Navigation

スイスの牛より野生のヒグマ

5頭の小熊の里親となる。 charlie russell

ある時は野生動物の案内ガイド、ある時は環境活動家、またある時は写真家でもあるスイス人、レノ・ゾンメルハルダーさんは熊に恋焦がれてもう20年になる。この39歳の自然愛好家がスイスインフォのインタビューに答えた。

このコンテンツは 2005/04/05 13:54

熊を追いかけて彼はアルプスの山からカナダのロッキー山脈に移住してしまった。それだけでは飽き足らず、熊との出会いを求めて南米アンデス山脈からロシア極東まで飛び歩いている。

ロシアのカムチャッカ半島の辺境では、5頭の小熊達の里親となって世話をした。チューリヒ出身のゾンメルハルダーさんは、バンフ環境活動およびリサーチ協会(BEAR:Banff Environment Action and Research Society)の会長である。ここでは顧客に観光案内やコンサルタントサービスを提供している。彼と熊との出会いはカナダにさかのぼる。

鼻と鼻を突き合わせてこんにちは

「ロッキー山脈をハイキングしていたんです。夜は小さいスイスのカウベル(牛の首につける鈴)をテントに付けておいたんですが、ある夜、そのベルのカランカランという音で目が覚めました。起き上がると、そこに熊の顔があったんです。熊はテントを切り裂いて中に入ってきていたのでした」

ゾンメルハルダーさんは熊の生息地でテントを張る時の基本的なルールを破って、テントの中に食物を持ち込んでいた。当時、彼はまだ初心者だったので、そんな事も知らなかったのだ。

「2、3秒、熊と私はお互いびっくりして見つめ合ったままでした。そして熊は首をひょいと引っ込めておとなしく出て行ったのです。それはまるで、熊が私の人生の扉をノックして、世界には今の君の生活よりもっと楽しいことがあるよ、と告げに来たかのようでした。この熊との遭遇を経ていろんな事が次々と起こり、この事件の前と後では私の人生が大きく変わりました。私は当時、コックだったので生活の中心は料理の研究だったのです」

フライパンを放り出して、元コックは世界中を旅し始めた。環境問題について調査し、北部カナダでホッキョクグマの写真を撮り、ペルーなどの南米や北米全土をクロクマやヒグマを見に飛び回った。

ロシア極東、カムチャッカ半島では、夏を2回過ごした。同じく熊の専門家で友人でもあるチャーリー・ラッセル氏が本を出すために行った取材旅行に、ガイド兼写真家として同行したのだ。(後に『ヒグマの心(Grizzly Heart)』として出版)

この本の舞台となったロシア極東は経済破綻であえいでおり、1万頭と確認されているヒグマも、密猟のために絶滅の危機にさらされている。熊の保護区に指定されている国立公園でさえ、安全な場所ではないのだ。

私が新しいお父さん

ゾンメルハルダーさんとラッセルは、このような事態を憂慮して2004年夏、小熊の里親プロジェクトを開始した。母熊が密猟者に殺されたために、みなしごになった小熊たち5頭を世話することにしたのだ。プロジェクトは単に小熊にえさと安全な場所を与えて育てるだけではない。厳しい野生の生活でも生きていけるよう、自信とサバイバル技術を身に付けさせなければいけない。

ゾンメルハルダーさん達にとっても、これは自然について学ぶ貴重な機会となった。「短い夏の間に、小熊たちには沢山の事を教わりました。たとえば、熊たちは本能によって多くの事をすでに知っているのです。母熊から学んでいないはずなのに、彼らは様々な状況において、ずいぶん正しい対処の仕方をしていました。教えなければいけなかったのは、大きなオス熊から身を守ることと川から鮭を取る方法だけでした。後は全て、本能に基づいて彼らは何でもできました」

ゾンメルハルダーさんによると、熊は美しく、頭の良い動物で、それだけでも研究対象となるが、それだけではなく、人間が自然界について学ぶ際の、格好のテキストとなる。

この環境活動家は「現在我々は、経済発展の過程で、本来人間が持っていた本能的なものを失ってきたように思います。私は、これが地球の温暖化などの我々が直面している深刻な問題に関係していると思っています。我々の地球とそこに住む全ての生物を救うために、大切なのは教育です」と熱をこめて語った。

「ヒグマは非常に繊細な動物で、環境にほんの少しの悪い変化が現れただけで影響されます。そして、熊はそのかわいらしいキャラクターによって多くの人々に人気があります。環境問題を教育する際に、これほどぴったりの教材はないのではないでしょうか」。


swissinfo モーヴェン・マクリーン、 遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳

補足情報

—ヒグマの特徴は背中のこぶにある。

—ヒグマは北米、欧州、日本、および北アジアが原産地。

—グリズリーと呼ばれるヒグマ科のほか、北米には18種類のクロクマ科が生息している。

—ツキノワグマなどのクロクマ科の種類は、全てが黒い色をしているわけではなく、茶色や白の種類もいる。

End of insertion

このストーリーで紹介した記事

この記事は、旧サイトから新サイトに自動的に転送されました。表示にエラーが生じた場合は、community-feedback@swissinfo.chに連絡してください。何卒ご理解とご協力のほどよろしくお願いします

共有する

この記事にコメントする

SWIアカウントをお持ちの方は、当社のウェブサイトにコメントを投稿することができます。

ログインするか、ここで登録してください。