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アンチドーピング機関の苦悩

7月1日、スイスのアンチドーピング機関が新たなスタートを切る。しかし、資金は最小限レベルに抑えられている。ここ数年で色あせてきたドーピング撲滅に向けた闘いを盛り返すのは難しそうだ。

5月上旬、サムエル・シュミット・スポーツ相は、スイスのスポーツ競技団体の上部組織「スイス・オリンピック」の会合に政府からの援助金という手土産を用意して赴いた。

 連邦政府は、7月1日に活動を開始する新しい独立機関「スイス・アンチドーピング基金 ( ADS ) 」にスタート資金として30万フラン ( 約3000万円 ) を提供することにした。こうして「スイス・オリンピック ( Swiss Olympic ) 」は、新しく前線で活動する同機関の設立にゴーサインを出した。

遅れたスタート

 スイス・アンチドーピング基金の会長に選任されたコリン・シュミットハウザー氏は、感謝とともにシュミット・スポーツ相からこのプレゼントを受け取った。スラロームのワールドカップで優勝したこともある元スキーヤーのシュミットハウザー氏は、
「若い世代のスポーツ選手のために、ドーピングに対する闘いにまじめに取り組まなければ」
  と気合いを入れる。

連邦国防・国民保護・スポーツ省スポーツ局 ( Baspo/Ofspo ) でこれまでドーピング対策を主導してきたマティアス・カンバー氏は、スイス・アンチドーピング基金のコンセプト作りにも大きくかかわってきた。カンバー氏はこの独立組織の設立を「大進歩」だと評価する。また、この度の連邦の追加融資によって、380万フラン ( 約3億8000万円 ) という最小限の資金しか持たない同基金には行えそうになかった重要な投資も可能となった。

 しかし、それでも手放しで喜べるわけではない。この新設機関は出だしから資金繰りに悩まされているのみならず、すでに大幅な遅れを取っているのだ。
「世界アンチドーピング機関 ( Wada ) が設立され、その後、アンチドーピング規定が初めて制定されてからもう4年もたっている。今度は新規定が発効されるが、スイス・アンチドーピング基金はようやく設立されたところ。状況はかなり大変だ。これから大きな問題に直面するはず」
 とカンバー氏は予測する。

網にかかった大魚

 このように出遅れたことによって、スイスはさらに過去4年間でドーピング撲滅の「先進国」から「その他大勢」になってしまった。カンバー氏もこれを「まったくそのとおり」と認める。スイスのドーピング撲滅運動の絶頂期は2002年から2004年までだった。その頃は、スイスのモデルが外国に模倣されていたという。

 そのときの撲滅運動はスイスでセンセーションを巻き起こした。2004年には、自転車競技の元世界チャンピオン、オスカー・カメンツィントとトライアスロンのオリンピック金メダル獲得者、ブリギット・マクマホンという大きな魚がまとめてカンバー氏のドーピング捜査網にひっかかったのだ。

 今日のスイスはほかの多くのヨーロッパ諸国に遅れを取っている。
「検査だけではなく、情報や予防、国際関係などの面でももう頼りにされるパートナーではなくなった」

国が圧力をかけると

 シュミット・スポーツ相は追加融資という親切な贈り物をした。だが一方で各スポーツ協会の代表者に対して、170万フラン ( 約1億7000万円 ) と決められた出資額以上はもう一切スイス・アンチドーピング基金に出さないと明言し、スポーツ業界が負うべき自己責任やまだ残されているスポンサーの開拓余地について強く訴えた。

 外国の状況はこれとは異なる。
「近隣諸国のほとんどは政府が自ら指揮を取り、スポーツを優遇している」
 とカンバー氏は言う。例えば、イギリスの新しい「全国アンチドーピング組織 ( Nado ) 」は政府の提起で設立されたものだ。その予算は過去2年間で450万ポンド ( 約9億円 ) から1500万ポンド ( 約30億円 ) 近くまで増加した。そして、45人の組織職員が常にスポーツ選手の監視に当たっている。

 「これはスイスとはまったく異なる傾向だ。政府が圧力をかけ、新しいWadaの規定の実用化にこだわっているからだ。スイスの政府はまったく違う考え方をしているが、これも受け入れるより仕方がない」
 とカンバー氏。

 それでも、スイス・アンチドーピング基金の展望はそれほど暗いわけではない。スイス・オリンピックの最高経営責任者 ( CEO ) を務めるマルク・アンドレ・ギガー氏には民間のスポンサーの目星がついている。そのスポンサーは、3年間で10万フラン単位 ( 1000万円単位 ) の資金を提供することになっている。

swissinfo、レナート・キュンツィ 小山千早 ( こやま ちはや ) 訳

キーワード

新設されるスイス・アンチドーピング基金は、スイス・オリンピックと連邦国防・国民保護・スポーツ省スポーツ局の出資による。

スイス・オリンピックは190万フラン ( 約1億9000万円 ) 、連邦国防・国民保護・スポーツ省スポーツ局は170万フラン ( 約1億7000万円 ) を出資。

連邦からの追加融資を合わせてもおよそ380万フラン ( 約3億8000万円 ) という年間予算はヨーロッパでは最低レベル。例えば、ノルウェーの予算は510万フラン ( 約5億1000万円 ) 。

2007年、スイスでは1419件のドーピング検査が実施された。2005年は1714件。スイス・アンチドーピング基金は2009年以降、スイスで行われる大会やトレーニングで年間およそ2500件の検査を実施する計画。

世界アンチドーピング機関 ( Wada ) の設立以後、世界中で行われるドーピング検査の件数は、7年間で年間12万件から20万件に増加した。

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スイス・アンチドーピング基金 ( ADS )

ドーピング対策はこれまで「ドーピング対策専門委員会 ( FDB ) 」が行っていた。資金は「スイス・オリンピック ( Swiss Olympic ) 」と連邦国防・国民保護・スポーツ省スポーツ局 ( Baspo/Ofspo ) が提供してきた。

新しい独立機関である「スイス・アンチドーピング基金 ( ADS ) 」は私法ベース。2008年7月1日から活動を開始する。

連邦による「全国アンチドーピング機関 ( Nada ) 」の設立は、法改正を行わなければならないため早くて2011年。

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