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NHKワールド、18カ国語で東日本大震災を報道


里信邦子 ( さとのぶ くにこ )


「スペイン語及びポルトガル語放送が情報源になり、家族の安否を尋ねるEメールが1日に100通も南米から届いた」とNHK国際放送局長、原田誠氏は話す。

これは、18カ国語で情報を発信するNHK国際放送局 ( NHKワールド ) が東日本大震災で果たした大きな役割の一つだ。

 今回の大震災は、メディアにとっても「大地震」のようなもの。特に海外にニュースを伝えるNHK国際放送は激動の時を過ごしたという。原田局長に国際放送ならではの放送への配慮、海外からの反応や体験、さらに反省など、東京から電話で語ってもらった。

 

 NHK国際放送は、スイスインフォと同じく6カ国の国際放送局からなる「グループ6」のメンバー。ほかに、オーストラリア、カナダ、スウェーデン、オランダの国際放送局が参加している。

swissinfo.ch : 東日本大震災はメディアにとっても大変な出来事になりました。NHK国際放送はこうした緊急事態においてどのような体制で、どのような情報を提供されたのでしょうか。

原田 : NHK国際放送はテレビ、ラジオ、及びインターネットというメディアです。まず英語で行うテレビの国際放送では、地震発生直後に独自の特別ニュースという枠を組み、キャスターが国内から入ってくる現地の映像、地震の被害や津波の映像などをコメントしながら伝えました。

これで3時間ほどニュースを続け、刻々と移り変わる被害が世界に伝えられたと思っています。

同時に、国内の外国人向けに、大津波警報が出るやいなや国内テレビの副音声で英語、中国語、韓国語、ポルトガル語による音声ファイルが自動的に流れるようにし、「警報が出ましたよ。避難しなさい」というようなことを繰り返し伝えました。

また原子力発電所周辺から避難指示が出た場合も、英語で割り込んで国内の外国人の方にお知らせしました。

一方、海外向けにラジオの国際放送というものがあり、これは日本語を含め18言語ありますが、ここで地震・津波発生の1日目からニュースの時間で伝えてきました。

このラジオニュースはインターネットによる音声の同時放送とニューステキストでも伝えていますが、刻々と変わる状況を国内でも国外でもより早くキャッチしてもらおうと、普段よりもニュースの更新を多くして放送しました。

こうして、地震発生からほぼ1カ月間にわたり、原発事故を含むニュースを伝えました。

swissinfo.ch : 緊急体制時のスタッフ数などはどうされたのでしょうか。

原田 : NHK全体もそうですが、日ごろから毎日警報が出されたり、大きな地震や津波が起きた時の訓練をしています。大規模の災害時にはこうしなさいということを毎日確認しており、それに基づいて報道しました。

スタッフの数でも、大きな地震が起きたら集まるということを日頃から訓練しているので、当初は日常の規模の人間でやっていましたが、次々とスタッフが増えていきました。

swissinfo.ch : 世界に向け18言語で、詳細な情報を流されたわけですが、どこか特別な国から非常に役立ったといった反応がありましたか。

原田 : 日本には南米のスペイン・ポルトガル語圏から働きに来られている日系人の方が大勢いらっしゃいますが、そうした方の家族や友人などが安否を知りたいが日本語が理解できない。なんとかならないのかということがありました。

こうした家族の方々には、うちのスペイン語及びポルトガル語放送が情報源になり、実際安否を尋ねるEメールがインターネット経由で来ました。普段は一日数通、1桁の反応しかないものが、この時期は100通のEメールがあったりしました。そこで、ニュースの枠内を使って、「こういう方がこういう人を探していますよ」ということを紹介したり、大使館の連絡先を教えたりし、できる範囲で対応しました。

swissinfo.ch : 今回、スイスもそうですが、海外からの支援やチャリティー活動の驚くべき広がりがありました。NHK国際放送でもそういった反応がありましたか。

原田 : 例えばロシアの方がですが、チェルノブイリを経験したことがあるので、この経験を日本にぜひ知らせて手伝いたいとか、シベリアに家があるので避難する人はこちらに来てもいいというようなことなど、具体的なものがありました。

