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第58回国連人権委員会始まる

ジュネーブで第58回国連人権委員会が18日始まった。今回初めて米国は委員会メンバーでなくなったが、その影響力は未だかつて無いほど大きなものになりそうだ。

国連人権委員会は3年の任期で選ばれる53ヶ国から構成され、国家や政府機関、NGOが人権について関心事項を発表する場。提出された情報の調査のため、調査グループ、現地訪門を組織し、政府との話し合いを求め、人権の侵害を非難する。初日の18日、メアリー・ロビンソン人権高等弁務官は開会の演説で、各国代表に自国政府に対して人権諸条約加入を求め人権報告者の招待を促すよう要請した。

米国が主導する「テロとの戦い」は人権委員会で特別な解決を図る議題になっていないが、4月26日までの6週間の定例委員会に大きな影を落としていることは間違いない。人権保護グループは、昨年9月11日の米同時多発テロ以後、多くの国々がテロ組織掃討に熱狂的と言える程集中し、他の国はそれを見て見ぬふりをしていると指摘する。「世界各地で人権は危機に陥っている。米同時多発テロ後、多くの国が『何でもあり』というテロリストの論理を採用してしまった。」と米国のNGO「人権ウォッチ」のリード・ブロディーさんはいう。今回米国は1946年の国連人権委員会設置以来初めてオブザーバーとしての参加だ。が、同時多発テロや中東紛争の泥沼化などを受け、米政府は多くの問題に干渉し水面下で積極的に動いている。NGOなどは、米国が委員会から外れて好影響は期待できないと見る。「人権委員会のメンバーである国は、中立であることを強制される。今回委員ではない米国は、外野席から討議を妨害することが可能だ。」と拷問に反対する世界機関(OMCT ジュネーブ)のエリック・ソッタス代表は懸念を示す。

人権の侵害は、テロ容疑者の追跡の域をはるかに超えてしまったとソッタスさんはいう。OMCTと国際人権連合(FIDH)は今週刊行した共同リポートで、国家はテロとの戦いを「反対勢力撲滅政策の合法化に利用している」と指摘した。ソッタスOMCT代表は、チェチェンやコロンビア、チュニジアの例を上げ「人権保護の活動家らは人権抑圧の最初の犠牲者になる。」という。人権委員会には中国、キューバ、シリア、スーダンなど人権レコード上問題のある国が名を連ねている。スイスは過去に、中国の人権侵害を非難する決議案採択に協力しなかったとして批判された。中国は過去10回、中国非難の決議案に対し不採決動議を提起し、投票の結果非難を免れている。スイスもEU諸国も人権問題に関しては中国と二国間レベルでの対話をする姿勢を保持しており、急成長する中国市場を失うことを恐れての対応だと批判されている。実際、人権委員会での討議の25%はパレスチナ問題が占め、チベットやクルド問題はほとんど議題にのぼらず、人権委員会の限界を示すものだとの批判がある。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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