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スイスの監視員制度

被生活保護者を監視していることを明らかにするべきか、しなくとも良よいのか? imagepoint

チューリヒ市、バーゼル市、エンメン市に次いで、ベルン州の4つの自治体が一斉に被生活保護者の生活態度を監視する制度を試験的に設けた。監視員制度はスイス国内に広まる傾向にある。

今回のように、ベルン州が自治体で雇う監視員の費用を負担する試みはスイスでも初めて。今後、生活保護制度の悪用を監視する役割を担うことになりそうだ。

 「税金の無駄遣いができるようではあってはならないし、してはいけない」。監視員制度を導入することになったビール/ビエンヌ ( Biel/Bienne ) のピエール・イヴ・メシュラー市議会議員 ( 社会民主党 ( SP/PS) ) はこう語る。生活保護問題は行政全体の信頼問題でもあるという考えから、州と自治体の協力体制を提案したのはメシュラー氏が担当する行政機関だ。監視員制度の導入と平行し、生活保護制度への信頼を強化する対策も講じられるという。

税金の無駄遣いを正す

 4つの地方自治体では、新しく任命された監視員が、生活保護費が悪用されている疑いがある場合、証拠を挙げたり、または、その疑いを晴らす働きをする。プロジェクトの期間は今年10月まで。どのように悪用されるのか、効率的な社会福祉とは、監視員制度の有効性はといった疑問への答えは、2009年初めに公開される予定だ。

 こうした動きの発端は、ベルン市でイラン人の被生活保護者が、高級車を乗り回していたことが発覚したことだった。しかし
「悪用するのはごく一部の人だ。多くの人が緊急な生活保護を必要とし、資金援助に頼らなければならない」
 社会民主党出身でベルン州厚生課のフィリップ・ペルヌ氏は強調する。

監視の度合いはさまざま

 今回4つの自治体で生活保護の悪用を撲滅しようという試みが始まったが、その方法は各々の自治体に任されている。

 ビール/ビエンヌ市の監視官は、生活保護課もしくは第三者の要請がない限り、活動できないことになっている。観察の観点は、被生活保護者の生活状態を観察し、申請していない収入や副収入を捜査するが、隠れた調査は禁止されている。ベルン市も、隠れた調査はしない。イッティンゲン市 ( Ittingen ) でも同様だ。調査していることを相手に知らせる義務があるため、現在およそ400人いる被生活保護者全員には、調査される可能性を伝え市行政がオープンで透明性があることを示した。伝えるだけでも、悪用を抑制する効果はある。
 
 一方、ケニッツ ( Köniz ) では、被生活保護者の家庭訪問だけでは不十分と考え、監視員は生活態度を監視することもできる。もっとも、監視は公共の場だけに限られている。

 ベルン市での悪用事件や、ほかでも起こった事件がメディアで取り上げられたことから国民党 ( SVP/UCD ) は、悪用者を「社会的寄生虫」と表現し過激なキャンペーンを繰り広げている。被生活保護者のみならず、社会福祉当局も国民党の非難の的だ。福祉の恩恵を享受する人たち、特に外国人で生活保護を受けている人たちについては、「税金の恩恵者」というスタンプが押されている。

swissinfo、レナト・クンツィ 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

2008年10月までの、このプロジェクトの経費は現在のところ不明のままである。
ビール/ビエンヌ市やイッティンゲン市では15から20件の調査で2万フラン ( 約200万円 ) かかると概算された。ベルン市では、延べ2.5人がプロジェクトのために任命された。
スイスでは生活保護のための予算は州財政と全州が構成する資金プールから折半で負担される。自治体が負担することで、悪用を防ぐ効果があるとされている。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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