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選挙総括 2019年総選挙 スイス史上3度目の「番狂わせ」

投票の集計作業

(Keystone / Peter Klaunzer)

スイス連邦議会の新しい顔ぶれが決まった。連邦議会の勢力図がこれほど変化したのは過去に例がない。24日には残る3州でも全州議会(上院)議員の決選投票が行われ、全ての結果が出揃った。そこで今回の選挙を総括する。

クロード・ロンシャン氏

(swissinfo.ch)

今年の選挙はこれまでと違う形となった。その理由を理解するには、スイスの過去30年を振り返る必要がある。スイスでは1990年代以降、すべての選挙で二極化が進んでいる。右派の軸を成す国民党、そして左派の軸である社会民主党と緑の党は選挙を経るたびに支持を伸ばした。その一方で中道派政党の支持は下がった。

こうして右派と左派の二極化が長期的に続いた。

だが今回は右派の国民党も、左派の社会民主党も敗北した。中道右派の急進民主党も支持を下げた。得票数をわずかに下げるだけで済んだのは、中道派のキリスト教民主党だけだった。

こうして全ての与党が得票率を下げた一方、大勝を収めたのが野党の「緑の党」と「自由緑の党」だった。

行き詰る与党

このような展開はスイスでは初めてだったが、例えば欧州に比べればそれほど驚くことでもない。世界金融危機以降は欧州でも野党が勢力を伸ばし、与党が守勢に立たされているからだ。

だが、スイスにおいて今回ほどの変化は例外的だ。比例代表制が導入された1919年以降、最大の「番狂わせ」が起きた選挙と言える。

特に国民議会(下院)ではそれが顕著で、17%以上の議席で政党が入れ替わった。

上院の状況はそれよりも若干安定(ただし同様のパターン)しているようにみえるが、勢力図は大幅に変化した。議席数では緑の党が4増、国民党が1増の一方で、社会民主党は3減、急進民主党は1減。キリスト教民主党は横ばいだった。

Staenderat

グラフ1

staendarat delta

グラフ

全体的として今年ほど変化の激しかった選挙は今までにない。過去には1935年と2011年に勢力図が大幅に変化したが、下院の議席のうち政党が入れ替わった割合は1935年で13%、2011年で15%だった。どちらも当時の国内記録を更新した。

世界の震動、ローカルな揺れ

1935年は「番狂わせ」が起きた最初の年だった。当時は29年の世界恐慌の余波を受け景気が悪化し、失業率は上がり、社会的に困難な立場に置かれる人が増加した。そうした背景を受けて新党が立ち上がり、特にドイツではナチスが台頭した。

スイスでは35年、4大政党がことごとく敗北した。議席を最も減らしたのが第一党の急進民主党で、農工市民党(現・国民党)、カトリック保守党(現・キリスト教民主党)がそれに続いた。31年以降はスイス最大政党だった社会民主党も敗者の側に回った。

一方、大きな勝利を収めたのが新党の「独立者同盟」であり、保守派の自由経済主義者や青年農家、極右運動の支持者だった。

スイス総選挙2019 スイス主要7政党の立ち位置は?

政党は右派、左派、中道と分類されることが多い。スイスの政党は実際にどのような主義・政策を掲げているのだろうか?レーダーチャートで比べてみよう。

その結果、新しい連邦内閣制度を巡る激しいせめぎ合いが起き、新しい勢力図を連邦内閣の閣僚ポスト配分にも反映するよう求める声が高まった。こうして閣僚全7ポストを固定した与党4党で分配する「魔法の公式(マジック・フォーミュラー)」に向けた一歩が踏み出された。

二つ目の「番狂わせ」

二つ目の同程度の「番狂わせ」は2011年に起きた。きっかけは福島の原発事故だった。この事故で原子力は時代遅れだということが明らかになり、スイスでも脱原発への要求が高まった。連邦内閣はこのテーマで指揮を執り、相応の政策を展開した。連邦内閣で初めて過半数を占めた4人の女性閣僚が、脱原発への決定打となった。

しかし11年秋の総選挙で、閣僚ポストを握る政党はいずれも敗北した。この時もまた、最も得票率を下げたのは重要課題で党の立場を決められなかった急進民主党だった。

真の勝者はここでも新参者だった。11年に初めて国税選挙に出馬した市民民主党と、2回目の参戦となった自由緑の党はそれぞれ5%超の得票率を獲得。自由緑の党は特に若者の支持を多く集めた。

スイスの閣僚数分配比率 「マジック・フォーミュラー」

スイスの内閣閣僚は何人?答えは7人だ。だが、内閣を構成する政党の比率はどうだろう?2+2+2+1?それとも3+2+2?スイスでこれほどまでにこの比率が問題にされるのはなぜだろうか?

おろそかにされた気候変動対策

三つ目の「番狂わせ」は選挙イヤーの今年に起きた。遅々として進まない気候変動対策に抗議するため、学校ストライキとデモ活動が今春、大々的に行われた。気候危機に対する路上での抗議活動がこれほどの盛り上がりを見せたのは初めてのことだった。その流れを受け、選挙では緑の党、次いで自由緑の党が記録的な勝利を収めた。 

番狂わせは今後も続く

このことから分かるのは以下の点だ。 

1.スイスの勢力図が大きく揺らいだきっかけには、経済、技術、環境の世界的な危機がある。 

スイスは世界市場に開かれた国であり、密閉されたコンテナではない。そのため、スイスの選挙はこうした危機の影響を受けやすい。

2.番狂わせが起こる間隔が短くなってきていることは注目に値する。番狂わせは例外的ではなくなり、むしろほぼ当たり前になってきている。 

3.番狂わせが起きると政治制度は安定性を欠き、政党勢力図が大きく変化する。そしてその影響は連邦内閣制度にも及ぶ。なぜなら連邦内閣のポスト配分方式であるスイスの「魔法の公式」は、長期的な政権運営を目標としているからだ。この公式では固定の政党と、承認された利益代表者から成る安定した政治情勢を前提としている。

安定した政治情勢を維持すること。それは各国にとって重要な課題であり、スイスも例外ではない。

レグラ・リッツ

緑の党のレグラ・リッツ党首。閣僚ポストを獲得したい意向を明らかにした

(Keystone / Peter Klaunzer)

最終結果

上院の勢力図は概ね前回と同様。キリスト教民主党と急進民主党は今回も多数派となった。社会民主党と緑の党が組んだとしても、両党は上院で過半数を維持するとされる。過半数が取れる連立パートナーがいない国民民主党は孤立を続ける。

インフォボックス終わり


(独語からの翻訳・鹿島田芙美), swissinfo.ch

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