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スイス格安スキーリゾート

格安のリフト券登場でスキーへの人気は再び高まるか? Keystone

冬の訪れが早かった今年。通常のシーズン前からオープンしたスキー場が多かった。スイスのスキー場が取り入れ始めているのは、格安チケットの売り出しだ。

条件によっては、1日リフト券を半額で販売するスキー場もある。スイスのスキーヤーにとって見逃せないサービスの背後にある事情とは?

 ヴァレー/ヴァリス州のヴェルビエール ( Verbier ) のスキー場4カ所では、格安航空チケットと同じ発想で、安いリフト券の販売に踏み切った。

稼働率を上げる

 ローシーズンのウイークデー、例えば12月と1月の水曜日のピーク時を避けることが条件だと、通常64フラン ( 約6400円 ) のリフト券が半額の32フランになる。こうした格安リフト券を購入できるのは、シーズンパス ( 大人99フラン、20歳以下79フラン、子ども49フラン) ( それぞれ約9900円、7900円、4900円 ) を持っている人に限る。

 ピーク時以外の客を呼び込むことが多くのスキー場にとっての課題だ。スイスとフランスにまたがるポルト・ドゥ・ソレイユ ( Portes du Soleil ) のスキー場では、遅起きのスキーヤーで、11時もしくは午後2時からスキーをしたいと思う人に割引することも計画しているという。

 シャンペリー ( Champéry ) のスキーリフトの経営者は
「多くのリゾート地が民営化され、利益を上げることに必死。運営コストの高いリフトが一日中客で一杯になるように、値段を柔軟に設定するようになった。リフトの稼働率を上げることでしか、利益を上げることはできない」
 と語った。

日帰り客を狙う

 スキーリフトの「テレヴェリエール」のジュリエン・ムランさんによると、柔軟な価格を設定したのは、日帰りのリピーターを増やすことが目的だったという。日帰り客は、ジュネーブ湖周辺やマルティニーやシオンといった都市近郊から訪れ、人気のスキー場の間で熾烈な競争が繰り広げられている。一方、過去2年間でリフト券は2.5%上昇している上、ガソリンの高騰で出費がかさみ、客離れが懸念される。

 スイス山岳リフト協会のレナテ・ショッホ氏によると、リフト券の価格設定が柔軟になり始めたのは10年前のこと。ダボス ( Davos) 、クロースタース ( Klosters ) 、ヴェルビエール、ポルト・ドゥ・ソレイユなどのリフト運営会社が次々と合併した時期と重なるという。ショッホ氏は、スキーの客層が変わり、若者のスキーヤーが少なくなったと指摘する。1995年から2002年まで、若者のスキー合宿が全体のスキー客の13%を占めていたが、その後、コスト上昇に伴い合宿を取りやめる学校が増加した。年末と2月の学校休みのハイシーズンと他のシーズンとの客数にも大きな差が出るようになった。

 柔軟な価格設定で、早く来た人に安いリフト券を売るといった制度など、格安チケットは今後スイス全土のスキー場で広がる可能性を秘めている。

swissinfo、ヘンリー・プロウディ 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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