スイスの視点を10言語で

各援助機関、アフガン危機に備え緊急動員

パキスタンの アフガン難民キャンプ前で、9月17日 Keystone Archive

米国が軍事攻撃の準備を進め、アフガニスタンのタリバン政権も臨戦態勢に入る中、すでに長い戦争と干ばつで疲弊したアフガニスタンで起きるであろうさらなる人道危機に備え、各援助機関は人員と物資の総動員をかけている。

ジュネーブに本部のある国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のスポークスマン、ペーター.ケスラー氏は「米軍の攻撃は、非常に大規模な作戦になるだろう。だから我々は、今態勢を整えておかなければならない。」という。最悪の事態に備える何万人ものアフガン人が国内外で避難している。UNHCRは、現在すでに400万人のアフガン難民が暮らす難民キャンプのあるパキスタンのアフガニスタン国境地域に、テント20、000個、調理用具セット20、000台、ビニールシート100万人分を送る手配をした。さらに、経験豊富な緊急救援マネージャーをパキスタンに派遣し、危機管理チーム3組を編成中だ。UNHCRは救援活動展開のための費用600万スイスフランの緊急財政支援を要請したが、今週中にさらなる支援を要請するという。

ケスラー氏は、これから冬に向かい、またアフガニスタン周辺諸国が兵站事情を複雑にするため、人と援助物資をできる限り早く集めることが死活問題だという。軍事攻撃が開始されたら、空輸、港湾収容力、補給ルートの大半は軍隊に占有されてしまう。「我々は軍隊の先を行かなければならない。」とケスラー氏はいう。アフガニスタン国民はすでに疲弊しており、現状から判断して、今回はバルカン、東チモール、イラクなど近年のどの危機より「何倍も悪い」状態になりそうだとケスラー氏は予測する。アフガニスタンでは約300万人が国連の食料援助で生活している。「アフガン情勢は大混乱に陥るだろう。20年間の戦争で、アフガンの人々は退避の仕方を心得いている。大勢で雪崩のように国外に出て来る。」とケスラー氏は語った。

UNHCRの活動には外交的な側面もある。イラン、パキスタン、タジキスタンにアフガニスタンとの国境を再開し、難民の入国を許可し、国境まで辿り着いた人々を送り返さないように圧力をかけている。また、米国に対し、軍事攻撃の人道的影響を慎重に考慮するよう要請している。

UNHCRが現地へ追加の人員と物資を緊急展開するなか、赤十字国際委員会(ICRC)は現在現地で活動中の職員に全てを任せる態勢をとっている。「世界中どこへ行っても、我々は常にこのような事態に備えている。緊急対策はすでにとってある。」という。アフガニスタンで活動していたICRCの外国人職員は16日にタリバン政権から国外退去を求められ、パキスタンのペシャワルから活動を指揮している。現在でも、約1000人のアフガン人職員は国内に残って援助活動を続けているが、彼等は危機管理の特別訓練を受けているので状況を制御してくれると信じているという。外国人職員がアフガニスタンにもどるのは許可されないだろうとの見通しから、ICRCは食料、医薬品などの不定期なクロス・ボーダー援助供給計画を練り上げた。さらに、パキスタンの赤新月社や他の国際援助機関との協力体制を立ち上げた。アフガニスタンから外国人援助職員が退去させられた後、ICRCはパキスタン、タジキスタン、ウズベキスタンの外国人職員32人、現地職員320人を召集した。国際赤十字社連盟と赤新月社は、現地の活動能力を増強している。

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部