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ブラジル政府、ロシュ製エイズ治療薬のコピー薬製造認める方針

ブラジルでは、高価なエイズ治療薬に手が届かない感染者らに政府が無料で薬を支給している。そのブラジル政府は22日、ロシュなど製薬会社とのエイズ治療のための特許薬の値下げ交渉の難航を理由に特許法の例外規程を適用して、コピー薬の製造を認める方針を発表した。これを受けたロシュ(本社バーゼル)は、特許権侵害に関して控えめな反応を示している。

コピー薬の対象となっているのは、ViraceptまたはNelfinavirと呼ばれるロシュのエイズ治療薬で、ブラジル政府が支給している混合治療薬の主原料の1つとなっている。この薬は、エイズウィルス複製において基本的な役割を果たす酵素を押さえる働きをする。「ブラジル政府の発表を聞き、ブラジル政府との交渉が良い方向に進んでいただけに、我々は驚愕している。」とロシュのスポークスマン、カジャ・プロヴァルドさんは次のように語った。「我々はブラジル厚生省と、2001年を通してViraceptを米国の卸値より50%低い価格で提供することで合意した。この価格は、ブラジル政府側の希望にほとんど沿ったものだった。我々は、2002年のViracept供給について交渉を続けていて、さらなる値下げの合意に近付いていた。」。

1997年に導入されたブラジル特許法例外規程とは、国家非常事態や会社が価格政策を悪用した際には特許を侵害してもよいというものだ。22日ホセ・セッラ厚生相は、ロシュのエイズ治療薬に関しこの特許法の例外規程の適用を認める方針を発表した。ブラジル厚生省は「ロシュとの6ヵ月の価格交渉の結果、合意の可能性が極めて低いことから、ホセ・セッラ厚生相はNelfinavirに特許法の例外規程を適用することを決定した。」との公式声明を出した。さらに、ロシュは2001年12月まで契約通りNelfinavirを供給し、今後もブラジルの必要性に見合う提案をすることは可能だとした。

今年になってから、途上国と製薬会社のエイズ治療コピ−薬をめぐる争いが、顕著になっている。今年4月、エイズ治療のための特許薬の安価なコピー品の輸入を許する南アフリカの法律が薬品企業の特許権を侵害しているとして、ノバルティス、ロシュなど薬品企業39社が南アフリカ政府を相手に訴訟を起したが、人命よりも利益を優先するとNGO、国連から非難を浴びて訴訟を取り下げた。

ブラジルは中南米でエイズ感染者が最も多い国だ。昨年、無料治療薬の供給を受けた人は約90、000人で、1人当たり15、000ドルの経費がかかった。ブラジル政府によると、無料治療薬供給を開始してから4年間で、年間エイズ死亡者数は11、024人から4、136人まで減少した。ブラジルの無料治療薬供給制度は、他の途上国にとってもモデル・ケースとされている。ブラジルは毎年、エイズ対策予算3億300万ドルの28%にあたる8、800万ドルをNelfinavirに注ぎ込んでおり、ブラジルのエイズ患者の4分の1が服用している。先週、政府研究機関の研究者らは、Nelfinavirのコピーに成功、品質テストに3ヵ月かかると発表した。ブラジル厚生省によると、コピー薬製造によって政府は予算の40%を削減できるという。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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