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米国の報復攻撃は新たな危機を招く:スイスの専門家が警告

パキスタンのUNHCRキャンプ前に立つアフガン難民の子供 Keystone

米国がアフガニスタンのタリバン政権に向け報復攻撃の準備を着々と進める中、スイスのアフガン問題専門家は、軍事攻撃はイスラム過激派の思うつぼで、人口130万人を有し核兵器を持つパキスタンの政情不安定を招くと警告を発した。

パキスタンの各イスラム過激派組織は、米国がアフガニスタンを攻撃するならジハード(聖戦)に加わるとの声明を出している。メディア・アクション・インターナショナル(ジュネーブ)のアフガニスタン問題専門家、エドワード・ギラーデ氏は、米国のアフガニスタン攻撃はこの地域を泥沼の危機に陥れる危険性があると指摘する。アフガニスタンを支配するタリバン政権は、米国が同時多発テロの首謀者とするオサマ・ビンラディン氏の引き渡しに応じる可能性はまずない。ギラーデ氏は、タリバンの指導者らにビンラディン氏を引き渡す力があるとは思われないという。「たとえタリバンはビンラディン氏引き渡しを決定しても、彼等にはそうする能力がない。」。

さらに、米国の軍事攻撃は、より多くの人がイスラム過激派に加わり、自爆テロやハイジャックを行う次世代を生み出す結果になる。これは、アフガニスタン国内だけでなく、今までも多くのタリバン戦士を供給してきたパキスタン、そして中東にも広がる危険な問題だと、ギラード氏は指摘する。

ビンラディン氏は自分の軍事組織を持っている。サウジアラビアの大富豪の家に生まれたビンラディン氏には、各部族指導者を服従させる財力がある。長年アフガニスタンで活動したジャーナリストであるギラーデ氏は、米国は周辺国全てを安定させた上で、アフガニスタンの内戦を終結させる機会をとらえるべきだという。それができないならば、この地域でさらに何年も不安定な情勢が続く事になると、ギラーデ氏はいう。

ギラーデ氏によると、最もリスクの少ないアプローチは、ビンラディン氏の軍事基地を特殊部隊で急襲することだ。米国は、アフガニスタンの一般国民を標的にすることは絶対に避けなければならない。国民はタリバン政権の最大の犠牲者で、テロとは何の関係もないのだからと、ギラーデ氏。

が、たとえ米国がタリバン政権の弱体化に成功しても、誰がその後継者となるのかは予想がつかないとギラーデ氏はいう。現時点ではタリバンは、アフガニスタン東部のパシュトゥン族地域以外では、ほとんど民衆の支持を得ていない。が、同様に、現在北部で反タリバン勢力「北部同盟」を形成する前政権も、パシュトゥン族地域での支持を得ることは困難だ。「米国は情勢を慎重に分析しなければならない。私は、北部同盟が新政府となるとは思わない。平和を取り戻すためには、全てのアフガン人が関予しなければならない。どのような形になるにせよ、最終的な解決にはタリバンも含んだものにならなければならない。次期政権には、あまり過激でないタリバンの痕跡を見ることになるだろう。」とギラーデ氏は語った。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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