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スイスの吹奏楽

共同体イベントには欠かせない存在、Fanfare。Courroux村祭り開幕式。式典では主にマーチが演奏される。

(swissinfo.ch)

スイスの各市町村(フランス語でコミューン=共同体)には、必ずと言っていいほど吹奏楽団が存在している。小さな村では一家のみならず一族のほとんどがメンバーであるという楽団もあるぐらいだ。私の夫も人口500人余りの村出身だが、祖父の代から男子は全員金管楽器奏者で、今は四代目、私達の娘がコルネット奏者として伸びつつある。最近、ジュラの二つの村が立て続けに楽団創立175周年の式典を催したが、いかに古くから管楽器文化が根付いているか分かるというものである。

 一般に、共同体に於いて吹奏楽団は重要な役割を果たしている。週に1,2度練習があり、メンバーは性別や世代を超えて親交を深めている。また、祭りやイベントで演奏を行ったり出店をしたりと、盛り上げ役として欠かせない存在でもある。アマチュアではあるが、楽団によっては積極的に地方・国内コンクールに参加して上位を狙ったり、プロの指揮者や音楽家を雇ってレベルアップにも励んでいる。ジュニアの楽団を設け、地域ぐるみで才能の発掘に取り組んでいる共同体も少なくない。

(swissinfo.ch)

 ジュラのある地方では、一つの共同体に二つの吹奏楽団があることもある。これは、一昔前、政治が庶民生活に直接影響を及ぼし、保守派の急進民主党(Parti libéral-radical = PLR)を「赤」、中道のキリスト教民主党(Parti Démocrate-Chrétien=PDC)を「黒」と呼んでいた時代の置き土産である。 当時、これらの市町村はカフェ・レストラン、そして楽団に至るまで赤黒で分けられていた。自分と違う「色」のカフェにうっかり入ろうものなら、ケンカを吹っかけられることもあった。愛し合う恋人達の親が赤と黒に分かれていれば、スイス版ロミオとジュリエットもかくやと思われる悲恋物語が繰り広げられた。現在でも、その赤黒合戦の名残でいくつかの町や村では二つの楽団が存在しているが、過去の過ちを冗談で笑い飛ばせるほど仲良く交流し、村祭りなどの催しでは助け合っている。

(swissinfo.ch)

 便宜上、吹奏楽団と一口に言っているが、大きく分けて三つの形がある。一番多いのが、楽器数などの形態に捉われない楽団で、フランス語では「fanfare」と呼ばれ、地方文化の花形として庶民に親しまれている。それから、現在は英語式に「ブラスバンド」と呼ばれることが多い、金管楽器のみの楽団(Ensemble de cuivres)がある。その楽団は、さらに厳密に言えば「英国式ブラスバンド」と言い、28人編成が前提である。そして最後に金管楽器と木管楽器(フルートやクラリネット、サクソフォンなど)、曲によってはコントラバスやハープも加えたハーモニー(Harmonie)とフランス語で呼んでいる楽団で、50人を超える大所帯になることもある。三つの楽団には、打楽器も加わっている。上記三つの形態の楽団とコンクールで争うことはないが、「ビッグバンド」と呼ばれるジャズ演奏をメインとした楽団も存在している。

 ブラスバンドは、ユアン・マクレガー主演のイギリス映画「ブラス!」でも赤裸々に描かれていたように、かつては男性優位社会、現在でも男性演奏者の数が圧倒的に多い。対してハーモニーやfanfareでは女性の割合が少し増える。

(swissinfo.ch)

 フランス語圏で実力的にトップ3に入る楽団の出身地は、何と言ってもヴァレー/ヴァリス州であろう。高地で生まれ育ち、練習をしているため、音楽家達は先天的・後天的に並外れた肺活量を持っているのではないかと邪推しているが、ジュニア育成のシステムも非常に優れていると聞いたことがある。フリブールのブラスバンドも常にトップクラスである。その後をやや差があってヴォーとジュラが追っている。ヌーシャテルとジュネーヴでは管弦楽団の方が人気があるのか、吹奏楽団についてはとんと耳にしない。

 吹奏楽のみならず、クラシックあり、民謡あり、夏には数々のロックフェスティヴァルありと、音楽的話題には事欠かないスイスである。他の音楽ジャンルについても述べたかったのだが、各分野があまりにも充実しており、語り出せば切りがない。別の機会にご紹介できればと思っている。

マルキ明子

プロフィール:マルキ明子

大阪生まれ。イギリス語学留学を経て1993年よりスイス・ジュラ州ポラントリュイ市に在住。スイス人の夫と二人の娘の、四人家族。ポラントリュイガイド協会所属。2003年以降、「ラ・ヴィ・アン・ローズ」など、ジュラを舞台にした小説三作を発表し、執筆活動を始める。趣味は読書、音楽鑑賞。

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