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コペンハーゲン、成功と具体面での失敗

スイスのモリッツ・ロイエンベルガー環境相 ( 右 )とスイスの交渉団長、トマス・コリ氏 ( 左 )、コペンハーゲンの迷宮のような会議場で Keystone

世界の注目を集めた国連気候変動枠組み条約第15回会議 ( COP15 ) が12 月19日幕を閉じ、2013年以降の地球温暖化対策に関する政治合意「コペンハーゲン協定」を「承認する」という3ページの文書を採択した。

同文書には、産業革命以前に比較して気温上昇を摂氏2度以下に抑えることが唯一の数値として書き込まれ、法的拘束力のある完全な合意文書は1年後に先送りされた。この結果をスイスのモリッツ・ロイエンベルガー環境相は「失敗であると同時に成功だ」と語る。

失敗と成功

 スイスのロイエンベルガー環境相にとって、コペンハーゲン会議の結果は「失敗であると同時に成功」だった。
「気候変動に関し、政治的には一つの成功だ。新興国と途上国を含むほとんどの参加国が2010年1月までに温室効果ガス排出量削減目標の数値を文書にして提出するなど、法的拘束力に対し積極的な態度を示したからだ。これは2年前には考えられなかったことだ」
 とロイエンベルガー環境相は語った。

 一方コペンハーゲン会議は、失敗でもある。
「すべての国が温室効果ガス排出量削減目標を法的拘束力のある形で決定することを会議前には望んでいた。しかしこれは来年末のメキシコ会議まで先送りされた。また、各国の温室効果ガス排出量削減を検査するメカニズムと途上国支援の具体的方法も決定される予定だったが、失敗した。残念だ」
 と続けた。

 温室効果ガス排出量削減を検査するメカニズムに関しては
「結局ある種の妥協を行い、関係国は『検査されること』に同意した。しかし、検査の方法など詳細は何も決定されず、今後の課題として残った」

 全体的には、コペンハーゲン会議はスイスが望んだレベルのものではなかった。
「しかし、重要な政治的第1歩が踏み出された。主な失敗理由は、国連があまりに多くのことを持ち込み、ここですべてを解決しようとしたことだ。マネージメントの問題だ」
 とロイエンベルガー環境相は結論した。

具体的なことは何も出なかった

 一方、環境関係のNGOは多くが不満を表明している。
「コペンハーゲン会議の結果には深く失望した。コペンハーゲン会議は、気候変動に関し法的拘束力のある合意に世界を動かせる機会を逃したとして、歴史に名を留めることになるだろう。2010年は難しい年になると思う」
 と「WWFスイス ( WWF Suisse )」の気候変動部門責任者、パトリック・ホッフシュテッター氏は落胆の色を隠さない。

 「確かに過去2年間で温室効果ガス排出量が最も多い2国、アメリカと中国が僅かながらもバリでの会議以降歩み寄ったという事実はある。しかしコペンハーゲンでの会議では、本当の意味で具体的なことは何も出てこなかった」
 と分析する。

 2週間の会議中、多くの問題が交渉を難航させた。先進国の中でも特にアメリカの温室効果ガス排出量削減目標が十分でないと中国やインドから非難が集中した。また、温暖化防止のための途上国支援金の使われ方の管理と検査の透明性をアメリカが強く要求したことも、交渉を長引かせた。

 いずれにせよ、「作業は続行する。コペンハーゲン会議は中間の一つの段階でしかない」とロイエンベルガー環境相が表現したように、地球温暖化対策のチャレンジは今後も続いて行く。

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国連気候変動枠組み条約第15回締結国会議 ( COP15 ) がコペンハーゲンで12月7日から18日の予定で開催されたが、最終的には19日午前に閉幕した。

約200カ国の閣僚級会議で外交史上最大級の会議となった。

2013年以降の地球温暖化対策に関する政治合意文書「コペンハーゲン協定」を「承認する」という3ページの文書を採択した。

焦点の温室効果ガス排出量削減に関しては、唯一の数値として、産業革命以前に比較して気温上昇を摂氏2度以下に抑えることが書き込まれた。

途上国支援に関しては、2020年から年間1000億ドルを拠出するために、今後3年間で300億ドルの基金の創設が盛り込まれた。スイスもこの基金に参加する。

さらに、2010年1月までに先進国、途上国共に温室効果ガス排出量削減目標の数値を文書にして提出することも見込んでいる。しかし2050年までに温室効果ガス排出を50% に抑える案は採択されなかった。

法的拘束力のある完全な合意文書は、来年度末にメキシコで行われるCOP16まで先送りされた。COP16までに、ドイツのボンで中間会議開催が予定されている。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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