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脱原発への第一歩


エネルギーを自給自足する住宅を目指して


アンドレアス・カイザー


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脱原発に向かうスイスは、2035年までに国のエネルギー消費量を35%削減する計画を打ち出した。ここで注目されたのが、電力需要の5割を占める建物。政府は建物の暖房効率を高め、長期的にはエネルギーを自給自足する家屋を広めたい意向だ。

 この計画を実現させるには、古い建物のエネルギー効率を向上させ、新築にはこれまでより厳しい基準を当てはめることが重要だ。そのため、スイス政府は省エネを目的とした改修に、現在1年間に支払われる助成金2億フラン(約172億円)を2015年から6億フランに引き上げる予定だ。

 また、スイス各州のエネルギー省代表が集まる会議では、新築は2020年以降、「1年を通してできるだけ自力でエネルギーを賄うことが望ましい」という目標が設定された。これは、欧州連合(EU)が掲げる目標と一致する。米国も2020年までにエネルギー消費ゼロの住宅建設を促進する計画だ。

研究者は「実現可能」

 こうした省エネ目標が達成できるかどうか疑問に思う人も多いが、少なくとも研究者はこれを実現可能だと考える。「未来の建物は別の場所で作られたエネルギーに頼ることはあまりないだろう」と、連邦マテリアル科学技術センター(EMPA)のジャン・ルカ・ボナ所長は語る。ボナ所長によれば、建物はそれ自体が消費するよりも多くのエネルギー量を作り出せるという。そうなれば、太陽光発電で余った電力を電気自動車の充電に使うことも可能だ。

 新築の建物は1975年当時、暖房のために1平方メートルにつき22リットルの石油を消費した。1995年では従来の建物は11リットル、省エネ設計の建物では4リットル。現在ではすでに、エネルギー消費量ゼロの住宅建設に必要な技術や素材はそろっている。

改良の進む断熱材

 新築よりも問題が多いのが、古い建物の改修だ。「改修した場合のエネルギー効率は、新築した場合に比べはるかに劣る」と、断熱材製造メーカー「スイスポル(Swisspor)」のハンス・ジムラー開発担当は言う。

 しかし、建物の改修技術も徐々に発展してきている。スイスポルでは新しい断熱素材の開発が大々的に行われている。ジムラー氏は語る。「今の断熱材なら、従来の厚さのものに比べ断熱効果が高い。また、薄い素材でも従来の厚さと同じ断熱効果を発揮する」

 ただし、最新技術でできた断熱材の価格は「まだかなりの高水準」。生産量が増加したり、各メーカー間で競争が激しくなったりすれば、価格は低下する見込みだという。

文化財の改修問題

 改修工事で特に問題になるのが、文化財に指定された建物の外壁だ。ジムラー氏は次のように言う。「ここでは厚みが最小限のもので、かつ高機能の断熱材が必要。建物内部の断熱と合わせて十分な効果を得るためだ。重要なのは、断熱材を壁の内部に使用することで古い建物にどんな被害が出るのかを見極め、そのリスクを最小限に抑えること。現在では、改修工事の難しい建物のエネルギー効率を高め、住民に無理を強いることなく工事ができる技術が基本的にはある」

 省エネ化のために既存の建物を改修する場合、スイスでは6年前から国と州から補助金が出ている。この制度は2015年末まで続けられる予定で、目標は1年間に1万戸の改修工事だ。

部分的な改修工事も

 スイス政府は積極的にエネルギー改革に取り組んでいるため、こうした分野には今後も公的資金が注がれる見込みだ。また、二酸化炭素(CO2)の排出量削減を促すため、新築基準や改修工事の基準も厳格化される。

 しかし、改修工事の補助金をどこから捻出するのかについては、まだ政治的に決着がついていない。今のところ、補助金はCO2への課税で賄われている。

 国の省エネ促進プログラムを担当するザビーネ・ペルヒ・ニールセンさんは、その目的を次のように語る。「狙いは、部分的な改修を可能にすること。建物全体を一度に改修できるほどのお金を持っている人は少ない。重要なのは、改修の手順だ。最初に窓を取り換えて、3年後に外壁をリフォームする人がいるが、これは間違っている」。国は効率的な省エネを推進するため、専門家の助言をもとにプログラムを実施しているという。

エネルギー戦略2050

スイス政府と連邦議会は2011年秋、福島第一原発事故を受け、脱原発を決定した。

2012年9月、政府は脱原発を達成するための具体的な政策をまとめた第1案を発表。この案をめぐり、政府や州、これに関心のある団体、政党などが2013年1月まで協議。

政府はこの案の中で、1人当たりの消費エネルギーおよび消費電力の削減、化石燃料の消費削減、原子力エネルギーによる電力を再生可能エネルギーおよび省エネ対策で補うことを目標に掲げる。

こうした政策を実施するには、エネルギー法の全面改正など法改正が必要となる。

次のステップとしては、環境分野での税制改革が予定されている。

また、建物改修工事への補助金を増額したり、建築基準を厳しくしたりすることで、建物のエネルギー効率を中期的に高める計画がある。

さらに、自動車の二酸化炭素(CO2)排出量を今後さらに規制し、国全体のエネルギー消費を抑える予定。


(独語からの翻訳・編集 鹿島田芙美), swissinfo.ch



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