スイスの視点を10言語で

個人データ保護

目の色や指紋などの身体データを使ってのコントロールがますます増えている Keystone

「連邦データ保護と透明性担当課(EDÖB/PFPDT)」のハンスペーター・チュール氏はこの機関が信頼性を失うのではと危惧している。

このほど提出された第13回年次レポートで、彼は、毎年増え続ける仕事に対処するには、もっと人員が必要だと訴えている。

 「連邦データ保護と透明性担当課」とは、企業や連邦政府機関の個人データ収集が法に違反していないか、個人の権利が侵されてないかを監視する特殊な機関である。2001年9月11日のテロも1つの契機となり、各国の個人データ収集はますます増えている。それに伴い、監視機関の任務がスイスでも増えるのは当然の話である。

仕事は増え続けるが

 計20人程で、企業や連邦政府の個人データ収集のやり方や、その使い方を監視するのは容易ではない。「それなのに、今年の終わりには20人から19人に人員が減るのです。テロ対策課は12人近く人を増やすのに」とチュール氏は嘆く。

 「色々な口実で個人のデータが収集され、利用されるのを信頼される形で監視し、収集方法修正を勧告するには、この課にもあと12人は必要です。そうでなければ、どの点に監視の目を光らせるか限定せざるを得ません」とチュール氏は続ける。

 こうした状況に加え、「データの透明性を求める法」が7月1日に実施された。もし政府と個人の間で訴訟が起これば、チュール氏の課が調停に入ることになっている。

 さらに、国境検問に関する「シェンゲン/ダブリン協定」へのスイスの参加は彼らの仕事を増やしそうである。「この協定への参加だけで5~6人は人が必要です。データバンク間のやり取りを監視したり、大変です」

 テクノロジーの進歩も彼らの監視任務を複雑にする。今後インターネットがデータ収集にますます利用されるし、個人の識別データも数字で示されることが増えているからである。

今後の任務

 年次レポートは、この1年で監視はさらに強化されたと報告する。それを証明するものとして、次のような監視任務が遂行されている。チューリヒ空港の身体データを使ってのコントロールの監視、ミグロやコープといったスイスの2大スーパーの「ポイントカード」を通してのデータ収集の監視、医療分野のデータ収集の監視、そして臓器バンクのデータ収集の監視。

 これらの各組織は「連邦データ保護と透明性担当課」の勧告に基づいて、適切な修正をしたとレポートは報告している。

 レポートに報告されている他の大きなテーマは、国境を監視するための小型飛行機の導入とテロ対策に連邦警察局が使う様々な手段(電話の聞き取りや個人の監視)をいかに「監視」するかということであった。

swissinfo、外電 里信邦子(さとのぶ くにこ)

- スイスと欧州連合(EU)との間で行われた双務交渉で、EU加盟国間の国境検問の段階的廃止をうたった「シェンゲン/ダブリン協定」へスイスは参加することを決めた。これにより、国境を越える犯罪や難民問題で両者が協力していくことになる。

- 個人の生活の尊重と個人データの保護はスイス連邦の憲法第3条にうたわれている。

- 「連邦データ保護と透明性担当課」の任務は、データ保護という観点から、企業と連邦政府機関のデータ収集の監視と勧告を行うことである。

- 2006年7月1日付で、透明性に関しての新法が実施され、秘密の原則が透明性の原則に取って代わられた。

- これにより、公的な情報へのアクセスがより簡単に、より透明になる。

- この法の適用の監視と勧告が、「連邦データ保護と透明性担当課」の今までの任務に付け加わった。

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部