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ロシア、クレミリン汚職疑惑捜査中止

ロシア当局は、ロシア大統領府改築工事に関わるスイスの建設会社、マベテックスとエリツィン前大統領の家族の贈収賄疑惑の捜査を中止すると発表した。一方、スイス当局は、捜査を続行するとしている。(写真:エリツィン前大統領とパコリ・マベテックス社長)

ロシア当局は、ロシア大統領府改築工事に関わるスイスの建設会社、マベテックスとエリツィン前大統領の家族の贈収賄疑惑の捜査を中止すると発表した。一方、スイス当局は、捜査を続行するとしている。(写真:エリツィン前大統領とパコリ・マベテックス社長)

ロシア当局のルスラン・タマイエフ首席捜査官は、起訴手続きに十分な証拠が揃わないとし、エリツィン元大統領と娘を起訴しないと決定した。タマイエフ首席捜査官はロシアの通信社インターファクスに、捜査中止の決定の背景に政治的、肉体的な圧力は無いと語った。が、1999年2月にエリツィン氏に解任されたユーリ・スクラトフ元首席検事は、ロシアの民放NTVのインタビューで、捜査中止の決定は国の最高レベルで出されたもので「司法ではなく政治だと。」と批判した。

スイス、ロシア両国の司法当局は、ロシア大統領府改築工事落札をめぐってティチーノ州の建設会社マベテックスが複数のロシア政府高官に賄賂を贈ったという疑惑に関し、長期にわたって捜査を行って来た。賄賂を受け取ったと申し立てられているのは、パヴェル・ボロディン元ロシア大統領府総務部長、エリツィン前大統領の娘などで、ボロディンに対してはジュネーブ当局が6月に国際逮捕状を発行した。

タマイエフ首席捜査官は、エリツィン前大統領の家族は誰1人としてスイスに銀行口座を保有しているという証拠がないと主張する。が、エリツィン一家は、パコリ・マベテックス社長が保証人になっているクレジットカードを持っていると認めている。5、5000スイスフランという金額がこのカードを用いて支払われているが、引き落としはエリツィン氏の個人口座の1つからされている。

パコリ社長はスイスで総額400万ドル(650万スイスフラン)の贈賄で起訴されているが、全面的に否認している。ロシアの捜査中止決定に対し、パコリ社長は「真実は必ず証明されるが、時間がかかる。」と述べ、これで解放され満足だと語った。

スイスでは同じくティチーノ州の建設会社メルカタも、同様な贈賄疑惑で調査中だ。メルカタ社は総額6、000万ドル相当の贈賄疑惑がある。が、マベテックス、メルカタ両社の弁護団は、贈賄が事実だったとしても、当時のスイス法では外国人への贈賄は犯罪では無かったと主張している。が、この件を担当しているジュネーブ裁判所のダニエル・デヴォー裁判官は、2社はロシア高官のスイスでのマネーロンダリングを幇助しているとして、スイス法違反を主張する。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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