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政治力増すスイス極右

連邦警察の統計によると、スイス国内の極右(ネオナチ)勢力は拡大を続けているが、極右犯罪はわずかながら減少したことが判明した。犯罪が減少したのは、極右組織の活動が暴力から政治的なものに移行しているからだと警察当局は見ている。

連邦警察局が発表した最新の統計によると、2001年に極右の勢力は900人から1000人に増加したが、「スキンヘッド」による暴行、デモ、無許可集会などの極右犯罪はわずかながら減少し年間100件の報告があった。当局は、犯罪減少の理由について、極右組織がより政治的になっていることを指摘する。「極右グループの活動は政治的、イデオロギー的なものになっている傾向がある。」と連邦警察のヨルグ・ボーラー報道官はいう。また、ドリス・アングスト連邦反人種主義委員会委員長は「スキンヘッドは青少年現象だ。が、スキンヘッドの背後には政党を組織し政治的影響力を発揮したいと考えている者達がいる。」と指摘する。実際、バーゼル州では国家志向スイス党という政党が創設された。アングスト委員長は、このような特定な標的を定めた政治機関は大変危険な存在だが、スイスの保障する表現の自由・集会の自由により、このような政党も発言する権利を法的に認められているという。「政党は犯罪に直接関わっていないかぎり政治的なレベルでの規制はない。」と、ボーラー連邦警察報道官もいう。

昨年報告された極右犯罪100件は、人種差別に基づく暴行とデモで、ほとんどは独語圏で起きた事件だった。そして、難民収容所など公共施設に対する攻撃は減少する一方で、人に対する暴行が増加したという特徴があるとボーラー報道官はいう。さらに、犯罪件数は減少したものの、極右犯罪の残忍性はエスカレートする傾向にあるという。対人攻撃の代表的な例として、昨年8月ザンクト=ガレンで少数のスキンヘッド・グループが黒人男性2人に対して嫌がらせをしたことから、スキンヘッド50人対市内在住の黒人80人の大乱闘に発展した事件が上げられる。事件の首謀者でスキンヘッド・グループ指導者の1人パスカル・ロブシガー(27)の公判が20日、ザンクト=ガレン地裁で行われる。また、昨年は初めての極右による殺人事件が発生した。ベルン郊外のUnterseenで、極右組織「アーリア騎士団」は、メンバーの19才の少年を外国人殺害計画を警察に密告する恐れがあるとし殺害した。

極右撲滅は教育によってしか実現できない。ボーラー連邦警察報道官は、もっと早い時期に学校教育で予防措置を取るべきだったと悔いる。アングスト反人種主義委員長は、人権に関する総合的な教育が必要だという。そして、スイス国民は「全ての人は肌の色や出身国に関わらず尊重されるべきだ」という基本的人権を認識する必要があるという。連邦政府は昨年、今後5年間の人種差別との戦いに1500万スイスフランの連邦予算を提供した。

極右が存在する一方で、反極右活動も存在する。16日、ベルンで1600人による反ファシスト・デモが行われ、器物破損で30人が逮捕された。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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