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森林資源の保護・管理は地域社会の手で スイスが提唱

毎年200万ヘクタールの森林が伐採されるインドネシア Keystone

5月3日から2週間に渡りジュネーブで開かれている国連森林フォーラム(UNFF)に先立ち、スイスはインドネシアと共同で先週、50カ国以上の環境専門家をスイス中部インターラーケンに招集し、減少する森林資源の改善方法について協議した。UNFFで焦点となる開発途上国での森林資源の減少問題などで議論を活発化させるのが狙い。

国土の3分の1が自然資源に囲まれるスイスでは、伐採を抑え、森林保全に早くから取り組んでいる。これまで築き上げたノウハウが、熱帯林の減少に悩む途上国の模範になるはずだ、とスイス当局は期待を寄せる。

森林資源の保全で国際的にリーダーシップを発揮したいスイスだが、実際は長引く景気低迷で予算の大幅削減という厳しい国内事情との間でジレンマを感じているようだ。

減少する熱帯林

 森林には多くの野生生物が生息している。また、森林は土壌保全や二酸化炭素の吸収など、多面的な環境調整機能を持つ貴重な資源でもある。スイス連邦環境局によると、約25,000のサッカー競技場を合わせた面積の熱帯林が毎日失われているという。

 熱帯林が減少する背景には、途上国の焼き畑移動耕作や、過度の薪採取だけでなく、政府当局と民間業者の癒着構造が大規模な違法伐採を横行させているとも指摘されている。

 スイス連邦環境局は、世界の森林資源の約77%が中央政府に管理されていると指摘した上で、森林資源管理のあり方に疑問を呈している。 

 環境局のフィリップ・ロシュ部長は「森林資源の管理を国家ではなく、地域社会に委ねるべきだ。自分達で森林資源を経営・管理できれば、もっと関心が強まり、森林保全に繋がるはずだ」と話す。

厳しい財政

 スイスでは早くから国土の森林管理を連邦政府から各地域の自治体に委ねている。こうした実績を途上国での森林資源問題の解決に役立てようと働きかけるスイスは一方で、国内の厳しい財政事情に悩まされている。

 連邦政府は現在、財政難で全省庁を対象に予算を削減中。このうち、環境局への年間予算について、当初予定の20%に相当する4,200万フラン(約36億円)をカットすると決定している。

 これを受け、環境局は国際協力を優先事項から外し、事業抑制で歳出の削減に取り組むほか、2005年末までに全職員の約7%に当たる20人の職員を削減する見通しだ。 


 スイス国際放送  安達聡子(あだちさとこ)意訳

国連森林フォーラム(UNFF)が5月3日から14日までジュネーブで開催中。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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