浸透しにくい人工言語
スイスの4番目の国語、ロマンシュ語の標準言語として「ルマンチュ・グリシュン」が作られて30年がたつ。だが、浸透度は今一つ。連邦基金の調査で、グラウビュンデン州に住むロマンシュ語を話す人々は、日常、地元の方言をよく使っていることが分かった。
1982年にリア・ルマンチャ氏が発表し、その後グラウビュンデン州が段階的に取り入れていったロマンシュ語の統一言語ルマンチュ・グリシュン語 ( Rumantsch Grischun ) はまだしっかりと地域に定着していないようだ。
愛されている方言
連邦基金 ( SNF ) は、ロマンシュ語が話されている主要地域ウンターエンガディン ( Unterengadin ) とビュントナー・オーバーラント ( Bündner Oberland ) に住む31人にアンケート調査を行った。
「ロマンシュ語の言語記録 ( Rätoromanische Sprachbiographien ) 」は代表的な調査ではなく、よってロマンシュ語を日常言語とするおよそ6万人の人々の代表的な考え方を映し出すものではない。言語社会学者のレナタ・コレイ氏は11月24日に発表したコミュニケの中で、同調査は「言語を記録するためのインタビュー」だと表現している。
調査の対象となったのは中低級レベルの教育を受けた人々で、普段、言語政策について自分の考えを述べることのない層だ。しかし、ルマンチュ・グリシュン語とまったく無関係な生活を送っているわけではなく、進んでこの標準言語を話題にするという人も少なくなかった。
アンケートに答えた人々はロマンシュ語で読み書きすることがほとんどなく、言葉を統一したことによってもたらされた利点は特にない。学校では2010年から地元の方言に代わってルマンチュ・グリシュン語が読み書き用の言葉として用いられるが、この政策が支持されていないことも明らかになった。また、ネットメディアが統一言語を使用することに対しても拒否反応が現れている。
ロマンシュ語には大別して5つの方言があるが、この調査によってロマンシュ語を使う人々の地域を越えたアイデンティティーは形成されていないことが確認された。アンケートの回答者はルマンチュ・グリシュン語ではなく、自分たちが住む村や谷で話されている方言に愛着を感じている。
swissinfo.ch、外電
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