 例えば、水力、太陽光、風力、地熱、バイオマス(生物資源)でつくられた電力の供給者が市場価格より高い価格で送電網に電力を注入する、いわば国の「電力固定価格買い取り制度(CRF)」は、すぐにも実現されるべきだ。しかし現在、そのためにつくられた基金に集まっている資金は2011年末で2億4700万フラン(約200億円)。これでは不十分で、計画は停滞状態だという。

 さらにノードマン氏は、「およそ1万4000件の計画が待機状態だ。これらは今すぐ実行されるべきで、もし実行されれば、全消費電力の14%(およそ80キロ億ワット)になり、それは小型の原発3基分に当たる」と強調する。

風力発電建設を義務付ける

 確かにスイスの政治システムでは、計画が迅速に前へ進まない。全ての課題が国民投票に掛けられる可能性さえあり、気の遠くなるような時間がかかる。「それは十分承知している。しかし、(エネルギー問題では)今、前向きで勇気ある決断が必要だ」とシュヴァレー氏は言う。

 氏は風力発電の例を挙げる。スイスでは風力発電建設は、地元の反対を受け難航しており、「オーストリアでは600基も風車が建てられた。問題は風景が損なわれることだけだ。従って、スイスも同じように行うべきで、風車建設を地域に義務付けるような姿勢も必要だ」と述べる。

 さらにジュラ州での風力発電パーク建設反対に触れ、「このパークが建設されれば4万人もの住民の電力が賄える。今は妥協し、何かを犠牲にする勇気が必要とされている。それは、かつてヴァレー/ヴァリス州やグラウビュンデン州が自分たちの谷を犠牲にしてダムを建設したのに似ている。そして現在、我々はその勇気に感謝している」と言う。

理論から実践へ

 ところで、エネルギー政策に関し政府や議会が大議論を展開している間に、幾つかの市町村は独自に具体的な行動に出ている。

 グラウビュンデン州イグリスは、昨年11月にスイスで初めて街灯をLED(発光ダイオード)に切り替えた。これで電力が従来よりも60%節約できる。また、ティチーノ州メンドリージオ市は、スマートグリッド(次世代送電網)をパイロットケースとして実行。ジュネーブ市は、多目的の大会場パレクスポ(Palexpo)の屋根にソーラーパネルを設置した。これは、スイスで最大の太陽光発電所になっている。

 「(原発の発電量の)約40%の電力を原発なしで生産することは困難なことではない。太陽光、風力、水力でスイスのエネルギーは十分保障される」とシュヴァレー氏は断言する。その楽観性は、恐らく、2011年の総選挙でシュヴァレー氏が属する自由緑の党が9議席を新たに獲得し、15、6人の原発反対を唱える議員たちとともに歩んでいるからだろう。

スイスのエネルギー転換

2011年5月25日、スイス政府は段階的脱原発を決定。2020年から2034年までの間に、既存の5基の原発を寿命まで稼働させた後廃炉にし、改修や新原発建設は行わないとした。

政府案に連邦議会も賛成した。しかし全州議会(上院)は、原子力エネルギーの新技術開発は維持していくよう求めた。

スイスは2050年までのエネルギー政策目標を定めた、「エネルギー政策2050(Energiestrategie/stratégie énergétique 2050)」で、電力消費量を削減し、再生可能エネルギーを活用する諸政策を掲げる。

エネルギー効率を高める : 電気製品、建築、交通、産業などでの電気消費量削減を推進。さらにこうした分野に携わる専門家に対し、電気消費量削減のための教育を行い、同時に研究開発にも力を入れる。

再生可能エネルギー : 「電力固定価格買い取り制度(CRF)」導入を実現し、認可方法を簡単にする。特に、水力、太陽光、風力発電の大規模発電所を優遇する。

化石燃料 : 熱と電気を同時に供給するコジェネレーション(熱電併給)効率の高い発電所と、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電所の建設。

送電網 :  高圧電線網の配備とスマートグリッド(次世代送電網)の実現。

なお、「エネルギー政策2050」実行のため、政府は「エコロジー税制改正」の可能性も提示している。


(仏語からの翻訳・編集 里信邦子), swissinfo.ch



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