また、フランスの方で、これは72歳の男性ですが、「私は年寄なんだけれども、いつでもボランティアとして荷物を運ぶこともできるし、24時間働きますよ」というメッセージを届けてくれた方もいらっしゃいます。

やはり日本の復興を手伝いたいという、日頃からラジオジャパンを聞いていらっしゃる方は、日本のことに関心がある方が多いと思いますので、「日本がんばれ」という事を言ってくださる方が多かったですね。

swissinfo.ch : 福島原発事故がまだ収束していませんが、今NHK国際放送として世界から期待されている情報とはどのようなものでしょうか。

原田 : 一つは、被災地がどのように復興しているのか、被災地及び日本の経済がどのように災害から復興しているのかということは重要な情報だと思っていますし、それは日本から、新しい情報を出していかなければならないなと思っています。

もう一つは原発の最新情報ですが、これはなかなか、政府や東京電力の発表をもとにニュースを出さざるを得ないという部分もありますが、やはり事実関係をきちんと検証しながら、今何が問題なのかということを、できる限り報道していって、いま日本の原発はどうなっているのだということをきちんと伝えていきたいなというふうに思っています。

swissinfo.ch : 例えばメルトダウン(炉心溶融)が2カ月たって公表されたように、情報においても後手後手に回っている日本政府や東電の発表の仕方は、国民にとってもショックですが、メディアの方々にとっても非常にやりにくい部分があるかと思います。これに対してはどのように対処されていますか。

原田 : 普通の現場だと、その現場に入って行って、いろいろな人の声を集めて取材ができるわけですけれども、今回はなかなか、安全のこともあって中に入れないということもあります。データをどう扱い、こちらとしてどう取材するのかという、やはり悩みがありますね。

ですから、政府や東京電力に対して、きちんと情報を公開しなさいというようなことを我々としても求めていますし、どこが悪かったのかということもきちんと我々なりに検証して、求めていかなければならないなとというふうには思っています。

swissinfo.ch : 原発に反対している物理学者など専門家の方もいらっしゃると思いますが、そういう方々の情報に触れることはあまりなさらないのでしょうか。

原田 : それは根拠があって、きちんとデータに基づいて批判するような意見は、われわれもきちんと伝えなければならないと思っていますが、まったく根拠がなく、人々の不安を煽るようなものについては、特にそれを強調してやるっていう方法は取っていません。

swissinfo.ch : さて、福島原発事故は世界の関心ごとですが、ただ18カ国語で報道されていると相手の国の発展あるいは文化状況などによって、情報の受け取り方にギャップがあるのではないかと思いますが、こうした点も考慮されますか。

原田 : 確かに原発がない、または津波もない国などがありますので、基本的なところを説明しながら、一つのことを紹介するにしても丁寧に解説を加えます。例えば原発の用語など難しいものがありますので、その用語の解説から入ったりします。

あとは翻訳の仕方を工夫し、ネイティブスピーカーの人たちと相談しながら、放送を出していかないといけません。日本語ニュースを英語やほかの言語に訳しているので、そこの工夫を丁寧にやっていかないと、分かり難いニュースになるということをいつも考えてやっています。

swissinfo.ch : なるほど。正確で、しかも丁寧な情報を流していらっしゃるということですね。

原田 : そうですね。それとまたEメールやお便りで、いろんな質問や疑問などが来ますので、それに対してはきちんと丁寧に回答します。一方、答えになるような番組なども作って対応しています。

説明しても分からないことがあるかもしれませんが、回答するということ自体が、視聴者なり聴視者の信頼を得るということですので、これについては、小まめにそれぞれの現場で対応するようにしています。

NHK国際放送 ( NHKワールド )

NHK国際放送は、ありのままの日本を世界の人に知ってもらうことを目指す。基本的には日本の政治、経済、社会、文化をトータルに理解してもらうことが目的。一方、海外の日本人に今の日本の状況を知らせる役目もある。

ラジオは1935年から、テレビは1995年からスタートした。

ラジオ放送は1935年に英語と日本語で始まり、徐々に放送言語が増え、一時22カ国語になった。現在は18カ国語でラジオ放送とインターネットで情報を伝えている。

swissinfo.ch



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